今週末に見たいアートイベントTOP5:シュルレアリスムの多様な展開を一望、向井山朋子の新旧作が集う大規模展
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. 拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ(大阪中之島美術館)
優品の数々からシュルレアリスムの本質に迫る
シュルレアリスムは1924年にアンドレ・ブルトンが定義づけた動向で、「これまで無視されてきたような種々の連想における高次のリアリティと、夢の全能性への信頼に基づく」ものとされている。無意識や夢に着目したフロイトの精神分析学に影響を受けて発生したこの運動は、幻想的雰囲気、日常的事物を覆う不穏な空気、オートマティスムなど多様な表現形態を生み出した。
本展は、シュルレアリスム宣言から約100年を経た今、日本国内に所蔵されているサルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットらの作品を含む、多様なジャンルの優品を一堂に集めてシュルレアリスムの本質に迫る試みだ。視覚芸術にとどまらず、広告やファッション、インテリアなど日常に密接した場面へと拡大したシュルレアリスムを、表現の媒体をキーワードとして解体し、シュルレアリスム像の再構築をめざす。芸術的革命をもたらしたシュルレアリスムが社会全体にいかなる影響を及ぼしたか、そしてそれが今日においてもなお特筆に値するものであることを改めて示す。
拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ
会期:2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)
場所:大阪中之島美術館 4階展示室(大阪市北区中之島4-3-1)
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜
2. 危(木)口統之展(KAG)
「入るはずのないもの」が作り出す共同性
倉敷市出身の演出家・アーティスト、危口統之(1975-2017)の代表作《搬入プロジェクト》を中心とした回顧展。劇団「悪魔のしるし」を主宰した危口は、「空間に収まりきらないように見えて、ぎりぎり入る物体」を設計・製作し、参加者とともに実際に搬入を行う《搬入プロジェクト》を考案した。同プロジェクトは国内外の都市やアートフェスティバルへと広がり、近年は著作権をCC0 (Creative Commons 0) として公開することで、誰もが実施できるオープンなプロジェクトとして生前の意志が受け継がれている。
本展では、《搬入プロジェクト》とともに、幼少期を過ごした倉敷での経験、演劇サークルでの活動、「悪魔のしるし」の立ち上げから舞台作品に至るまでの軌跡を、年表・写真・スケッチ・ノート・映像資料など多様な記録を通して紹介する。キュレーションには「悪魔のしるし」のメンバーに加え、危口の弟である木口賀之が全面的に関わり、資料と記録をもとに故郷・倉敷から危口の実践をあらためて編み直す。演劇・建築・アートを自在に横断した危口統之の功績を顕彰するとともに、《搬入プロジェクト》が生み出す共同性や祝祭性を、現在の地域社会においてどのように受け継ぎうるのかを探る機会ともなっている。
危(木)口統之展
会期:1月17日(土)〜3月22日(日)
場所:KAG(岡山県倉敷市阿知3丁目1−2)
時間:12:00〜17:00
休館日:月曜
3. アート・アーカイヴ資料展XXVIII 幽暗 Shadow World——朦朧と立ち上がる土方巽の振付世界(慶應義塾大学アート・センター)
記録資料で追う土方舞踏の変遷
舞踏の創始者として知られる土方巽の振付世界を、アーカイブ資料を通して提示するアート・アーカイヴ資料展の第28回目。1959年に『禁色』を発表した土方の舞踏は30年にも満たない。だがその短い期間の中でも、1960年代に「舞踏の運動」を担った舞踏家たちと決別し新たな舞踏の創造へと向かったほか、1970年を境に自らの舞踏を決定的に変えようとした。そして土方は1973年に舞踏の舞台から降りた後、「Butoh Score」として舞踏メソッドを本格的に構築した。
本展では「幽霊」を形象する特定の動きに着目するとともに、海外の新たな視点と映像の手法を得て、舞踏譜をベースにした土方巽の舞踏メソッドを提示し問いかける。また、1977年の「小林嵯峨舞踏公演 にがい光」と1978年の「仁村桃子舞踏公演・アスベスト館松代分室設置記念 最初の花」の2作品に焦点を当てつつ1976年からの土方巽の創作活動の流れを俯瞰する。また、1970年代後半の映像作品の特別上映会も予定されている。
アート・アーカイヴ資料展XXVIII 幽暗 Shadow World——朦朧と立ち上がる土方巽の振付世界
会期:1月19日(月)〜3月14日(土)
場所:慶應義塾大学アート・センター(東京都港区三田2-15-45 三田キャンパス南別館1階アート・スペース)
時間:11:00〜18:00
休館日:土日祝(3月14日を除く)、3月9日
4. 向井山朋子 Act of Fire(アーツ前橋)
喪失や怒りを燃焼させる儀礼としての「火」
オランダ・アムステルダムを拠点に活動するピアニスト・美術家、向井山朋子の美術館では初となる大規模個展。1991年に国際ガウデアムス演奏家コンクールで日本人として初めて優勝し、村松賞を受賞した向井山は、女性性を核に、身体性、セクシュアリティ、境界、記憶、儀式、自然、時空など異なるテーマを横断し、従来の形式にとらわれない舞台芸術やインスタレーション、映像作品を発表してきた。2007年にはオランダに向井山朋子ファンデーションを設立、2015年には日本で一般社団法人マルタスを立ち上げ、プロデュースの分野でも活躍している。
同館の6つのギャラリーを地下劇場に見立てた回廊型インスタレーションとして構成される本展には、シルクドレスの迷宮《wasted》(2009)、3.11の津波で破壊されたグランドピアノを用いた《nocturne》(2011)、映像詩《ここから》(2025)など新旧の作品が再構築されて登場する。タイトルの「Act of Fire」は、喪失・抵抗・怒りを燃焼させる儀礼的な空間であると同時に、ジェンダー不平等、激甚化する自然災害、終わりなき侵略といった現実世界の問題を「火」という根源的なメディアによって照らし出していく行為を示唆している。回廊に映し出される家族の肖像、男だけの火祭り、凝固した経血、津波の泥、燃え尽きるピアノなどのイメージは、鑑賞者の記憶を呼び覚ますだけでなく、社会的な現実とそれに対する「怒り」「喪失」「痛み」との関係性を訴える。
向井山朋子 Act of Fire
会期:1月24日(土)〜3月22日(日)
場所:アーツ前橋(群馬県前橋市千代田町5丁目1-16)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:水曜
5. FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES(シャネル・ネクサス・ホール)
ロー・エスリッジが映す、シャネルのレガシー
アメリカ人写真家ロー・エスリッジによる個展。エスリッジは実験精神に突き動かされ、ファインアートとコマーシャル・フォトグラフィーの境界を曖昧にし、独自のスタイルを築いてきた。彼の写真はニューヨーク近代美術館(MoMA)、ロンドンのテート・モダン、ボストン現代美術館などの美術機関に収蔵されるなど国際的に高い評価を得ている。シャネルは10年以上にわたりエスリッジと協働してきたが、近年、ガブリエル・シャネルの所蔵品を探求するプロジェクトを新たに依頼した。
エスリッジは普段は閉ざされている、メゾンのアーカイブ施設「パトリモアンヌ」に所蔵されたアイテムとともに、パリ、カンボン通り31番地にあるクチュリエのアパルトマンのプライベートコレクションを撮影した。展示作品には、ジャック リプシッツによるシャネルの胸像、ピエール ルヴェルディによる『ミシアのための詩』の手稿、サルバドール・ダリとガラによるイラスト付きの献辞本、バレエ「三角帽子」のためのパブロ・ピカソによるスケッチ、2世紀のエジプトの葬儀用マスクなど様々なオブジェが写されている。
ロー・エスリッジの写真を通すことで、シャネルのアーカイブは単なる歴史資料ではなく、現代的な視覚感覚によって読み替えられ、多層的な意味を帯びた像として立ち上がる。日常的な視覚言語に根ざしたそのまなざしは、シャネルの遺産に親密さをもたらすと同時に、新たな解釈の余地を開いていくように見える。
FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES
会期:2月25日(水)〜4月18日(土)
場所:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
時間:11:00〜19:00
休館日:なし






























