ヴァン クリーフ&アーペルの6億円超ネックレスを強奪──開館中の博物館で展示ケースを破壊

オーストリア・ウィーンの博物館で先週、合計200カラットを超えるダイヤモンドがあしらわれたヴァン クリーフ&アーペルのネックレスが白昼堂々盗まれた。容疑者とされる2人組の男は、展示ケースを破壊して持ち去ったという。

パリ自然史博物館の展覧会に、今回盗まれたダイヤモンドのネックレスが出展されたときの展示風景(2020年9月15日撮影)。Photo Stephane de Sakutin/AFP via Getty Images

8月27日、オーストリア応用美術博物館(MAK)で、2人組の男が開催中のヴァン クリーフ&アーペルのジュエリー展から400万ドル(直近の為替レートで約6億4000万円、以下同)相当のダイヤモンドのネックレスを盗んで逃走した。現地紙クローネン・ツァイトゥングの報道では、事件発生は開館時間中のことで、2人の身元は不明とされている。

翌28日に警察当局は、2人は同館の入場券を購入して館内に入ったが、その際マスクなどは着用しておらず、監視カメラに姿が鮮明に捉えられていたと発表した。CBSニュースによると、男たちはハンマーで展示ケースを壊し、ネックレスを奪って逃走したという。この件で、けが人は出ていない。

盗まれたのは、プラチナ製で673個のダイヤモンドがあしらわれたネックレスで、合計200カラットを超えるものだ。フランスの高級宝飾ブランド、ヴァン クリーフ&アーペルが1939年のエジプト王室の婚礼用に制作し、ナズリ王妃が娘のファウズィーヤ王女とモハンマド・レザー・パフラヴィー(当時イラン皇太子で後の同国最後の皇帝、日本ではパーレビ国王と呼ばれた)との結婚式で着用している。2015年にはサザビーズニューヨークオークションに出品され、430万ドル(約6億9000万円)で落札された。

ネックレスが展示されていたのは、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーとMAK所蔵の名品を組み合わせた展覧会「Glanzstücke(マスターピース)」だ。6月に開幕した同展の展示品は約500点で、そのうち約300点がヴァン クリーフ&アーペルの宝飾品、同館の所蔵品からは200点が出展されていた。会期は9月27日までだったが、この盗難事件を受けて無期限の閉鎖措置が取られた。MAKはCBSニュースに対し、警察の捜査中であるため詳細は公表できないとしている。

一方、容疑者の大規模な捜索を開始したウィーン警察は現在、監視カメラ映像の分析を進めている。クローネン・ツァイトゥング紙は、捜査当局はバルカン半島を拠点とする犯罪組織の指示による計画的な犯行だと見ていると報じたが、当局はその説を公式見解として認めていない。

今回の事件は、オーストリアで最も世間を騒がせた美術館窃盗事件を彷彿とさせる。それは、評価額約5000万ユーロ(約93億円)とされるベンヴェヌート・チェッリーニ作の黄金とエナメル細工の塩入れ(サリエラ)が2003年にウィーン美術史美術館から盗まれた事件で、このときの犯人は足場をよじ登って窓から侵入している。同作は幸い、3年後に回収された。

MAKの事件は、パリルーブル美術館で起きた大胆な宝石窃盗事件から1年も経たないうちに発生した。2025年10月、ルーブルの「アポロンのギャラリー」に侵入した犯人グループが、ウジェニー皇后やマリー・アメリ王妃ゆかりの品などフランス王室の至宝8点を奪取。被害額は8800万ユーロ(約164億円)とされたが、当時フランス当局は、盗まれた品々の歴史的価値は市場価格をはるかに超えるとコメントしている。(翻訳:石井佳子)

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