「最高賞拒否」を表明──メイン展示アーティストの半数が、総辞任したビエンナーレ審査員に連帯

第61回ヴェネチア・ビエンナーレで、最高賞である「金獅子賞」を決める審査員団が総辞任し、主催者側は急遽、来場者投票による新たな最高賞を創設した。それを受けて今年のメイン展示に参加するアーティストの半数が、賞の選考対象から外れることを求める声明に署名した。

第61回ヴェネチア・ビエンナーレの中央パビリオン。Photo: Simone Padovani/Getty Images

異例の事態が相次いでいる第61回ヴェネチア・ビエンナーレで、メイン展示の参加アーティストのほぼ半数が、最高賞の選考対象から外れることを求める声明に署名した。

イスラエルとロシア館参加をめぐり審査員が総辞任

4月23日、その前日に発表された2026年版の金獅子賞審査員5人は独自で声明を公表し、「国際刑事裁判所(ICC)において人道に対する罪で訴追されている指導者のいる国家の代表作家は審査対象としない」と表明した。これにより、参加をめぐって広く抗議が起きていたイスラエルロシアの両国が事実上受賞候補から除外されることとなり、大きな論争が巻き起こった。

しかし4月30日、審査員団は理由を明らかにしないまま一斉に辞任した。イタリア通信社アドンクロノスなど複数のメディアは、その背景について、イスラエル館代表アーティストのベル・シモン・ファイナルが、「人種差別」と「反ユダヤ主義」を理由に欧州人権裁判所への提訴を示唆し、圧力をかけたためだと報じている

通常、金獅子賞はメイン展示参加作家と各国パビリオン代表作家を対象に、審査員団が公式オープニング日に選出する。しかし今年は審査員団が総辞任したため、主催者側は来場者投票による新たな最高賞「ヴィジター・ライオン賞」を創設した。受賞者は、ビエンナーレ最終日の11月22日に発表される予定だ。

「審査員への連帯を示す」

こうした一連の出来事を受け、5月9日にはメイン展示参加アーティスト111人のうち52人が、e-fluxを通じて「ヴィジター・ライオン賞」を辞退する声明を発表した。声明では、この行動について「(メイン展示の準備期間中に急逝した総合キュレーター)故コヨ・クオが選出した審査員団への連帯を示すもの」だと説明している。署名者には、アルフレド・ジャー、トゥアン・アンドリュー・グエン、オトボン・ンカンガ、ワリド・ラードのほか、日本から参加した嶋田美子、ブブ・ド・ラ・マドレーヌらが名を連ねた。

この動きはメイン展示作家にとどまらず、16カ国のパビリオン参加アーティストにも広がっている。署名者には、フランス代表のイト・バラダ、リトアニア代表のエグレ・ブドヴィティテ、オランダ代表のドリース・フェルホーフェンらも含まれる。

ビエンナーレ側は中立を主張

ビエンナーレ開幕前から、政治家、芸術家、活動家らはイスラエル館とロシア館の展示中止を求めてきた。しかしビエンナーレ側は、「イタリアが国家承認している国々を排除する権限はない」として要求を退け、「いかなる排除や検閲にも反対する」との立場を示した。

開幕後、ビエンナーレ会長ピエトランジェロ・ブッタフオコは、「ビエンナーレは法廷ではない」と発言し、同展は政治的中立の場であると主張した。

一方で、2022年にロシアがウクライナへ侵攻した際には、ロシア館のアーティストとキュレーターが展示を辞退し、ビエンナーレ側もそれを受け入れている。この経緯を踏まえ、これまでもビエンナーレが政治的メッセージを帯びてきた歴史を指摘し、「本当に非政治的・非党派的な展覧会なのか」と疑問視する声も上がっている。

今年のイスラエル館は、館の改修工事に伴い、例外的にメイン展示会場であるアルセナーレ地区へ移転して開催された。プレビュー初日の5月6日には、会場前で数百人規模の抗議デモが行われた

一方、ロシア館はプレビュー期間中(5月5日〜8日)のみ一般公開され、ライブパフォーマンスを実施。その後は、会期終了まで記録映像のみが館の窓に設置されたスクリーンで上映されている。

なお、今回の声明について、US版ARTnewsはビエンナーレの広報担当者にコメントを求めたが返答は得られていない。(翻訳:編集部)

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