「ビリェーナの財宝」3億円相当がわずか4分で盗まれる──現金化しやすい貴金属文化財が標的に

「ビリェーナの財宝」と呼ばれる青銅器時代の金の装飾品や鉢などが、スペイン東部の博物館から盗まれた。これらはアリカンテ県の遺跡カベソ・レドンドから出土したヨーロッパ有数の黄金遺物とされ、被害額は約3億円にのぼると見られている。

ビリェーナの財宝。Photo: Museum of Villena

スペイン・バレンシア州アリカンテ県にあるビリェーナ博物館で、「ビリェーナの財宝」として知られる青銅器時代の遺物から多数の金製品が持ち去られた。英ガーディアン紙の報道によると、事件が起きたのは8月27日の早朝で、犯行時間はわずか4分だった。

66点あるビリェーナの財宝には、今から3000年前の紀元前1000年にさかのぼる黄金の腕輪29点や11点の鉢、瓶3点などが含まれている。盗まれた正確な点数は現時点で不明だが、その価値は170万ユーロ(約3億円)と推定されている。

地元メディアの報道によると、現場に残されたのは銀製の器3個、ブレスレット1個、そして「バストン・デル・レイエスエロ(ミソサザイの杖)」と呼ばれる先史時代の儀式用笏の装飾の一部だけだった。これについてビリェーナのフルヘンシオ・セルダン市長は、「財宝の大部分」が持ち去られたとし、次のように語った。

「ビリェーナ市は完全に打ちのめされており、私自身も震えが止まりません。これは市民にとって計り知れない打撃です。私たちの遺産であり、富の一部なのですから」

ビリェーナ市議会の広報担当者によると、現地時間の午前5時20分頃に博物館の警報が作動。犯人は5時24分までには建物から逃走していたという。そのため、今回の犯行は「極めて迅速かつプロフェッショナルなもの」と見られている。

また、スペイン政府のアリカンテ担当副代表であるマヌエル・ピネダは、窃盗団が数台の車両で到着し、窓から博物館に侵入したと説明。一方、博物館の広報担当者は、「全ての警備システムが作動していた」とし、同館の対応に「不備はなかった」と述べている。

今回の事件は綿密に計画されたものと考えられる。美術館で警報が鳴る前に、市内のスポーツセンターでも警報が作動しており、当局はこの件を不審な動きと見ている。アリカンテ大学の考古学教授であり、盗まれた財宝の専門家でもあるマウロ・エルナンデスはラジオ局のカデナSERに、「彼らは極めて周到に計画を練っていました。どんな方法でどう行動し、どうやって逃走するかを心得ていたのです」と話している。

この事件の直前、ヨーロッパの美術館・博物館で起きた盗難事件に関するユーロポール(欧州刑事警察機構)の報告書が発表された。同報告書によると、近年は特に市場での価値が高く、溶かして現金化しやすい貴金属や宝飾品が犯罪者の標的とされ、その手口がより暴力的になっているという。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい