厳重警備を突破、正面玄関から逃走──仏博物館で2500年前の金の首飾りが盗まれる

フランス東部の博物館で、約2500年前の金の首飾りが盗まれる事件が起きた。相次ぐ窃盗未遂を受けて警備を強化していたが、犯行グループの侵入を防げなかった。

7月24日に盗み出された金のトルク。Photo: Courtesy Musée du Pays Châtillonnais – Trésor de Vix
7月24日に盗み出された金のトルク。Photo: Courtesy Musée du Pays Châtillonnais – Trésor de Vix

フランスの日刊紙、ル・パリジャンと公共放送フランス3によると、7月24日、ブルゴーニュ地方シャティヨン=シュル=セーヌのシャティヨン地方博物館から、「ヴィクスの宝物」の一部で、約2500年前に作られた金の首飾りが盗まれた

窃盗犯らは午前10時30分ごろ、一般の来館者を装って入館料を支払い、館内に入ったとみられる。地元検察官のオリヴィエ・カラコッチはル・パリジャン紙に対し、「犯行グループは、トルクと呼ばれる金の首飾りが収められた展示ケースを破壊し、正面玄関から逃走した」と説明した。さらに、事件を組織犯罪として捜査しているとしたうえで、犯行の性質や捜査手続きの複雑さを踏まえ、広域専門司法機関(JIRS)と共同で捜査を進めると述べた。

ル・パリジャン紙によれば、シャティヨン=シュル=セーヌ市長で、周辺自治体でつくるシャティヨン地方コミューン共同体の会長も務めるジェレミー・ブリガンは声明で、同館が過去8カ月に「2度の窃盗未遂」に遭っていたと明らかにした。博物館はその後、新たな防犯カメラや動体検知器、ドアセンサーの導入などに約15万ユーロ(約2800万円)を投じ、警備を強化していた。

ブリガンは今回の事件を「文化遺産と公益に対する攻撃」と位置づけ、「こうした措置を講じたにもかかわらず、犯人たちは犯行を成し遂げるだけの組織力と実行力、そして執念を見せつけました」とル・パリジャン紙に語った。さらに、盗まれたトルクは「金銭的価値を超えた、シャティヨンの歴史的遺産」だとして、「犯罪者たちによって国と地域の歴史が攻撃されたことは、実に痛ましく遺憾です」と非難した。

近年、フランスでは文化施設を狙った窃盗が相次いでいる。昨年10月には、ルーブル美術館から王室の宝飾品8点が盗まれた。窃盗団はわずか8分間で1億200万ドル(現在の為替で約167億円)相当の展示品を奪い、現在も行方はわかっていない。同館は老朽化したセキュリティシステムの改修計画を前倒しし、2027年1月に着工する予定だという。また7月上旬には、アルザス地方ウィンゲン=シュル=モデールのラリック美術館から、約457万ドル(約7億4750万円)相当の宝石が盗まれた

シャティヨン地方博物館のウェブサイトによれば、「ヴィクスの宝物」は1953年、シャティヨン=シュル=セーヌの北約6キロにあるヴィクス村近郊、ラソワ山のふもとで発見された。発掘されたのは「ヴィクスの貴婦人」と呼ばれる人物の墓で、紀元前470〜460年ごろに埋葬されたと考えられている。

墓には多くの貴重な副葬品が納められていた。重さ約450グラムの金のトルクをはじめ、南イタリアのギリシャ植民都市シュバリスで制作され、メドゥーサが描かれたクラテールや、銀のフィアレなどが含まれる。博物館によると、権力の象徴とされるトルクはケルトの意匠を取り入れた弧状の装身具で、両端には中空の球体とライオンの足を組み合わせた装飾が施されている。それぞれのライオンの足の上にはペガサスが表されており、当時のこの地域に及んでいたギリシャ文化の影響がうかがえる。一方、太陽を象徴する洋ナシ形の2つの球体には、ケルト文化の影響が表れているという。

発見当初、トルクは「ヴィクスの貴婦人」の頭蓋骨の上にあったため、ディアデムと呼ばれる冠だと考えられていた。しかし、その後の研究で、貴族階級の人物がネックレスのように首に着けていたことが確認された。同館は、頭蓋骨の上に置かれていたのは、埋葬後まもなく墓が崩落したためとみている。さらに、この装身具の意義について次のように説明している。

「その図像や製造方法から、このトルクは異なる文化の融合と、地域を越えた技術の伝播を示しており、初期鉄器時代の終わりにヨーロッパで交易が活発に行われていたことを如実に示しています」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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