イギリス の人気絵画鑑定ドキュメンタリー「Fake or Fortune?(偽物か、お宝か?)」は、ジャーナリストのフィオナ・ブルースとギャラリー経営者で美術史家のフィリップ・モールドを中心に、依頼された作品の真贋を調査するBBC Oneの長寿番組だ。
7月23日に放送された同番組では、作者不明とされていた絵画が18世紀のスコットランド 出身の画家、キャサリン・リードによるものであることが明らかになった。この作品の鑑定を番組に依頼した元会計士のメアリー・ルイーズ・ウェダーバーンは、20年前に叔父からこれを受け継いだという。
寝袋に包まれていた金色の額縁の作品には、物憂げな表情を浮かべ、何重もの真珠のネックレスと大きなエメラルドのペンダントを身につけた若いインド 人女性の肖像 が描かれている。BBCによると、調査はまったくの手探り状態で行われたわけではなかった。ウェダーバーンが、遠縁にあたるリードの作品ではないかと考えていたからだ。結果、この肖像画の鑑定額は10万ポンド(約2180万円)とされた。
18世紀に広く知られた肖像画家
キャサリン・リードは、スコットランドのダンディーで1723年に生まれた。1770年代半ばに姪とインドへ旅したが、数年後にイギリスへの帰路で客死している。18世紀に広く知られた肖像画家として活躍した彼女の作品の多くは、油彩やパステル画で女性や子どもを描いたものだ。
リードが手がけた肖像画を所蔵するダンディーの美術館「マクマナス」のフェイスブックへの投稿によると、彼女の全身肖像画の制作料は、同時代の肖像画の大家で英ロイヤル・アカデミーの初代会長を務めたジョシュア・レイノルズと同じ金額(150ギニー)だった。これは当時、リードが非常に高く評価されていたことを示している。
また、やはり18世紀の著名な肖像画家トマス・ゲインズバラ の相場は100ギニーだったという。それから2世紀以上が過ぎた今、レイノルズとゲインズバラはともにイギリスを代表する肖像画家として美術史に名を残しているが、リードはほとんど忘れられた存在になってしまった。
番組の進行役の1人であるモールドのギャラリー「フィリップ・モールド・アンド・カンパニー」はロンドン の中心部にあり、テューダー朝の時代から20世紀前半まで500年にわたるオールドマスターやイギリス人アーティストの作品を幅広く扱っている。
そのモールドとブルースは7月23日放送の回で、肖像画の作者と謎めいたモデルの正体を突き止めるべく、ダンディーやインド・チェンナイの学者、歴史家たちに取材。「この絵画がキャサリン・リードの作品であることは間違いない」と断言したのは、インド美術を専門とするイギリスの美術史家チャールズ・グレイグだった。モデルの女性が誰であるかは特定できなかったが、おそらくムガル帝国時代のナワブ(当時の地方高官)の妻だろうとされている。(翻訳:石井佳子)
「消えた名作」の情報求む! モディリアーニ、イサム・ノグチ、リキテンスタインなど所在不明の10作品
今年4月、100年近く行方不明だったグスタフ・クリムト作の肖像画に、オークションで約50億円の値がついたことが話題になった。しかし、長年にわたり世間から姿を消したままの作品はこれだけではない。この記事では、美術史家で著述家の筆者がピックアップした、19世紀から20世紀半ばにかけての10作品を紹介する。
エヴァ・ゴンザレス《Les Oies(雁)》(1865-70年頃)。1885年にサロン・デ・ラ・ヴィ・モデルヌで開催されたエヴァ・ゴンザレス展の展示風景。【作品の詳細はこちら】 Photo: Courtesy of the Wildenstein Plattner Institute
《Les Oies(雁)》(1865-70年頃) Photo: Courtesy of the Wildenstein Plattner Institute
ジョセフ・アルバース 《自画像》(1917-1919年頃)。ジョセフ・アルバースの妹エリザベートとその夫ルドルフ・マルクスの写真。背景にあるのが所在不明のアルバースの自画像。【作品の詳細はこちら】 Photo: Artwork copyright © The Josef and Anni Albers Foundation/Artists Rights Society (ARS), New York. Digital image courtesy of the Josef & Anni Albers Foundation
アメデオ・モディリアーニ 《Portrait de Jeune Fille》(1918-19)【作品の詳細はこちら】 Photo: Alberto G. D'Atri papers, Archives of American Art, Smithsonian Institution. Photograph of archival print taken by Leslie Koot
マースデン・ハートレー《Lemons in a Bowl》(1927-29)【作品の詳細はこちら】 Photo: Courtesy of the Marsden Hartley Legacy Project, Bates College Museum of Art
イサム・ノグチ 《Power House (Study for Neon Tube Sculpture)》(1928)【作品の詳細はこちら】 Photo: Artwork © Estate of Isamu Noguchi/Artists Rights Society (ARS), New York. Digital image courtesy of the Isamu Noguchi Foundation
イブラム・ラソー《Abstract Sculpture in Steel》(1938)【作品の詳細はこちら】 Photo: Courtesy of Denise Lassaw
フィリップ・ガストン 《AT-6's Over Matagorda Bay》(1943)【作品の詳細はこちら】 Photo: Artwork copyright © The Estate of Philip Guston. Digital image courtesy of The Estate of Philip Guston
ドロテア・タニング 《Tempest in White》(1947)【作品の詳細はこちら】 Photo: Artwork copyright © The Estate of Dorothea Tanning/Artists Rights Society (ARS), New York/VG Bild-Kunst, Bonn. DIgital image courtesy of the Dorothea Tanning Foundation
ロイ・リキテンスタイン 《Knight with Lance on Horse》(1948年頃)【作品の詳細はこちら】 Photo: Artwork © copyright Estate of Roy Lichtenstein. Digital image courtesy of the Estate of Roy Lichtenstein
ロバート・ラウシェンバーグ 《Untitled(Scatole Personali)》(1953)【作品の詳細はこちら】 Photo : Artwork copyright ©Robert Rauschenberg Foundation. Digital image courtesy of the Robert Rauschenberg Foundation
from ARTnews
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