トラック運転手が畑で発見、古代ローマの金の指輪が博物館へ──発見者は住宅ローン完済
- TEXT BY ARTNEWS JAPAN
イングランド南西部サマセット州の農地で金属探知機愛好家が発見したローマ時代の金の指輪が、地元の遺産保護団体に購入され、サマセット博物館で展示されることになった。
イングランド南西部サマセット州イルミンスター近郊の農地で金属探知機愛好家によって発見されたローマ時代の金の指輪が、地元の遺産保護団体によって購入され、サマセット博物館で展示されることになった。BBCが報じた。
畑の中から1700年前の金の指輪が出現
「イルミンスター・リング」と呼ばれるこの指輪は2018年、元軍人でトラック運転手のケヴィン・ミントが、運動不足解消も兼ねて続けていた金属探知機による探索中に発見したものだ。ミントは農地で光る物体を見つけた際、最初はコインだと思ったという。しかし掘り起こしてみると、それは金の指輪だった。
指輪は西暦297年ごろのものとみられ、重さは48グラム。2頭立ての戦車を操る勝利の女神ヴィクトリアが刻まれた大きな宝石がはめ込まれており、台座には精緻な細工が施されていた。さらに周辺からは、297枚のローマ時代のコインも見つかっている。ミントはBBCの取材に、発見当時をこう振り返った。
「圧倒されてしまって、すぐには現実味がありませんでした。一日中掘り続けてへとへとになり、家に帰ってからようやく何を見つけたのか実感が湧いてきたんです」

その後、指輪とコインは、サマセット州とデヴォン州を中心に歴史・文化遺産の保存と公開を行う独立系慈善団体、サウス・ウェスト・ヘリテージ・トラスト(South West Heritage Trust)が7万8000ポンド(約1670万円)で購入した。
「ブリテン島において類例のない発見」
同トラストは今回の発見について、指輪の芸術的価値の高さを強調し、「ブリテン島において類例のない発見」と評価している。同トラストのシニア・キュレーター、アマル・クレイシェは、宝石に刻まれた洗練された意匠と、驚くほど大量の金が使用されていることの対比を指摘した。そのうえで、指輪の所有者はイルミンスター周辺に住んでいた裕福なローマ人で、総督や商人、あるいは大地主だった可能性があり、重要な行事の際だけ身に着けていたか、何らかの儀礼的用途に用いていたのではないかとの見方を示した。
さらにクレイシェは、ローマ属州ブリタニアでは286年から296年にかけて、分離政権による政治的な混乱が生じていたと説明する。指輪はその混乱が収束した翌年の297年ごろ、何らかの理由でコインや鉛製品、陶器などとともに埋められた可能性が高いという。「考古学者が普段扱うのは、陶器の破片や動物の骨といった壊れたものがほとんどです。これほど保存状態の良い発見に出会うことはめったにありません」とクレイシェは語った。
ガーディアン紙によると、トラストが支払った購入額の半分は土地所有者に渡り、残る半分は発見当日にミントとともに探索していた仲間との間で分配されたという。その取り分によってミントは住宅ローンを完済。週5日だったトラック運転手の勤務を週4日に減らした。
イルミンスター・リングは現在、地元の小学校を巡回展示中で、8月にはイルミンスター・アーツ・センターで「イルミンスター・リング・ディスカバリー・デー」が開催される予定だ。最終的にはトーントンのサマセット博物館で常設展示される。
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