今週末に見たいアートイベントTOP5:リュック・タイマンスの新作6点を世界初公開、津野青嵐が表現する「溢れ出るもの」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

藝大式 美術の「ミカタ」―この夏、藝大生になる―(東京藝術大学大学美術館)より、小倉遊亀「径」

1. リュック・タイマンス「結露 Condensation」(リヒター・ラウム)

《Palestinian Wildflower》2026, oil on canvas, 71.8 × 48.1 cm © Studio Luc Tuymans, courtesy WAKO WORKS OF ART
《Funnel》2026, oil on canvas, 63.3 × 60.9 cm © Studio Luc Tuymans, courtesy WAKO WORKS OF ART
《Mural Skull》2026, oil on canvas, 60 × 65.8 cm © Studio Luc Tuymans, courtesy WAKO WORKS OF ART

イメージが定まる直前の瞬間

ベルギーを代表する画家のひとり、リュック・タイマンスは1958年にベルギー・モルツェルに生まれ、1980年代以降、写真や映像、印刷物、デジタルメディアなど、すでに別の媒体を経たイメージをもとに絵画を制作してきた。抑制された色彩と曖昧な輪郭を特徴とする作品を通して、描かれているものと描かれずに残されているもののあいだにある、イメージの不確かさを探っている。

本展では、展示空間に合わせて制作された6点の新作油彩を世界初公開する。タイトルの「Condensation(結露)」は、本来目に見えない差異が表面に現れる現象を指す。新作には、暗い画面の中央に小さな光のような像が浮かぶ《Funnel(漏斗)》や、壁画に描かれた髑髏と子猫をもとにした《Mural skull》《Mural kitten》、花をモチーフに土地や記憶を想起させる《Palestinian Wildflower(パレスチナの野花)》などが並ぶ。異なるモチーフを通して、タイマンスが長年取り組んできた、既存のイメージを絵画へと移し替える試みを見ることができる。ゲルハルト・リヒター新作展「10 Drawings and 2 Collages」も同時開催。

リュック・タイマンス「結露 Condensation」
会期:5月30日(土)〜10月31日(土)※事前予約制
場所:リヒター・ラウム(長野県軽井沢町軽井沢1323-1475)
時間:曜日により異なる。公式予約ページにて要確認。
休館日:9月4日、ほか不定休


2. 藝大式 美術の「ミカタ」―この夏、藝大生になる―(東京藝術大学大学美術館)

黒田清輝「トゥルプ博士の解剖講義」
小倉遊亀「径」
原田直次郎「靴屋の親爺」
澤田かおり「「源氏物語絵巻」第五十帖東屋一模写」

展覧会で美術の「講義」を体験

2026年から2028年まで3年にわたって毎夏開催されるシリーズ企画の第1回。東京藝術大学の現役講師陣が12コマの「講義」を担当し、美術館の展示を大学の授業のように楽しむ展覧会だ。美術史や実技、表現、鑑賞、素材、保存修復など、さまざまなテーマを取り上げ、同大学が所蔵する作品や資料を教材として「聴講」するように鑑賞する。

会場では、現役藝大生による模写の実践や、気軽に参加できる体験展示、自身のスマートフォンとイヤホンを使って無料の音声ガイドも楽しめる。美術を専門的に学んだことがない人も、それぞれの興味に合わせて「講義」を選びながら、美術の見方を広げられる構成だ。

藝大式 美術の「ミカタ」―この夏、藝大生になる―
会期:7月24日(金)〜9月23日(水祝)
場所:東京藝術大学大学美術館 本館(東京都台東区上野公園12-8)
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(9月21日を除く)


3. 嶌村吉祥丸 写真展「what matters」(ライカギャラリー表参道/ライカギャラリー京都)

ライカギャラリー表参道の展示作品。
ライカギャラリー京都の展示作品。
ライカギャラリー表参道の展示風景。
ライカギャラリー表参道の展示風景。
ライカギャラリー京都の展示風景。

アメリカの街で見つめた、何気ない日常

東京生まれの写真家・嶌村吉祥丸は、写真を軸に、アーティストやデザイナーなどさまざまな表現者と協働しながら、ギャラリーのディレクションやキュレーション、ブランドのプロデュースなど幅広く活動している。これまで東京、ポートランド、ワルシャワなどで個展を開催し、写真集も発表してきた。本展は、ニューヨーク、ポートランド、ロサンゼルスを旅し、ライカSLシステムの新製品「ライカSL3-P」で撮りおろした作品で構成される。

ファインダーに収められたのは、友人との語らいや街角、公園、カフェ、スケートパークなどの日常の風景。あらかじめ目的地や被写体を定めず、街を歩き、人々と出会いながら撮影を続けたという。タイトルの「what matters(重要なこと)」は、旅を終えて写真を見返すなかで、特別な出来事よりも人々と過ごした時間や日々の風景が記憶に残っていたことから名付けられた。ライカギャラリー表参道とライカギャラリー京都で同時開催。

嶌村吉祥丸 写真展「what matters」
会期:7月31日(金)〜10月18日(日)
場所:ライカギャラリー表参道(東京都渋谷区神宮前5-16-15)
時間:11:00〜19:00
休館日:月曜

【同時開催】
会期:8月1日(土)〜10月1日(木)
場所:ライカギャラリー京都(京都府京都市東山区祇園町南側570-120 2F)
時間:11:00〜19:00
休館日:月曜


4. 「SNSで出会ったアーティスト達 ― 出会ったその時・現在・未来 ―」(Kaikai Kiki Gallery)

Utanhole, Free Fall, 2025-2026, Acrylic gouache and colored pencil on canvas (Diptych), 1621x2609 mm ©Utanhole
Courtesy of Kaikai Kiki Gallery
YEYE, 星, 2026, Acrylic on Canvas, 730 x 612 x 42 mm ©YEYE
Courtesy of Kaikai Kiki Gallery
太田桃香, いつまでも浮かんでいてくれ, 2025, Oil on canvas, 2275 x 3645 mm ©Momoka Ota
Courtesy of Kaikai Kiki Gallery
さいとうなおき, 燃えよ!紅龍ちゃん!!, 2026, Acrylic on canvas, 846 x 647 x 55 mm ©Naoki Saito
Courtesy of Kaikai Kiki Gallery

SNSから始まった出会い、その先にあるアート

同ギャラリーがSNSを通じて出会ったアーティスト12組を紹介する特別企画展。くらやえみ、Utanhole、MADSAKI、太田桃香、本秀康、夢野くる、さいとうなおき、黒瀧舞衣、前川秀樹、YEYE、戸川五十生、Alison Friendが参加し、それぞれの過去と現在の作品を展示する。

本展は、パンデミック以降のInstagramなどを介した作品の発見や直接販売、ギャラリーとの契約、さらに2025年以降、世界的に相次ぐギャラリーの閉廊など、変化するアート市場とアーティストを取り巻く環境に着目。「出会ったその時・現在・未来」という時間軸から、SNSをきっかけに生まれたアーティストとギャラリーの関係と、12組の作家それぞれの活動の変化を紹介する。

「SNSで出会ったアーティスト達 ― 出会ったその時・現在・未来 ―」
会期:8月14日(金)〜9月13日(日)
場所:Kaikai Kiki Gallery(東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビル B1F)
時間:11:00〜19:00
休館日:日月祝(9月13日はTokyo Gendaiに合わせて開廊)


5. 津野青嵐個展「Spilling Body」(EUKARYOTE)

衣服と蜜蝋が表す、「体から溢れ出るもの」

1990年長野県生まれの津野青嵐は、ファッションデザインを出発点に、身体と衣服の関係や身体感覚をめぐる制作・研究を行ってきた。日本赤十字看護大学を卒業後、精神科病院や北海道・浦河べてるの家での勤務を経て、東京科学大学大学院で美学者・伊藤亜紗のもと研究。現在は衣服に加え、映像やドローイング、文筆などにも活動を広げている。

本展では、3Dペンで人体の輪郭をなぞるように制作したドレス《Out of Body, In Dress》をはじめ、映像、ドローイング、コラージュ、蜜蝋を用いた版画作品などを展示。ミツバチが体内の脂肪を代謝して生み出す蜜蝋にも着目し、身体を構成するものが輪郭の外へこぼれ、別の物質へと変化する過程を作品に取り入れている。「Spilling Body」というタイトルには、こうした身体から何かがこぼれ出す状態と、身体そのものがあふれ出す状態という2つの意味が込められている。

津野青嵐個展「Spilling Body」
会期:8月21日(金)〜9月13日(日)
場所:EUKARYOTE(東京都渋谷区神宮前3-41-3)
時間:12:00〜19:00
休廊日:月火

あわせて読みたい