「AIスロップ」と酷評された画像、実は本物のモネだった──SNSで起きた逆転劇

SNSに投稿された「モネ風のAI生成画像」を酷評した多く声に対し、AIへの「過剰反応」との批判が集まっている。

クロード・モネ《睡蓮》(1915頃) Photo: Courtesy of Neue Pinakothek
クロード・モネ《睡蓮》(1915頃) Photo: Courtesy of Neue Pinakothek

AIを使ってモネの絵画のような画像を生成しました。この画像が本物のモネの絵画と比べて劣っている点を、なるべく詳しくリプライに書いてください」

そんな呼びかけが、Xのアカウント「@SHL0MS」に投稿された。画像をAI生成物だと受け取ったユーザーからは、すぐに多くの反応が寄せられた。あるユーザーは、モネの色使いには本来「メリハリがある」と指摘し、この画像では睡蓮が水彩画のように見える箇所もあるとコメントした。別のユーザーは、「奥行きがないせいで、水草が水中に沈んでいるのではなく、別のレイヤーの上に配置されただけのように感じられる」と述べ、さらに次のように分析している。

「本物のモネであれば、光の屈折と水面への映り込みが作品をひとつに束ねているはずだが、この画像には統一感が欠けている。パースも崩れており、睡蓮の葉の消失点が水面の表面張力と一致していない。絵画的な筆致も、単なる表面的なフィルターにすぎず、光を構造として捉えてはいない」

こうした詳細な分析を投稿するユーザーがいた一方で、コメント欄には「クソみたいな作品」や「単なるAIスロップ」といった暴言も相次いだ。

ところが、この「深みのない」モネ風の作品は、《睡蓮》シリーズに含まれる本物のモネの作品で、近代美術を主に扱っているドイツ・ミュンヘンの美術館、ノイエ・ピナコテークに収蔵されている。このことが明らかになると、今度は違いを分析していたユーザーが叩かれる対象となり、こうした分析のリプライ欄には、過剰にAIに反応しすぎているといった批判が多数寄せられている。

ただし、すべてのユーザーが画像をAI生成物だと決めつけていたわけではない。投稿直後から、これは本物のモネではないかと指摘するユーザーも、ごく少数ながら存在していた。あるユーザーは「奥行きがないというコメントには賛成できない」と記した上で、次のように述べている

「絵の具の盛り上がりや質感も、本物の油絵として通用するレベルだが、私がこれまで観てきた多くのモネ作品よりは薄塗りだ(もし本物なら、これは最晩年の作品ということになる)。最高傑作とまでは言えないが、モネの作品と言っても遜色ないだろう」

美術史家からも、画像にはモネ晩年の作品に共通する質感が見られるという指摘があった。加えて、晩年のモネは色彩感覚が変化していたため、ライラックや紫を多く用いる傾向があったという。

その後、この画像は「inferior image」と名づけられ、NFTやデジタルアートを販売するプラットフォーム「manifold.xyz」に出品された(モネの作品はパブリックドメインのため、原則、NFT化して販売しても著作権侵害にはあたらない)。入札には複数のユーザーが参加し、最終的にAIアートコレクターのJediwoldが、約640万円相当のイーサリアムで落札している

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