今週末に見たいアートイベントTOP5: 井田幸昌の350点超が集結、新スペースでアニッシュ・カプーア作品を披露
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 永遠の都ローマ展(東京都美術館)
門外不出の古代彫刻《カピトリーノのヴィーナス》が来日
「永遠の都」として憧憬を集め続けてきたローマ。古代ローマ帝国の栄光を礎にした二千年を超える歴史や美術を、その文化の中心都市に立つカピトリーノ美術館の至宝などでたどっていく。今回、建国から古代の栄光、教皇たちの時代から近代まで約70点の彫刻、絵画、版画などが来日。展覧会は来年、福岡市美術館にも巡回するが、現地以外ではほとんど公開されたことがない門外不出の傑作《カピトリーノのヴィーナス》(2世紀)が見られるのは東京展だけだ。
建国神話に登場する双子の兄弟をモチーフにした、ローマのシンボル的彫刻《カピトリーノの牝狼(複製)》で幕を開ける本展。ミロのヴィーナスなどに並ぶ古代ヴィーナス像の傑作として名高い《カピトリーノのヴィーナス》は見逃せないが、《コンスタンティヌス帝の巨像》の頭部、左足、左手の原寸大複製像も目玉のひとつだ。頭部だけで約1.8メートルというスケールに、古代ローマ帝国の栄華が体感できるだろう。歴代ローマ皇帝の肖像をはじめ、ミケランジェロによる都市計画、カラヴァッジョ派の画家の作品など、多方面からローマの比類なき繁栄の軌跡を紹介する。
永遠の都ローマ展
会期:9月16日(土)~ 12月10日(日)
会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
時間:9:30 ~ 17:30 (金曜は~20:00、入場は30分前まで。土日祝のみ日時指定予約制)
2. 奥能登国際芸術祭2023(スズ・シアター・ミュージアムなど石川県珠洲市全域)
日本の原風景と、さわひらき、ひびのこづえ、塩田千春らの作品が共鳴
能登半島の先端に位置する、石川県珠洲市全域で開催される芸術祭。総合ディレクターを北川フラムが務め、14の国と地域から59組の美術家が参加する。荒々しい外海と穏やかな内海に三方を囲まれる珠洲市。黒瓦と板壁の家が軒を連ねる町並みは、まさに日本の原風景といえる。製塩技術、祭りや食など、同地で育くまれてきた文化に各作家が向き合い、風土をすくい上げながら作品制作に取り組んだ。
3回目を迎える今年は、これまでの設置作品に41の新作が加わった。さわひらきは、奥能登に伝承する農耕儀礼「あえのこと」に着想した前作をさらに発展。コスチューム・アーティストの、ひびのこづえは、広場に芝生を敷き詰めてつくった屋外舞台で、会期中に複数回のパフォーマンスを開催する。イラン出身のシリン・アベディニラッドは、海岸に落ちているシーグラスに着目。漁具倉庫だった建物で、漁網と割れた酒瓶を使った光と影のインスタレーションを披露する。建築家の坂茂が、圧縮したヒノキ材を使って会場内に建築したレストランもある。
参加作品には、植松奎二、N.S.ハーシャ(インド)らの新作のほか、大岩オスカール、河口龍夫、塩田千春、リュウ・ジャンファ(中国)らの過去作も。
奥能登国際芸術祭2023
会期:9月23日(土・祝)~ 11月12日(日)
会場:スズ・シアター・ミュージアム(石川県珠洲市大谷町2-47)など珠洲市全域
時間:9:30 ~ 17:00
3. 開館35周年記念 福田美蘭―美術って、なに?(名古屋市美術館)
想像の羽を自由に広げる福田美蘭の世界。新作も発表
古今東西の名画からイメージを広げ、視点を変えたユニークな解釈を加えるなど、意表を突く手法で絵画の可能性に挑み続けてきた福田美蘭(1963-)。1980年代から現在までの50作余りで、見る者の思考を刺激する独自の世界観を紹介する。8点の新作には、名古屋市美術館の所蔵品から着想したものもある。
《ゴッホをもっとゴッホらしくするには》などの作品名からも分かる通り、名画を絶対的なものと捉えず、自由に想像の羽を広げるのが福田のスタイルだ。《ポーズの途中に休憩するモデル》では、レオナルド・ダ・ヴィンチが見たであろうモナ・リザの休憩姿を表現した。常識に縛られない発想力も楽しい。美術作品に触れてはいけないという固定観念を覆すのが《開ける絵》。折りたたまれたキャンバスを鑑賞者が手で開けて絵を見る作品だ。福田はさらに、さまざまな社会問題にも注意深くまなざしを向ける。ゼレンスキー大統領などを描いた作品では、絵画だからこそできる表現で社会が抱える矛盾や難題を浮き彫りにする。
開館35周年記念 福田美蘭―美術って、なに?
会期:9月23日(土・祝)~ 11月19日(日)
会場:名古屋市美術館(愛知県名古屋市中区栄2-17-25)
時間:9:30 ~ 17:00 (11月3日を除く金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
4. アニッシュ・カプーア in 松川ボックス(松川ボックス・THE MIRROR)
未公開だった名建築で、アニッシュ・カプーアを鑑賞する贅沢
1971年に建てられ、日本建築学会の作品賞も受賞した宮脇檀(まゆみ)の名建築「松川ボックス」が、ギャラリー《THE MIRROR》としてオープンした。清水敏男のキュレーションによるオープニング展覧会を飾るのは、インド出身の世界的彫刻家、アニッシュ・カプーア。鑑賞は要予約で少人数入れ替え制のため、ゆっくりと建物や作品に対峙することができる、なんとも贅沢な展覧会だ。
1936年に生まれ62歳で没した建築家の宮脇は、一貫して住居建築を手がけた。コンクリートの箱型の外観の中に木組みの住宅をはめ込んだ「ボックス」シリーズは代表作の一つとして知られる。今回、これまで非公開だった松川ボックスを会場に、アニッシュ・カプーアの彫刻「WHITEOUT」シリーズ1点(11月24日まで)と、絵画2点を展示する。瞑想の空間を作り出す彫刻とエネルギーに満ちあふれる絵画が、名建築の空間と響きあう。
アニッシュ・カプーア in 松川ボックス
会期:9月20日(水)~ 2024年3月29日(金)
会場:松川ボックス A棟・THE MIRROR(東京都新宿区西早稲田2-14-15)
時間:13:00~16:00入場(要事前予約で 1時間ごとの入れ替え制)
5. 井田幸昌展「Panta Rhei | パンタ・レイ − 世界が存在する限り」(京都市京セラ美術館)
画家の生き様をかい間見る、躍動感あふれる作品群
卓越した画力と色彩感覚の絵画や、絵肌を思わせるようなブロンズ像や木彫作品を制作する井田幸昌。日本国内の美術館では初めての展覧会となり、国内未発表作を含む350点超の作品が集結する。一貫して「一期一会」のコンセプトを追求する井田が展覧会名に選んだのは、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの言葉「パンタ・レイ(万物は流転する)」。これまで手掛けてきた多彩な表現を見渡すと、井田の「変わり続けるもの」と「変わらないもの」が立ち現れてくる。
まず出迎えるのは、井田の身近な人や著名人を描いた代表作「ポートレート」シリーズ。厚く塗り固められた絵の具に、力強い筆致がみえる。井田が日々出会う人や風景を描いた 「End of today」 シリーズは、ブロンズの彫刻作品として立体化された作品も展示する。また、本展のために制作された293×582cmの油彩画の大作《Last Supper》は必見。レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》というモチーフに、現代を生きる画家として挑戦した。井田はこの10年を「世界を旅し、刹那的な思いを描き続けてきた」と言い、今展では「私の人生をつくってくれた作品たちを展示」すると話している。
井田幸昌展「Panta Rhei | パンタ・レイ − 世界が存在する限り」
会期:9月30日(土)~ 12月3日(日)
会場:京都市京セラ美術館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)
時間:10:00 ~ 18:00 (入場は30分前まで)