東急財団が新たな美術賞を創設。アーティストと地域文化を支える担い手を発掘・育成

東急財団が新設した「東急財団 美術賞」が応募受付中だ。日本を拠点に活動するアーティストのほか、地域文化の向上に取り組むキュレーターやプロデューサーなども対象となる。年齢や国籍による制限はなく、受賞者にはそれぞれ200万円が贈られる。

「東急財団 美術賞」の選考委員。上段左から池田佳穂、宮永愛子、宮本武典。下段左から山出淳也、寄本健。Photo: Courtesy of The Tokyu Foundation
「東急財団 美術賞」の選考委員。上段左から池田佳穂、宮永愛子、宮本武典。下段左から山出淳也、寄本健。Photo: Courtesy of The Tokyu Foundation

公益財団法人東急財団によって新設されたアート・アワード「東急財団 美術賞」が現在応募を受付中だ(締切は11月30日)。審査の対象となるのは、先駆的な創作を行うアーティスト(A部門)と、地域の文化力向上に取り組むキュレーター等(B部門)のふたつ。年齢や国籍による制限はなく、日本を拠点に活動していれば、個人・団体を問わず応募できる。受賞は両部門合わせて5件ほどを予定しており、受賞者にはそれぞれ200万円が贈られる。

この美術賞のルーツにあたるのが、1990年に設立された五島記念文化財団による「五島記念文化賞新人賞」だ。同賞ではオペラと美術の分野から毎年数名を選び、海外研修を支援したほか、帰国後には成果発表の機会を設けてきた。その終了を機に事業内容を見直し、東急財団が2026年度から始めた新たな芸術・文化事業の柱のひとつが、今回の美術賞となる。新事業では、東急元会長・五島昇が掲げた「人間は働くだけでなく、生活を楽しみ、豊かさを深めることに幸せがある」という理念を受け継ぐ。そのうえで今回の美術賞も、「優れた人材の発掘と育成、援助を通して真に豊かな社会の実現に役立つ」という財団の設立趣旨に基づいて設けられた。

A部門では、先駆的な創作を行うアーティストを対象とし、独創性や社会性などを踏まえて選考する。一方、新たな賞で大きく変わったのが、アーティストに加えて「キュレーター等」を顕彰の対象にしたことだ。その対象はキュレーターに限らず、アートをまちづくりや地域の活性化に生かすプロデューサーや、地域に根ざしてアーティストの育成に携わる教育者なども、募集の対象として想定されている。つまり、肩書きにかかわらず、アートを通じて地域やアーティストの創造性を支援してきた人にも門戸が開かれている。

このように幅広い担い手を対象とする一方、選考ではその活動が社会とどのように向き合ってきたかも評価される。B部門の募集対象として掲げられている「課題解決に取り組むキュレーター等」という言葉は、地域の課題をアートで直接解決した実績を求めるものではない。問われているのは、作品や活動が現代社会の課題や価値観の変化を反映しているか、そこに込められた問題提起や着眼点に新しさがあるか、そしてそのメッセージが鑑賞者に明確に届くか、といった点だ。

東急財団は、実力がありながら、まだ十分な評価や機会を得ていない人や団体に光を当てることを目的としている。また、本賞では特定の一作品ではなく、応募者がこれまで続けてきた活動そのものが審査の対象となる。審査対象となる作品や活動は、制作・実施時期を問わない。200万円の顕彰金は受賞展に向けた制作費に限定されず、使い道は受賞者に委ねられる。応募のために新作を制作する必要もなく、これまでの作品や活動をもとに応募することが可能だ。

受賞者の発表の場も用意されている。2027年7月に渋谷ヒカリエ8階の8/COURTで授賞式を行い、同じフロアのBunkamura Gallery 8/で、A部門の受賞者は作品展示を、B部門の受賞者は公開プレゼンテーションを行う予定だ。

応募は1人、あるいは1団体につき1件までで、いずれかの部門を選ぶ。応募時には、代表作品やプロジェクトの成果がわかるPDF資料のほか、1分以内の動画やURLも提出できる。代表作品は受賞歴のないものに限られるが、入選作は提出可能だ。選考は2段階で、2027年1月に書類による一次選考を行い、結果は2月上旬までに通知される。通過者は3月に、1件20分のオンライン選考に臨む。

選考委員は、インディペンデント・キュレーターの池田佳穂、現代美術作家の宮永愛子、東京藝術大学准教授でアーツ前橋チーフキュレーターの宮本武典、Yamaide Art Office代表取締役の山出淳也、東急文化村執行役員の寄本健の5人。宮永は、前身にあたる五島記念文化賞新人賞の受賞者でもある。

本美術賞の詳細情報や応募方法については、「東急財団 美術賞」の募集要項を参照のこと。