挑発的な人魚像、撤去へ。胸の大きさ巡りデンマークで賛否沸騰

デンマーク政府は、コペンハーゲンのドラガー要塞に設置されている巨大な人魚像に対し「性的すぎる」との批判が相次いだことを受け、撤去を決めた。

撤去が決まった、ドラガー要塞にある人魚像。Photo: X/@goodlobster1

コペンハーゲン南部にある文化遺産、ドラガー要塞には人魚像が設置されているが、多くの地元住民はこれが「ポルノ的」であるとして非難してきた。

デンマーク出身の童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875)の代表作『人魚姫』にちなんで制作されたこの人魚像は、高さ約4メートル、重さ14トン。岩の上に身を乗り出すように背中を反らせ、胸部が際立つポーズをとっている。当初はコペンハーゲン中心部にある有名な別の人魚像の近くに設置されていたが、住民らの「胸が強調されて性的だ」という批判から、2018年に現在のドラガー要塞に移設された。

しかしその後も、この人魚像に対する批判は絶えない。最近の例では、批評家のソリーネ・ゴットフレドセンが地元メディアのベルリンスケ紙に、「男性が抱く理想の女性像を設置することは、多くの女性が自分の身体を受け入れることを促進するとは思えない」と書いており、ポリティケン紙の美術批評家マティアス・クリューガーは、この彫刻を「醜悪でポルノ的」であると酷評している。

コペンハーゲンで最も有名な人魚像。Photo: Courtesy Wikimedia Commons

渦中の人魚像があるドラガー要塞は保護記念物であり、デンマーク博物館法の下で恒久的保護の対象となっている。像の撤去などの改変は、デンマーク文化省の一部門である文化・宮殿庁の管轄だ。アートニュースペーパーによると、同庁は声明で撤去の決定を発表、その理由をこう説明した。

「大型の人魚彫刻の設置を含む改変が同庁への事前の許可なくドラガー要塞に対して行われたと認識しています。同庁は、この彫刻が軍事的施設である要塞にそぐわない要素だと判断したため、撤去されなければならないと評価しました」

だが、同庁によると所有者が撤去の責任を負うことになっているが、現在、所有者は分かっていないという。

一方で、ベルリンスケ紙の論説編集者アミナタ・コール・トラーネは、人魚像の胸部への言及は、他人の外見を馬鹿にしたり批判したりするボディシェイミングにあたると考えている。トラーネは同紙で、コペンハーゲンで最も有名な小さい人魚像の方が間違いなく露出が多いと指摘。その上で、「(問題の人魚像は)より大きな胸を持っており、おそらく問題はそこにあるのでしょう。裸の女性の胸部が公の場に現れることを許されるためには、特定の学術的な形状とサイズを持たなければならないのでしょうか」と訴えた。

人魚像の制作を企画したデンマークの起業家、ピーター・ベックもガーディアン紙の取材に対して、人魚の胸部は単にその規模に「比例したサイズ」であると述べて擁護した。彼は人魚像を街に残すための戦いを続けていくという。(翻訳:編集部)

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