今週末に見たいアートイベントTOP5:戸谷成雄の初期から最晩年を辿る追悼展、池田亮司が4年振りの個展
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. アンリ・ロア「DEVOTION」(space Un)
吉野の自然と交感する「エコ・ポエティック」な写真世界
ハイチ・ポルトープランス生まれの写真家・作家、アンリ・ロアによる個展。幼少期に家族とともにフランスへ移住し、パリを拠点に活動してきたロアは、アフロ・ディアスポラの文脈において独自の表現を築いてきた。フランス・ヌーヴェルヴァーグの詩的感覚、ハイチの神秘思想、ラテンアメリカ文学のマジック・リアリズムなど多様な要素が交差するその作品は、写真でありながら夢や記憶の断片のような強い余韻を残す。
本展は、奈良県・吉野でのアーティスト・イン・レジデンス滞在中に制作された新作と、アフリカやハイチで撮影された過去作によって構成される。ロアが継続的に取り組む「エコ・ポエティック」という実践では、世界は可視的な存在だけでなく、異界的存在を含む多層的な空間として捉えている。本展は、鳥や風景、動物たちの象徴的なイメージを通して、写真を単なる記録ではなく、生きた環境と霊性を結びつける媒体として提示する。吉野の自然と向き合いながら立ち上がった、瞑想的な空間を体感することができるだろう。
アンリ・ロア「DEVOTION」
会期:4月25日(土)〜6月21日(日)
場所:space Un(東京都港区南青山2-4-9 KLO南青山ビル)
時間:12:00〜19:00
休館日:月火
2. 池田亮司「sleeping beauty」(TARO NASU)
数列から宇宙へ──池田亮司が誘う知覚のスケール
1966年岐阜県生まれ、現在はフランスと日本を拠点に活動する池田亮司は、電子音楽やインスタレーションを通して、音やデータ、数学的概念を知覚へと変換してきた。90年代初頭には「ダムタイプ」の舞台音楽を担当し、近年はポンピドゥー・センターでの個展など国際的な活動でも注目を集めている。
4年ぶりのギャラリーでの個展となる本展では、2022年発表の「data.gram」シリーズを発展させた最新映像作品《data.graph [n°1]》を展示するほか、数列を起点に宇宙的スケールの感覚へと鑑賞者を誘う「sleeping beauty」シリーズの新作を発表。展示を通して、膨大な情報や計算空間のなかで人間が知覚できるものの有限性を浮かび上がらせるとともに、池田が近年探究してきた「崇高」や不可視の領域についての思索を促す。
池田亮司「sleeping beauty」
会期:5月9日(土)〜6月6日(土)
場所:TARO NASU(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4F)
時間:11:00〜19:00
休館日:日月祝
3. ザ・トライアングル 倉敷安耶:女が生まれて、女が死んで、——母の血、ワイン、チョコレート、アルコール、アルコール、アルコール(京都市京セラ美術館)
転写される身体と記憶、美術史のあいだ
東京を拠点に活動する倉敷安耶(くらしき・あーや)の個展。京都造形芸術大学と東京藝術大学大学院で油画を学び、「シェル美術賞2020」入選などを経て注目を集めてきた。宗教画やウェブ画像、自身で撮影した写真などを重ね合わせたコラージュをキャンバスへ転写し、信仰やケア、共同体との関係性を探る作品で知られる。
本展では、《九相図》などの同館の所蔵作品をモチーフにした新作を発表。京都美術の歴史のなかに自身の身体的経験や個人的記憶を重ね合わせることで、個人と歴史のあいだに新たな関係性を立ち上げる。転写によって写し取られるのは図像だけでなく、そこに蓄積された時間やまなざしでもある。
ザ・トライアングル 倉敷安耶:女が生まれて、女が死んで、——母の血、ワイン、チョコレート、アルコール、アルコール、アルコール
会期:5月30日(土)〜8月30日(日)
場所:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
時間:10:00〜18:00
休館日:月曜(祝日を除く)
4. Baltic Island(スパイラル)
バルト諸国の「いま」を映す、イラストとアニメーションの島々
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の現代イラストレーションとアニメーションを紹介する展覧会。本展は、技法やテーマ、感情によって形づくられた複数の「島」を巡るような構成によって、現在のバルト地域に広がる豊かな視覚文化を浮かび上がらせる。児童書イラストレーションからコンセプチュアルな実践、コミック、実験的アニメーションまで、展示は多様な形式を横断しながら、手描き、デジタル、ハイブリッド技法が交差するイメージの風景を描き出す。
同地域では、ソビエト時代の検閲下で「行間に意味を込める」表現文化が育まれてきた。現在の若い世代の作家たちは、その重層的な感覚を引き継ぎながら、率直さやユーモア、アイロニーを交錯させた独自の視覚言語を生み出している。併設されるアニメーション上映では、詩的で内省的な作品から大胆で実験的な作品まで多彩。地図には存在しない架空の島を通して、バルト三国の想像力の現在地に触れることができる。
Baltic Island
会期:6月1日(月)〜6月14日(日)
場所:スパイラル(東京都港区南青山5-6-23)
時間:11:00〜19:00
休館日:なし
5. 戸谷成雄追悼展「彫刻家・戸谷成雄」(シュウゴアーツ)
彫刻の再構築を試みた、戸谷成雄の思索を辿る
2026年4月に逝去した彫刻家・戸谷成雄の追悼展。戸谷はポスト・ミニマリズムやもの派といった潮流のなかで解体された彫刻の再構築を試みながら、日本現代彫刻を代表する作家として大きな影響を与えてきた。北アルプスに囲まれた長野で育った経験は、「山谷構造」や「斜線構造」といった独自の彫刻理論にも通じている。2004年芸術推奨文化科学大臣賞、2009年紫綬褒章、2025年旭日小綬章を受章。武蔵野美術大学彫刻科名誉教授を務めた。
本展では、1984年にチェーンソーを用いて制作した最初期の《森 I》や、最晩年に到達したシリーズ「半彫刻」を展示。さらに、2016年にアトリエで収録されたインタビュー映像も上映される。洞窟壁画から現代彫刻までを横断しながら、存在と形態を問い続けたその思索と実践を、あらためて辿る機会となる。
戸谷成雄追悼展「彫刻家・戸谷成雄」
会期:6月6日(土)〜6月27日(土)
場所:シュウゴアーツ(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
時間:11:00〜18:00
休館日:日月祝




























