第61回ヴェネチア・ビエンナーレで必見、日本の作家・キュレーターが参加する展示5選
「アート界のオリンピック」とも称される世界最大級の国際展、ヴェネチア・ビエンナーレで、日本にルーツを持つアーティストやキュレーターはどのような視点を提示するのか。本記事では、かれらが参加する注目の展示を5つ紹介する。

1. 嶋田美子、ブブ・ド・ラ・マドレーヌがメイン展示「In Minor Keys」に参加

© Yoshiko Shimada. © BuBu de la Madeleine. Courtesy of Ota Fine Arts.
今回のビエンナーレのメイン展示は、準備中に急逝した総合キュレーター、コヨ・クオが定めた「In Minor Keys」というテーマのもと、彼女の遺志を継ぎキュレーションされる。111人のアーティストが参加し、暴力や緊張が世界を覆う現在において、「マイナーキーに耳を傾け、あらゆる生の尊厳が守られるオアシスや島々を見出す」ことを目指す。
日本からは現代美術家の嶋田美子とブブ・ド・ラ・マドレーヌが招待された。両者はそれぞれ個人として参加するほか、ユニットとしても作品を発表する。2人は5月5日17時半からヴェネチア大学でトークを行うほか、5月6日15時からアルセナーレでパフォーマンス《斃れし同志と堕天使のための行列(Procession for the Fallen Comrades and Fallen Angels)》を実施予定だ。
会場:ヴェネチア・ビエンナーレ会場内(ジャルディーニ/アルセナーレ)ほか
2. 日本館代表アーティストは荒川ナッシュ医、展示タイトルは「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」

日本館の代表アーティストには荒川ナッシュ医が選出された。キュレーターは、香港のCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)館長兼チーフ・キュレーターの高橋瑞木と、シンガポール国立美術館シニア・キュレーター兼キュレトリアル&コレクション部門部長の堀川理沙が共同で務める。
展示タイトルは「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」。2024年に代理出産で双子を迎えた荒川ナッシュの育児経験をもとに、「赤ちゃんの声が聞こえる場所」をテーマとする体験型インスタレーションだ。会場の内外には、ミラーレンズのサングラスをかけ、色とりどりのベビー服を着た、14種類の肌の色を持つ赤ちゃん人形約200体が配置される。人形は生後3〜4カ月の乳児と同程度の重さ(約5kg)で、希望者は1階ピロティエリアで人形を預かり、抱えながら展示を巡ることができる。
会場:ヴェネチア・ビエンナーレ日本館(ジャルディーニ地区内)
3. シリア館キュレーターは長谷川祐子

数多くの国際展やビエンナーレを手がけてきた元金沢21世紀美術館館長の長谷川祐子が、シリア館キュレーターを務める。
長期にわたるシリア内戦(2011〜2024年)を経て再始動するシリア館は、これまで主流だったシリア人アーティストのグループ展と国際アーティストの招待展示を組み合わせた形式を見直し、ダマスカス出身のサラ・シャマによる個展形式で構成される。展示は「パルミラの塔墓」をテーマに、古代遺跡パルミラの歴史を手がかりに、記憶、喪失、そして文化の回復力という普遍的なテーマを探求する。
会場:ヴェネチア・ビエンナーレ、シリアパビリオン(ドルソドゥーロ地区、IUAV大学)
4. ジョージアパビリオンに造形作家の坂田英三が参加

ジョージアパビリオンは、「Modern Argonauts – Georgian Crossroads」というテーマのもと、様々な国と地域から集まった17人のアーティストによる展示を行う。その中には、愛知県出身、パリ在住の造形作家、坂田英三が含まれる。
近年、海水と墨を用いたドローイングを制作してきた坂田は、世界各地の海水を使って描いたドローイングを破り、その断片を再構成することで、ヴェネチアの島々の地図を想起させる作品を発表。また、ぶどうジュースを用いて参加者のキスの痕跡を集めるパフォーマンス《Kisses Without Borders》も行う。
会場:ヴェネチア・ビエンナーレ、ジョージアパビリオン(ドルソドゥーロ地区、パラッツォ・ケリーニ)
5. 「GO FOR KOGEI」の展覧会がヴェネチアへ

2020年から北陸で開催されてきた、工芸と現代美術の境界を横断する芸術祭「GO FOR KOGEI」が、ビエンナーレにあわせてヴェネチア市内で展覧会「身体と物質のエスノグラフィー──加速社会における遅さと深さ」を開催する。
キュレーターは、GO FOR KOGEIアーティスティック・ディレクターの秋元雄史。加速する現代社会において「つくること」が持ちうる時間性や身体的知覚を、あらためて問い直す試みとなる。本展では、陶、ガラス、漆、繊維、刺繍、木彫といった多様な素材を扱いながら、それぞれ異なる「遅さ」や「深さ」を作品に刻み込む10人が選出された。作家は、沖潤子、川井雄仁、桑田卓郎、コムロタカヒロ、シゲ・フジシロ、舘鼻則孝、中田真裕、三嶋りつ惠、牟田陽日、綿結。
会期:5月9日(土) ~11月22日(日)
会場:パラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナ(カンナレージョ地区6104)