「AIの時代にこそ芸術家が必要」──ローマ教皇が人間によるアートの営みの重要性を強調

ローマ教皇レオ14世が10月2日にバチカンで演説を行い、人工知能(AI)の時代における芸術の重要性を強調。教会はアーティストやキュレーターを必要としていると語った。レオ14世は5月にも、AIによって人間の尊厳が脅かされることへの懸念を表明している。

2026年10月2日、バチカン使徒宮殿で芸術家たちに面会した教皇レオ14世。Photo: Simone Risoluti - Vatican Media via Vatican Pool/Getty Images

10月2日、ローマ教皇レオ14世はバチカンで行われた芸術家たちとの会合で、教会は特にAIの時代においてアーティストやキュレーターを必要としていると演説した。

「AIによって10年以内に人類が滅亡する可能性がある」との声が専門家の一部から挙がる中、ドナルド・トランプ米大統領が最先端のAIモデル開発に携わる主要企業の幹部らをホワイトハウスに集め、自主規制で合意した3日後というタイミングだった。

レオ14世はバチカンの使徒宮殿でアーティストやキュレーターに対し、教会にはあなたたちが必要だと語りかけ、「それは、人間の芸術と機械が生み出すものとの区別が急務である人工知能の時代において特に重要です」と述べた。演説は、バチカン文化教育省主催の会合、「The Art of Possibility: Weaving Together(可能性の芸術:共に織りなす)」の開催にあたって行われた。

教皇は、自身が5月に発表した回勅(*1)『Magnifica Humanitas(マニフィカ・フマニタス:偉大なる人間性)……人工知能の時代における人間の尊厳の保護について』を引用し、「芸術と、他者が制作した数百万枚の画像に基づく統計的計算によって機械が生成するものとの間には、美的な違い以前に存在論的な違いがあります。アルゴリズムには『人間特有のひらめき(the spark of the human)』が欠けていますが、真の文化や芸術にはそれがあります」との見解を表明。

*1 回勅とは、世界中のカトリック教会に指針として送られる公文書のうち最も重要なもの。

また、1964年に「我われはあなた方を必要としている」と芸術家に呼びかけたパウロ6世の言葉を改めて強調したうえで、教会の務めとは「精神の世界を……人の心を動かすものにすること」であると述べ、「目に見えない世界を、誰もが親しみ、理解できる形へと翻訳する務めに関しては、あなた方こそがその達人なのです」と続けた。

演説の当日、教皇はイーロン・マスクが所有するX(旧ツイッター)にも同じ趣旨の投稿を行った。ちなみに、マスク自身もAI開発のトップ企業を集めた9月29日のトランプ大統領との会合に参加している。

アーティストやキュレーターを前にしたレオ14世は、「私たちは、何千もの答えを瞬時に提供してくれる検索エンジンの時代に生きています」と話し、「ただ、どんなに高性能であっても、検索エンジンはすでに存在する情報を出してくるだけで、私たちが求めているものを提示しがちです」と発言。さらに、芸術とは「ある種の『検索エンジン』」だと表現し、次のように付け加えた。

「芸術は、情報をインデックス化していくのではなく、探求によって進んでいくものです。実際、芸術における探求とは、単なる事実の寄せ集めで満足することなく、それらを結びつける糸を求めて絶えず深く掘り下げていく集中力を伴う営みです。均質化に抗い、私たちの視線を引きつけ、容易には消費し尽くせないものの前で立ち止まるよう促すとき、あなたがたの芸術は文化的かつ精神的な再生の形となるのです」

そして教皇は、演説をこう結んだ。「親愛なるアーティストの皆さん、キュレーターの皆さん、教会は皆さんを敬意と感謝、そして希望をもって見つめています。教会は皆さんを必要としており、私たちに委ねられた人間の尊厳を共に守っていくために、皆さんと共に歩みたいと願っています。神が皆さん一人ひとりと、その活動を祝福してくださいますように」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい