グッゲンハイム・アブダビが収蔵作品を初公表。非西洋世界の作家に重点、「美術館以上の存在」目指す

2026年にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで開館予定のグッゲンハイム・アブダビが、初めて収蔵品の詳細を明らかにした。1960年代から今日に至るまでの世界的な巨匠のみならず、これまで十分に光が当てられてこなかった地域のアーティストまでを網羅する。

グッゲンハイム・アブダビの完成予想図。Photo: Gehry Partners

アブダビ文化観光局長のモハメド・ハリファ・アル・ムバラクは、最近行われたブリーフィングで、2026年にオープンするグッゲンハイム・アブダビに収蔵される作品の内容を初めて明らかにした。それによると、ジャン=ミシェル・バスキアアンディ・ウォーホルジャクソン・ポロックマーク・ロスコといった西洋美術史に燦然と輝く巨匠から、アジアアフリカ、アラブ諸国などのまだ広く知られていない現代アーティストたちまでを網羅するという。

UAEのザ・ナショナル紙が報じたところによると、アル・ムバラク局長は、グッゲンハイム・アブダビが「単なる美術館以上の存在になる」と力を込め、次のように述べている。

「コレクションに含まれる著名アーティストと並んで、残念ながらこれまで一般の人々にはあまり知られていなかった素晴らしい現代アーティストの作品が展示されることになります。これはまさに市民のための空間で、音楽、食、ダンス、そしてもちろん現代アートを通じて人々を結びつける場所なのです」

アブダビ中心部から車で10〜15分のサディヤット島(「幸せの島」の意)にできる施設の設計を手がけたのは、世界的建築家のフランク・ゲーリー。彼は、グッゲンハイム美術館の歴史の1ページを作ったスペインのビルバオ・グッゲンハイムの設計者でもある。

ニューヨークヴェネチア(ペギー・グッゲンハイム・コレクション)、ビルバオに続く新たなグッゲンハイムの分館は、同じサディヤット島で2017年に開館したルーブル・アブダビ、11月22日に一般公開が始まった自然史博物館、そして来月開館予定のザイード国立博物館と並び立つことになる。こうした美術館・博物館の開館ラッシュに加え、来年からはアブダビ・アートがフリーズ・アブダビへ移行する。アブダビ・アートは長年の歴史を持ち、近年その規模を拡大してきた湾岸地域有数のアートフェアだ。

グッゲンハイム・アブダビ建設計画の発表は約20年前にさかのぼる。新しい美術館の実現までには長い道のりがあり、当初2012年のオープン予定だったものが2017年に延期され、さらにコロナ禍による遅れで2022年から2023年頃へと延期された経緯がある。また、2011年にはサディヤット島の開発における移民労働者の搾取と人権侵害が問題となり、複数のアーティストたちがグッゲンハイムに対して問題解決に取り組むよう求めた公開書簡に署名している。

前述のブリーフィングでアル・ムバラク局長は、収蔵品は1960年代から現在に至る作品を網羅し、これまで正当な評価を受けていないアーティストにも光を当てた「真にグローバルな」ものだと説明した。

また、「このコレクションを構築するにあたり、地域や性別といった理由で正当な評価を得られていない現代アーティストに焦点を当てることは、私たちにとって必要不可欠なことでした」と強調し、その点で「偏りのないものにする」とともに、先住民の芸術に「非常に大きな重点を置く」ことを表明している。

同局長はさらに、この計画は未来を見据えたもので、「可能な限り、22世紀の博物館はどのような姿になるのかを考えました」と語っている。そこにはAR(拡張現実)やAIの活用も含まれる。

「もちろん人間によるストーリーテリングもありますし、ARやAIも一部で活用します。ただ単に、『これは素晴らしいウォーホルだ』と来館者に言わせたくはありません。小さな説明板に、ウォーホルの作品で制作年は何年と書いてあるだけで終わりということにはしたくない。そうしたやり方は安易で、退屈です。私が伝えたいのは、ウォーホルがまさにその瞬間に何を考えていたのか、どこに住んでいたのか、周囲の環境に何が起きていたのか、ということなのです」(翻訳:石井佳子)

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