都市をスクリーンに変える「VJayBombs」とは何者か。LA発、政治風刺アート集団による新たな抵抗
トランプ政権への風刺をはじめ、政治的なメッセージをロサンゼルスの壁面に投影するアーティスト集団VJayBombs。ゲリラ的なプロジェクションとSNSでの拡散を通じて、都市空間に抗議のメッセージを刻み込む彼らに取材した。
夜の街に現れたゲリラ・プロジェクション
ドナルド・トランプ大統領が今年初めに過去最長となる一般教書演説を終えたころ、アーティスト集団はロサンゼルスのエコー・パーク・レイク近くの袋小路にクルマを停め、ひそかに作業を始めた。ゆったりとした作業着とパーカーに身を包んだ3人の男たちは、予備を含む2台のレーザープロジェクター、複数のレンズ、ノートPC、充電器をカートに積み下ろし、幹線道路に架かる歩道橋の中央へと運んでいく。ゲリラ・アート・コレクティブのVJayBombs(ヴイジェイボムズ)のメンバーたちは、暗闇に紛れながら、手慣れた様子で機材の準備を進めていった。
数分後、プロジェクターの準備が整い、高さおよそ30メートルのロサンゼルス・ダウンタウン医療センターの壁に照準が合わされた。3人は投影する映像を最後に確認する。グループの共同創設者キャットは、画面を見ながらこう言った。「自由の女神に汗を描き足したんだ。ヤバイね」
同じく共同創設者のべヴは「完璧に見えるよ」と答え、すぐにこう付け加えた。「ちょっと“immigrant”(移民)の場面に戻って。スペルは合ってたよね?」
チェックが終わると、PCがプロジェクターに接続され、映像は夜の街へ放たれた。直接目にできたのは、眼下の幹線道路を行き交うドライバーたちくらいだったが、45秒間のアニメーションは30分以上にわたってループ再生され、一般教書演説を痛烈に風刺していた。演台に立つトランプ大統領が自由の女神を人質に取る場面や、首にメダルをかけたまま口から金色の吐瀉物を吐き出す場面が描かれ、背景には「移民は悪だ!(IMMIGRANT BAD!!!)」「文書のことは忘れろ(FORGET THE FILES!)」といった文字が点滅していた。
3人目のメンバー、ケンはフェンスを飛び越え、高速道路の脇まで降りた。クルマが目の前を猛スピードで駆け抜けるなか、SNS投稿用の動画を撮ろうとスマートフォンを取り出す。だが、素材を撮りためるより先に、InstagramとTikTokのフォロワーに向けてライブ配信を始めた。
集合住宅の壁から始まった風刺アート
VJayBombsは、ロサンゼルスのコリアンタウンにある集合住宅で生まれた。ケン、べヴ、キャット(いずれも仮名)は同じマンションに住み、全員が映像作家として活動していた。3人でホームパーティを開くたびに、建物の壁面にビジュアルアートや映像を投影していたという。「結成当時は、政治的なメッセージを込めるつもりはなくて、『建物の壁で芸術的な映像表現をやってみようよ』という感じでした」とケンは語り、ニューヨークの地下鉄に描かれたグラフィティやバンクシーを参考にしていたと振り返る。「でも、『どうせメッセージを発信するなら、ちゃんとした主張を持って、物議を醸すようなことを言おうよ』という方向にはなりました」と、べヴは付け加えた。

2024年6月、アメリカ大統領選のテレビ討論でジョー・バイデン前大統領が精彩を欠いたとき、VJayBombsの3人は、コリアンタウンの住宅街でバイデンに撤退を求める作品を投影した。それから1カ月も経たないうちに、彼らはフリーウェイを見下ろすロサンゼルス・ダウンタウンの高層オフィスビルの壁面に新作を投影する。「Hawk Tuah(ホーク・トゥア[*1])」を引用し、共和党がトランプ大統領に跪く姿を描いたその作品は、ネット上で広く拡散された。「あの作品は大きな反響を呼びました」と、べヴは当時を振り返る。「初めてバズった作品でした」
*1 2024年に拡散した街頭インタビュー動画に由来するネットミーム。性的な冗談を含む擬音表現として話題になり、SNS上で広くパロディ化された。
プロジェクトを重ねるごとに、その拡散力は増していった。1月には、移民・関税執行局(ICE)に抗議するプロジェクション動画をジャーナリストのドン・レモンが再投稿し、再生数は数百万回に達した。CNNからも取材のオファーが舞い込んだ。グループ史上最も人気を集めた動画は、2月に公開された「Redacted Bowl(黒塗りボウル)」というパロディ作品だ。トランプ大統領やスティーブ・バノン、ビル・ゲイツらをアメリカンフットボールの選手に見立て、それぞれの「成績」として、エプスタイン文書に名前が出た回数を表示する内容だった。
「偶然目撃する」映像体験
ケンは、VJayBombsの作品にはふたつの見られ方があると語る。
「ひとつは、街中で偶然作品を体験する見方です。実際に目の前で見ると、本来見てはいけないものを見ているような感覚になる。なかなか味わえない体験になると思います」
べヴもそれに同調する。
「街中で見られたら、満たされた気分になると思うんです。『やった、見られた! これってせいぜい1時間くらいしか上映してないよね?』という具合に」
一方で、ケンが挙げるもうひとつの見られ方は、オンライン上での広がりだ。「どう転んでも、対面よりオンラインで見る人の方がずっと多くなりますから」
再び、高速道路に架かる歩道橋の上。橋の端に、ひとりの若い女性が現れた。彼女が近づいてくると、グループは戸惑い、作業の手を止めた。「あなたたちを見つけることが夢だったんです」と女性は言う。イタズラなのか、それとも誰かの差し金なのか。3人が警戒するなか、女性はVJayBombsの大ファンだと語り、スマートフォンで彼らの写真を撮った。べヴは穏やかに釘を刺す。「顔だけはネットに載せないでいただけますか?」
彼女は頷き、ロシア語の訛りが混じった英語で、興奮気味に続けた。
「あなたたち、本当にかっこいいです。何も恐れていないところが好きです。私の国だったら、何か発言しただけで、その日のうちに殺されてしまいますから」
グループと映像をしばらく称賛した後、女性はその場を立ち去った。キャットが口を開く。「いやはや、興味深い出来事でした。家に帰る途中で偶然見つけたのかな」
「さあ」とべヴは答える。「でも、こんなふうに声をかけられたのは初めてだね」
(翻訳:編集部)

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JR《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026) Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

JR《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026) Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026)を設営中のJR。Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026)設営の様子。Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

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