今週末に見たいアートイベントTOP5:公立美術館初のソル・ルウィット大規模展、マリーナ・タバサムの建築思想

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー(東京都現代美術館)より、ソル・ルウィット《ストラクチャー(正方形として1, 2, 3, 4, 5)》1978–80年、滋賀県立美術館蔵 © 2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society (ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.

1. マリーナ・タバサム・アーキテクツ展:People Place Poiesis(TOTOギャラリー・間)

サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン
(イギリス ロンドン、2025年)
© MTA
アルファダンガ・モスク
(バングラデシュ ファリドプル、2022年)
© Asif Salman
クディ・バリ(現地語で「小さな家」の意味)
(バングラデシュの各地、2020年~)
© Asif Salman

現代建築の倫理を更新する世界最注目の建築家

バングラデシュのダッカを拠点に活動するマリーナ・タバサム・アーキテクツ(MTA)の展覧会。MTAを率いる建築家マリーナ・タバサムは、気候や文化、伝統に根差した建築を手がけるだけでなく、自然災害や貧困等で苦しむ人々への支援に取り組んできた。こうした活動と作品が評価され、2024年にTIME誌「世界で最も影響力のある100人」に選出され、2025年にはサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンも手がけている。

本展は、「人々」「土地」、そして創作や詩作を意味する「ポイエーシス」をテーマに、MTAの作品と活動を、模型や映像、インスタレーション等で紹介する。代表作の《バイト・ウル・ロゥフ・モスク》(2020年アガ・カーン建築賞受賞)では、ダッカの土を焼成したレンガと幾何学を用いて、静謐な光をたたえ風が通り抜ける祈りの空間を創出し、拡大が続く過密都市において多様な人々が集う寛容な建築を実現した。また、洪水で住む場所を失った人のためにMTAが考案した住民の手で組み立てられる可動式住宅《クディ・バリ》の制作過程もみどころだ。本展では、MTAオリジナルの《クディ・バリ》をバングラデシュから輸送し立ち上げるとともに、日本の素材と技術で翻案した「日本版クディ・バリ」を新たに制作、展示している。

マリーナ・タバサム・アーキテクツ展:People Place Poiesis
会期:2025年11月21日(金)~2026年2月15日(日)
場所:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
時間:11:00~18:00
休館日:月祝


2. AMATEUR vol.10 山中雪乃・南谷理加 二人展「Grace」(H BEAUTY&YOUTH)

次世代のペインター2人が描く、異なる人物像

コマーシャルギャラリーとプロジェクトスペースの特性を併せ持った馬喰町の現代美術ギャラリーPARCELのディレクター・佐藤拓と、H BEAUTY&YOUTHがタッグを組む、ファッションとアート双方のアマチュア性をファクターとしてキュレーションしていく新しいアプローチのギャラリー、AMATEURによる展覧会。

同スペースでは10回目となる展覧会は、1990年代後半生まれの新鋭ペインターとして国内外で注目を集める山中雪乃と南谷理加による二人展を開催する。両者は一貫して「人物」を中心に描き続けながらも、現代の人間像をどのように捉えるかという点で異なる方向性を示している。山中は、身体の輪郭とその内側に潜む非人間的な気配を捉えるように、具象と抽象の境界を往還する。光を遮る影や画面に浮かぶ空白、液体のように流れる形象によって、「私」が何か別の存在へと変容していく過程を示唆し、セルフィー的なポーズや表情の引用は、SNS時代における自己像の揺らぎを鋭く可視化している。一方、南谷は絵画を「実験」と位置づけ、直感的な試行錯誤を通して特定の意味を伝える手段でも、視覚効果の追求のみでもない表現を探る。様々な表情の人物やモチーフ、色面などの視覚イメージが重なり合い、どこか物語を感じさせる気配をまといながら、軽い緊張が宿るスタイルが特徴だ。

AMATEUR vol.10 山中雪乃・南谷理加 二人展「Grace」
会期:2025年11月28日(金)~2026年2月3日(火)
場所:H BEAUTY&YOUTH(東京都港区南青山3-14-17)
時間:12:00~20:00(土日は11:00から)
休館日:なし


3. リー・キット「いくつかの壊れた日々とゆび」(シュウゴアーツ)

リー・キット「いくつかの壊れた日々とゆび」2025年、シュウゴアーツ
撮影:武藤滋生 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto
Lee Kit, mainstream, 2025, spray paint on stainless steel, 130x105cmLee Kit,  Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto

金属の表層に立ち現れる、感情の輪郭

香港に生まれ、現在は台湾を拠点に活動するアーティスト、リー・キット。布地に描いた絵画をテーブルクロスやカーテンとして使用する作品でキャリアをスタートさせ、日用品、ポップソングや映画、街中にある音や映像、テキストを取り入れたインスタレーションまで、絵画を空間的に拡張してきた。

キットは近年、金属板に工業用スプレーで描く新たな手法を展開している。スプレーは混色せず、乾くのが非常に早い特性を指先で巧みに操作しながら幾層にも重ねる。絵の具が浸透する布やダンボールとは異なり、硬い金属の表面に色を重ねることで、イメージは素材の構造から独立し、純粋な表層として存在する。本展では、日本滞在制作による新作ペインティングに加え、2020年より継続的に制作している写真ポートフォリオの第三弾となる新エディションも発表する。

リー・キット「いくつかの壊れた日々とゆび」
会期:2025年12月13日(土)~2026年1月31日(土)
場所:シュウゴアーツ(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
時間:11:00~18:00
休館日:日月祝


4. ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー(東京都現代美術館)

ソル・ルウィット《ウォール・ドローイング #283 青色の円、赤色の直線、黄色の直線の位置》初回展示1976年 
2017年イェール大学美術館ウェストキャンパス・コレクションセンター(コネチカット州ウェストヘイブン)での展示 
© 2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society (ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.
ソル・ルウィット《ウォール・ドローイング #1164 ドローイング・シリーズ I 2 (A & B)》構想1969年、初回展示2005年 
2010年グラッドストーン(ブリュッセル)での展示 
© 2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society (ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.
ソル・ルウィット《ストラクチャー(正方形として1, 2, 3, 4, 5)》1978–80年、滋賀県立美術館蔵
© 2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society (ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.

コンセプチュアル・アートの先駆者、ルウィットの思考の軌跡

20世紀後半を代表するアーティスト、ソル・ルウィット(1928–2007)の日本の公立美術館では初となる個展。1960年代後半、ルウィットは完成された造形よりも、それを生み出すアイデアやプロセスを重視する姿勢によって、芸術のあり方を大きく転換した作家だ。作品は「何を表しているか」ではなく、「どのような構造やルールによって成立しているのか」を問いかけるものであり、その実践はコンセプチュアル・アートの形成に決定的な影響を与えた。

本展では、ルウィットの文章や図面による指示に基づき他者の手によって壁に描かれる6点のウォール・ドローイングをはじめ、構造の連続的な変化を可視化する立体・平面作品、さらにアイデアを広く共有するために制作されてきたアーティスト・ブックなど、代表作の数々を紹介。既存の枠組みや制度を問い直し、「芸術とは何でありうるか」という問いを投げかけ続けてきたルウィットの思考の軌跡をたどる。さらに、ルウィットの制作姿勢に光を当てる構成となっており、作品を「鑑賞の対象」としてだけでなく、「思考の場」として捉える視点を提示する。

ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー
会期:2025年12月25日(木)~2026年4月2日(木)
場所:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(1月12日、2月23日を除く)1月13日、2月24日


5. 「仏教の思想と文化 -インドから日本へ- 特集展示:ギリシア・ローマ文化と仏教」(龍谷ミュージアム)

仏伝浮彫「三迦葉の帰仏」 ガンダーラ 2~3世紀 龍谷大学
トリートーン像 ガンダーラ 2~3世紀 龍谷大学
那先比丘経 中国 明・万暦17年(1589)開版 龍谷大学

貴重な資料が伝える「仏教」のアジアへの広まり

仏教はおよそ2500年前にインドで生まれてアジア全域に広がり、日本社会に根付いていった。この壮大な歩みを「アジア」と「日本」の二部構成で紹介する。第一部「アジアの仏教」では、トルファン出土の経典やパガン朝の仏像など、アジアの仏教文化圏における信仰の広がりを伝える。第二部「日本の仏教」では、日本に仏教が伝来し、根付くまでの過程を、古代から中近世に形作られた仏画や仏像、経典類から辿る。

また、パキスタン北西部を中心とするガンダーラ地域には、ギリシアやローマ、そしてペルシアといった西方の文化が絶えずもたらされた。それにより、ガンダーラの仏教美術には遠い異国の文化が混ざり、独自のスタイルを築く事となった。特集展示「ギリシア・ローマ文化と仏教」では、紀元前2世紀~後5世紀頃のガンダーラや中央アジアに認められる西方の要素を取り上げ、当時の仏教を発展させた多様な文化的土壌を伝える。

「仏教の思想と文化 -インドから日本へ- 特集展示:ギリシア・ローマ文化と仏教」
会期:2026年1月9日(水)〜2月15日(日)
場所:龍谷大学 龍谷ミュージアム(京都府京都市下京区堀川通正面下る)
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)

あわせて読みたい