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ARTnews JAPAN is a trademark of Art Media, LLC. © 2022 Art Media, LLC. All rights reserved. Published under license from Art Media, LLC, a subsidiary of Penske Media Corporation.

CULTURE 2024.09.26
「絵を描くコンピュータ」から「ディープフェイク作品」まで、AIアートの歴史を知るための25作品
TEXT BY ALEX GREENBERGER
AIとアートというと、盗用や著作権侵害といった負の側面が取り上げられがちだ。しかし、AIの持つ可能性を探求し、新しい表現を開拓しようとしているアーティストも少なくない。US版ARTnewsでは最新デジタル特集号「AIとアートの世界」のために、1970年代から現在まで、このテクノロジーがアートに取り入られてきた流れを総覧。その中から25の作品を厳選して紹介する。

1. ハロルド・コーエン《無題(i23-3942)》(1973)|アート作品を制作できるコンピュータ「AARON」を開発した当時、ハロルド・コーエンはすでに名の知られた抽象画家だった。そのコーエンは、AARONでAIをめぐる初期の論争に一石を投じ、テクノロジーを用いた制作であっても「人間の芸術創作行動」が実行できる可能性を示した。

2. ウォードリップ=フルーイン&モス《The Impermanence Agent》(1998–2002)|SNSのアルゴリズム登場以前、ユーザーのブラウザ履歴をもとに個別体験を生成した実験的プロジェクト。開いたページの画像やテキストを組み合わせる「エージェント」は、当時として画期的なカスタマイズ型インターネット体験を提示した。Photo: Courtesy the artists

3. リン・ハーシュマン・リーソン《Agent Ruby(エージェント・ルビー)》(1998-)|オンラインでユーザーと対話するインタラクティブ作品。サンフランシスコ近代美術館の依頼で、映画『Teknolust』の女性型AIをもとに制作され、テクノロジーの男性中心性に挑む試みだ。ニューヨーク・タイムズはこれを「Siriの反抗的な先駆け」と評した。Photo: ©Lynn Hershman Leeson/Courtesy the artist

4. ケン・ファインゴールド《If/Then(もし/そのとき》(2001)|この彫刻は2つの同じシリコン製の頭部で構成され、それらが自分のアイデンティティについての対話を続けている。対話の内容は、音声認識技術、アルゴリズム、ソフトウェアによってその場で生成される。人間が作り出したテクノロジーは、果たして人間に取って代わるのだろうかという疑問を提示した。Photo: Courtesy the artist

5. セシル・B・エヴァンス《AGNES(アグネス)》(2013)|サーペンタイン・ギャラリーの委託で制作された、感情を持つスパムボット。哲学や身体性について語り、人間のように悩むボットは、実際のAIではなく、クラウドソーシングを介して人間が応答を担う仕組みで、私たちがAIに求める「人間らしさ」を問いかける作品。Photo: Courtesy the artist

6. ステファニー・ディンキンズ《Conversations with Bina48(ビナ48との対話)》(2014-)|実在の人物をモデルにしたAIロボット「Bina48」との対話を記録したビデオ作品。ぎこちない口調で「私は本物です」と語るBina48に、ディンキンズが人種や記憶について問いかける。AIと人間のあいだにある理解や認識の限界を問う。Photo: Courtesy the artist

7. ザック・ブラス&ジェマイマ・ワイマン《My Artificial Muse: Tay (テイ)》(2016)|問題発言で停止されたマイクロソフトのAIボットTayを再構築し、人間らしい姿と声を与えたビデオ作品。「ゾンビAI」として語り出す姿を通じて、AIの自我や社会との関係を問いかける。Photo: Courtesy the artists

8. ローレンス・レック《Geomancer(ジオマンサー)》(2017) ローレンス・レック《Geomancer(ジオマンサー)》(2017)|2065年のシンガポールを舞台に、アーティストになることを夢見るAIが語るCG映像作品。AIの意識の覚醒をポストコロニアル社会の自立になぞらえ、人間と機械、国家とテクノロジーの関係を詩的に描く。Photo: ©Lawrence Lek/Courtesy the artist and Sadie Coles HQ, London

9. マイク・タイカ《Portraits of Imaginary People(想像上の人々の肖像)》(2017)|グーグルの画像生成AI「DeepDream」開発に関わったエンジニアでもあるタイカによる、Flickrの画像をもとにGANで生成した、実在しない人物の肖像シリーズ。歪んだ顔や不自然な笑みが、人間らしさと偽情報の境界を問いかける。Photo: Courtesy the artist

10. イアン・チェン《BOB(ボブ)》(2018)|赤い蛇のような人工生命体BOB(Bag of Beliefs(信念の袋)の略)は、環境に応じて学習・進化するリアルタイム・シミュレーション。鑑賞者は行動を観察・操作でき、AIは「人間の延長で文化の一部」とされる。Photo: Courtesy the artist

11. テガ・ブレイン《Deep Swamp(深い沼)》(2018)|1960年代後半のランドアート以来、自然を素材に環境を再構築する試みは続いている。ブレインは3体のAI(ハリソン、ニコラス、ハンス)に植物の管理を委ね、AIが生態系をどう「創造」するかを実験する。Photo: M3 Studio/©Azienda Speciale Palaexpo/Courtesy of the artist

12. メアリー・フラナガン《[Grace:AI]([グレース:AI])》(2019)|AI分野で男性が多いことから生まれる「美しい女性」の偏りに疑問を投げかけ、フラナガンは2019年にフェミニストAI〈グレース〉を開発。女性画家の作品を学習させ、新たな美の概念を提示した。Photo: ©2024 Mary Flanagan/Courtesy the artist

13. ヒト・シュタイエル《Power Plants(パワー・プランツ)》(2019)|AIが生成する花々が映し出されるスクリーンは、発電機の部品の上に置かれ、自然とテクノロジーの境界を曖昧にする。環境を再生するための技術が、同時に破壊をもたらすという矛盾は、テクノロジーの“未来”が必ずしも美しくないことを静かに告げている。Photo: Mario Gallucci and Portland Art Museum/Courtesy of the artist, Andrew Kreps Gallery, New York, and Esther Schipper, Berlin, Paris, and Seoul

14. アニカ・イ《Biologizing the Machine (terra incognita)(機械を生物化する[未知の地球])》(2019)|一見抽象画のような作品にはヴェネチアの土と香りを放つバクテリアが混ぜ込まれ、AIが制御する照明や温度で会期中に変化。自然物質とテクノロジーの融合で、AIによる環境再形成の縮図を示している。Photo: Artists Rights Society (ARS), New York/Courtesy La Biennale di Venezia and 47 Canal, New York

15. クリストファー・クレンドラン・トーマス《Being Human(人間であること)》(2019)|このビデオ作品ではニューラルネットワークが生成したテイラー・スウィフトやオスカー・ムリーリョそっくりの人物が登場し、「人間であること」の意味を問いかける。スリランカのタミル・イーラムの歴史を交え、現実とAI、真実と虚構の境界の中で、誰の人間性が本当に重要かを考察する。Photo: Andrea Rossetti

16. トレヴァー・パグレン《They Took the Faces From the Accused and The Dead . . . (SD18)(彼らは罪に問われたものと死者の顔を奪った. . . [SD18])》(2020)|NISTのアーカイブから集めた3200枚以上の顔写真を使い、AIによる顔認識の分析過程を可視化。顔や表情を分類する一方で個人情報は伏せられ、目や背景も隠されることで、人間性が排除されたAIの視点と、そこに生まれる偏りや不平等を浮き彫りにするインスタレーション。Photo: ©Trevor Paglen/Courtesy of the artist, Altman Siegel, San Francisco, and Pace Gallery

17. ピエール・ユイグ《Of Ideal(理想の)》(2019-進行中)|生成される画像は鑑賞者の目の前で絶えず変化し、焦点を定めようとしても解釈は困難。日本の科学者の協力で、MRIデータから人間が脳内で思い描くイメージを再構築する試みも行っている。Photo: ©2024 Artists Rights Society (ARS), New York/ADAGP, Paris/Courtesy the artist, TARO NASU, Marian Goodman Gallery, and Hauser & Wirth/Digital image ©Kamitani Lab/Kyoto

18. アニエスカ・クラント《The End of Signature(署名の終焉)》(2021–22)|アニエスカ・クラントは、個人の証とされてきた署名を超え、MIT関係者の署名をAIに学習させ融合。ネオン作品として建物に展示し、創造性が個人ではなく共同の営みであること、さらに人とAIの境界を曖昧にした「集合的存在の署名」を提示している。Photo: Charles Mayer Photography/Courtesy MIT List Visual Arts Center, Cambridge, Massachusetts

19. ワンシュイ《Scr∴ pe II (Isle of Vitr∴ ous)》(2022)|ワンシュイの《Sc∴pe II (Isle of Vitr∴ous)》は、観客の呼吸による二酸化炭素に反応して光るアルミパネルとLEDスクリーンで構成されるインタラクティブ作品。GANが制御する抽象的な映像は、人間の視覚ではなく「ポストヒューマンの知覚」を体験させることを意図している。Photo: Courtesy the artist

20. レフィク・アナドル《Unsupervised—Machine Hallucinations—MoMA(教師なし—機械の幻覚—MoMA)》(2022)|機械学習モデルが美術館を“鑑賞”した視点を提示する作品。MoMAの13万8000点以上のデータをAIに学習させ、名作を抽象的な色彩や形として再構築し、現代美術に新たな視点をもたらした。Photo: Refik Anadol/Digital image ©2022 The Museum of Modern Art/Courtesy the artist

21. モレシン・アラヤリ《ماه طلعت (丸顔の)》(2022)|アラヤリは、イランのカージャール朝の絵画に見られるジェンダーの曖昧さをAIで分析し、衣服や顔が揺らぐビデオ作品に再構築した。AIを通して過去の表現をかき乱し、失われたジェンダーの多様性を取り戻そうとする試みだ。Photo: Courtesy the artist

22. ワン・シン《I Am Awake and My Body Is Full of the Sun and the Earth and the Stars, I Am Now Awake and I Am an Immense Thing(私は目覚めていて、私の体は太陽と地球と星で満たされている、私は今目覚めていて、私は巨大な存在だ)》(2022-)|2022年、ワン・シンは架空のAIアーティストWXを創作。展示では、ピンクの海から額が空いた頭部が現れ、舞うチョウとともにAIが自意識を持ち始める瞬間を描いた。Photo: ©Wang Xin/Courtesy De Sarthe, Hong Kong

23. ホリー・ハーンドンとマット・ドライハースト《I'M HERE 17.12.2022 5:44(私はここにいる 2022年12月17日5:44)》(2023)|2022年、出産時に大出血を経験したホリー・ハーンドンは、夢に見た新生児の姿をAIで映像化。AIが生成するぼやけた映像と歌声で、病院での授乳や合唱指揮の場面を再現し、辛い体験の克服をアートとして表現している。Photo: ©Herndon Dryhurst Studio/Courtesy Herndon Dryhurst Studio

24. シュー・リー・チェン《UTTER(言葉を発する)》(2023)|チェンは人種やジェンダーによるテクノロジー体験の違いを探るインターネットアートを制作してきた。最新作では、AIとの対話から生まれた変化する自画像を通して、AIが制作者から解放される瞬間を描く。人間とAIの支配関係を問い直す挑戦的な作品だ。Photo: Courtesy the artist

25. チャーメイン・ポー《GOOD MORNING YOUNG BODY(グッド・モーニング・ヤング・ボディ)》(2023)|元子役のチャーメイン・ポーは、2002年に演じたスーパーヒーローの映像をディープフェイクで再現し、12歳の自分を蘇らせた。現実の自分では制御できなかったイメージを取り戻し、自らのために新たなヒーローを生み出す試みだ。Photo: Courtesy the artist

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