来館者が《ファン・ゴッホの椅子》オマージュ作品を誤って破壊し逃走。美術館側は「悪夢」と激怒

イタリア・ヴェローナ市にあるパラッツォ・マッフェイ美術館で、「写真撮影のため理性を失った」来館者が展示作品を誤って破壊し、逃走する事件が起きた。

来館者により破壊されたニコラ・ボッラの《ファン・ゴッホの椅子》(2006–07)。Photo: Palazzo Maffei

イタリア・ヴェローナ市にあるパラッツォ・マッフェイ美術館で今年4月、来館者が展示作品を破壊し逃走する事件が起こった。

被害に遭ったのは、イタリア人アーティストのニコラ・ボッラの《ファン・ゴッホの椅子》(2006–07)。ボッラはスワロフスキークリスタルを敷き詰めた作品の先駆者的存在で、フィンセント・ファン・ゴッホに敬意を表し、ゴッホが葦の椅子を描いた《ファン・ゴッホの椅子》(1888)を数百個のスワロフスキーを用いて立体作品として再現した。

同館が公開した映像によると、展示室を訪れた男女のうち、まず女性が作品に座るふりをして写真を撮影した。その後、男性も同じように座るふりをしようとしたが、よろめき椅子に座ってしまったことで作品を破壊。2人はそそくさとその場を後にした。同館は警察に通報したが、2人はまだ捕まっていない。

今回の出来事について、同館のディレクターであるヴァネッサ・カーロンは声明で、「写真を撮るために理性を失い、結果について考えないことがあります。もちろんこれは事故ですが、この2人は私たちに何も告げずに立ち去ったという点で、もう事故ではありません。これはどの美術館にとっても悪夢です」と述べた。

同じくマッフェイ美術館で働く美術史家のカルロッタ・メネガッツォはBBCの取材に対して、作品は頑丈に見えるかもしれないが、中空のはりぼてであると説明。「作品に触らないよう警告する注意書きが周囲に複数置かれていたので、それが本物の椅子ではないことは極めて明らかです」と語った。

ボッラの《ファン・ゴッホの椅子》はその後修復され、再び展示されている。カーロンは、「この事故が人々に、作品に一層の敬意を払った鑑賞を促すきっかけになることを願っています」と付け加えた。(翻訳:編集部)

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