ヴェネチア・ビエンナーレの審査員5人が決定──クオ急逝後に理事会が選出
ヴェネチア・ビエンナーレは2026年版の金獅子賞を選ぶ審査員5人を発表した。審査員長には、サンパウロの芸術祭「ビデオブラジル・ビエンナーレ」の創設者ソランジュ・オリヴェイラ・ファルカスが就くという。芸術監督コヨ・クオの急逝を受け、今回は理事会が審査員の選出を担った。
ヴェネチア・ビエンナーレは、2026年版の金獅子賞を決める審査員5人を発表した。審査員長を務めるのはソランジュ・オリヴェイラ・ファルカス(Solange Oliveira Farkas)で、ゾーイ・バット(Zoe Butt)、エルヴィラ・ディアンガニ・オセ(Elvira Dyangani Ose)、マルタ・クズマ(Marta Kuzma)、ジョヴァンナ・ザッペリ(Giovanna Zapperi)がそれに加わる。
ファルカスは1983年、サンパウロで芸術祭「ビデオブラジル・ビエンナーレ」を創設し、2004年まで芸術監督を担った。現在は同ビエンナーレを支援するビデオブラジル文化協会を創設し、芸術監督を務めている。2007〜2010年にはバイーア州立近代美術館でディレクター兼チーフキュレーターを務め、アイザック・ジュリアンやヨーゼフ・ボイス、ソフィ・カルらの個展を企画した。近年では、2024〜2025年にモスクワのGES-2で開催された「Videobrasil. Needs no Translation」を手がけている。
ディアンガニ・オセはバルセロナ現代美術館のディレクターを務めていたが、「パブリック・アート・アブダビ・ビエンナーレ」の芸術監督に就任したことを受け、美術館側が兼務を利益相反にあたると判断し、今年2月に辞任した。これまでロンドンのザ・ショールームでディレクター兼チーフキュレーターを務めたほか、ニューヨークのクリエイティブ・タイムではシニアキュレーター、テート・モダンでは国際美術キュレーターを歴任している。現在はMACBAで開催中の巡回展「Project a Black Planet – The Art and Culture of Panafrica」の共同キュレーターも担っている。
クズマはイェール大学芸術学部の教授で、2016年から2021年まで学部長を務めた。これ以前にはノルウェー現代美術局のディレクターとして、2011年と2013年のノルウェー館キュレーター、2009年の同館コミッショナーを担当している。2012年には「ドクメンタ13」のキュレーションチームに参加し、キーウのソロス現代美術センターでは初代ディレクターを務めた。近年は、NGO団体「Ribbon International」のもとで「戦争の切迫した状況とその余波の中で展開するアーティストの実践」に焦点を当てた「Faktura 10」をキュレーションし、2025年にウクライナをはじめとする各地で展開している。
キュレーター兼ライターのバットは、東南アジアのアートに特化したキュレトリアル・プラットフォーム「イン・タンジブル・インスティテュート」の創設者だ。ザッペリはジュネーブ大学で現代美術史を教える一方、マドリードのソフィア王妃芸術センターで2019〜2020年に開催された「Defiant Muses. Delphine Seyrig and Feminist Video Collectives in France, 1970s–1980s」の共同キュレーターも務めた。
ヴェネチア・ビエンナーレで審査員は、国別パビリオン部門とメイン展示部門の金獅子賞を投票で決める。また、企画展に参加する有望な若手作家には、銀獅子賞が授与される。さらに任意で、国別パビリオンに特別表彰を1件、企画展のアーティストに最大2件の特別表彰を授与することも可能だ。
コンペティション部門の金獅子賞とは別に、ビエンナーレのキュレーターが生涯功労金獅子賞を選ぶケースもあり、通常は参加アーティストの発表前に公表されてきた。しかし今回は、芸術監督のコヨ・クオが選出前に亡くなったため、今年の授与は見送られることになった。
通常、審査員はビエンナーレの芸術監督によって選ばれ、今年のビエンナーレではクオがその役割を担っていた。しかし彼女は、企画展のタイトルおよびテーマである「In Minor Keys」 が発表される数週間前の2025年5月に急逝した。これを受けてビエンナーレは、クオの構想を引き継ぐため、5人のキュレトリアル・アドバイザーによるチーム体制でプロジェクトを進める方針を示している。
クオは審査員を選出していなかったため、今回の任命はビエンナーレ理事会が担った。理事会は会長のピエトランジェロ・ブッタフォーコが率い、イタリア文化相の任命によって就任している。理事会のメンバーには、副会長でヴェネチア市長のルイジ・ブルニャーロ、文化省代表のジャーナリストであるタマラ・グレゴレッティ、そしてヴェネト州元知事のルカ・ザイアが名を連ねる。
クオの遺志を継いだ企画展をめぐる動きに加え、ビエンナーレはこの1カ月、参加国パビリオンの確定を受けて新たな議論にも直面している。イスラエルとロシアの参加をめぐり、アート界だけでなく欧州やイタリアの政治家からも厳しい視線が向けられている。欧州連合は、ロシアの参加が制裁に抵触する可能性を指摘し、2028年ビエンナーレへの助成金200万ユーロ(約3億7300万円)の打ち切りを警告していた。そして、今週の記者会見で助成金打ち切りが正式に発表された。
こうした状況の中で、理事会の対応にも注目が集まっている。報道によれば、グレゴレッティは2019年以来不参加だったロシアの出展について文化省に報告していなかったという。この問題を受け、イタリア文化相アレッサンドロ・ジュリがグレゴレッティに辞任を求めた。(翻訳:編集部)
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