猫のミイラに彩色木棺、そして“未知の肩書き”も──3500年前のルクソール墓地群で発見相次ぐ

エジプト考古最高評議会が、ルクソール西岸の墓地群「ドラ・アブ・エル=ナガ」で行われた最新の発掘調査の成果を発表した。それによると、彩色木棺や猫のミイラの埋葬場所などの重要な発見が相次ぎ、これまで知られていなかった古代社会の一端をうかがわせる碑文も確認されたという。

ルクソール近郊にあるドラ・アブ・エル=ナガ地区の発掘調査を視察するシェリフ・ファティ観光・考古省相。Photo: Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

エジプトルクソール西岸、ドラ・アブ・エル=ナガ地区における新たな発見が、エジプト考古最高評議会によって発表された。この地区では、同国の考古学調査団が継続的な調査を行っており、昨年11月に始まった最新ラウンドは8回目の発掘となる。

今回の重要な成果の1つは、Baki(バキ)という人物の墓所の中庭にある竪穴で見つかった保存状態の良い10基の彩色木棺だ。鮮やかな彩色と象形文字の碑銘が施されたこれらの棺は、政情不安な時期に元の埋葬場所から移動された可能性が高く、内部のミイラに多少損傷が生じているのはそのためと考えられる。

発見された10基の棺のうち4基は、エジプト第18王朝(紀元前1570年頃~1293年頃)のものとされ、その中にはアメン神信仰に連なる音楽・歌の神、メリト神の名が刻まれた棺もあった。それより後の第21王朝(紀元前1070年頃~945年頃)の棺には、アメン神殿の神官を指すPadi-Amun(パディ・アメン)の文字が刻まれている。残りの棺は、末期王朝(紀元前664年~332年)のものと見られる。

同じ中庭からは、アメン神殿の清めの神官A-Shafi-Nakhtu(ア=シャフィ・ナクトゥ)の墓所も発見された。この墓には、中庭の竪穴と埋葬場面が描かれた入口があり、そこから埋葬室へと続いている。墓の正面には神官の妻とされる2人の女性の名前が刻まれ、どちらも「アメン神殿の歌い手」という称号が付与されていた。

このほか、Benji(ベンジ)という名と「書記官」「貴族」という肩書きが刻まれた砂岩の小像も見つかっており、近くにその人物の墓がある可能性が指摘されている。さらには、亜麻布に包まれた30体以上の猫のミイラも出土した。これらのミイラは、プトレマイオス朝時代(紀元前305年~紀元前30年)のものと考えられている。

ルクソール考古総局のアブデル・ガファル・ワグディ総局長によると、新たに発見された墓の所有者は従来の歴史資料に記載されておらず、墓や棺に刻まれていた称号や役割の中には研究者が初めて目にするものもあるという。同局長は、こうした発見は古代エジプトの行政・宗教体制に関する知見を深めるものだと述べている。(翻訳:石井佳子)

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