今週末に見たいアートイベントTOP5:森万里子や名和晃平らが「未来からの視線」を表現、高橋恭司が撮ったアアルト建築と自然

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

SPECTRUM SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体(GYRE GALLERY)より、展示風景。

1. 高橋恭司 写真展「アアルトと自然」(スタジオ35分)

アアルト建築に宿る時間を写す

1960年東京生まれ、栃木県益子町出身の写真家、高橋恭司による写真展。展示されているのは2001年、建築雑誌『HOME』の依頼で制作されたシリーズだ。フィンランドを代表する建築家アルヴァー・アアルトの建築と、その周囲に広がる自然環境を大型カメラによって撮影したもので、映像やインスタレーションなど幅広い表現を展開してきた高橋にとって転換点に位置する重要な作品でもある。

本展で公開されるのは、作家自身が暗室で制作したヴィンテージ・プリントのみ。高橋はその後フィルムネガの大半を焼却しており、本シリーズは現在では再制作が不可能な作品群となっている。アアルト建築を単なる建築写真として捉えるのではなく、その土地に流れる時間や光、自然との関係性まで写し取る高橋の作品は、建築と自然、そして時間の層が静かに交差する。

高橋恭司 写真展「アアルトと自然」
会期:5月13日(水)〜6月20日(土)
場所:スタジオ35分(東京都中野区上高田5-47-8)
時間:16:00〜22:00
休館日:日~火


2. さいとう・たかを原画展 "劇画"で読者を射抜いた70年(しもだて美術館)

『鬼平犯科帳』
©さいとう・たかを/さいとう・プロダクション ©池波正太郎
『ゴルゴ13』
©さいとう・たかを/さいとう・プロダクション
『サバイバル』
©さいとう・たかを/さいとう・プロダクション

「劇画」を切り開いた巨匠の創作史

『ゴルゴ13』の作者として知られる漫画家・さいとう・たかを(1936-2021)の回顧展。1950年代の貸本漫画時代から活動を始めたさいとうは、従来のコミカルな漫画に対してドラマ性やリアリティを重視した「大人のための漫画」としての 「劇画」という新しい表現を切り開き、日本の漫画文化に大きな転換をもたらした。本展では500点を超える原画や資料を通して、その約70年にわたる創作の歩みを振り返る。

『無用ノ介』『サバイバル』『鬼平犯科帳』『ゴルゴ13』など代表作の原画が一堂に会するほか、制作資料や当時の貴重な記録も展示される。映画的なカメラワークやリアリズムを追求した演出は、現在の漫画や映像表現にも大きな影響を与えた。ひとりの人気作家の展覧会であると同時に、日本の戦後文化史を振り返る機会でもある。6月14日には、元小学館ビッグコミック編集長・佐藤敏章をゲストに迎えたギャラリートークも開催される。

さいとう・たかを原画展 "劇画"で読者を射抜いた70年
会期:4月25日(土)〜6月28日(日)
場所:しもだて美術館(茨城県筑西市丙372番地 アルテリオ3F)
時間:10:00〜18:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜


3. SPECTRUM SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体(GYRE GALLERY)

「50年後の未来」 をめぐる思考実験

2076年という架空の未来から現代社会を振り返る展覧会。展覧会タイトルの「SPECTRUM」は光のスペクトルを意味する。キュレーターを務める飯田高誉のもと、森万里子名和晃平草野絵美、池田謙、山田晋也、牧田愛、熊谷亜莉沙の7人が参加し、身体、記憶、テクノロジー、宇宙といったテーマに向き合う新作を発表する。

会場では、池田謙による身体感覚を攪乱する音響作品をはじめ、名和晃平による物質と波動の境界を探る表現、草野絵美によるAIを介した記憶やイメージの生成、森万里子による宇宙的なスケールを想起させる作品など、多様なアプローチが交差する。参加作家も国際的に活躍するベテランから新世代まで幅広く、それぞれが異なる方法で「未来からのまなざし」を提示する。

SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体
会期:5月22日(金)〜7月12日(日)
場所:GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
時間:11:00〜20:00
休館日:不定期(施設のスケジュールに基づく)


4. 大上巧真「rubbing-rhizome」(タカ・イシイギャラリー 前橋)

大上巧真 「rubbing-rhizome」 展示風景 タカ・イシイギャラリー 前橋 2026年5月23日 – 6月28日 Courtesy of Taka Ishii Gallery / 撮影: 木暮伸也
大上巧真 「rubbing-rhizome」 展示風景 タカ・イシイギャラリー 前橋 2026年5月23日 – 6月28日 Courtesy of Taka Ishii Gallery / 撮影: 木暮伸也
大上巧真 「rubbing-rhizome」 展示風景 タカ・イシイギャラリー 前橋 2026年5月23日 – 6月28日 Courtesy of Taka Ishii Gallery / 撮影: 木暮伸也
大上巧真 「rubbing-rhizome」 展示風景 タカ・イシイギャラリー 前橋 2026年5月23日 – 6月28日 Courtesy of Taka Ishii Gallery / 撮影: 木暮伸也

皮膚から増殖する、もうひとつの身体

2000年大阪府生まれ、茨城県を拠点に活動する大上巧真の個展。2025年に京都芸術大学大学院修士課程を修了した大上は、自身の身体、とりわけ皮膚感覚を起点に絵画と立体作品を制作してきた。東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「project N 102 大上巧真」と同時期に行われる本展では、新作ペインティング約9点と立体作品約3点を発表する。

赤を基調に、幾重にも重なる絵の具の層や鋭い線で構成される大上の作品は、身体の内と外を隔てながら外界と接触する「皮膚」が重要なテーマとなっている。また、温度や痛みを含む作品に残された身体の痕跡を、動物が匂いや分泌物によって縄張りを示すマーキング行為になぞらえ、「縄張り」や「威嚇」といった生態学的な視点へと展開している。しもやけの治療に使われる馬油から着想を得た立体作品は、油絵の具が滲み出すチューブ状のフォルムを通して、血管や植物の根茎を思わせる有機的な構造を生み出している。

大上巧真「rubbing-rhizome」
会期:5月23日(土)〜6月28日(日)
場所:タカ・イシイギャラリー 前橋(群馬県前橋市千代田町5-9-1 まえばしガレリア1F)
時間:11:00〜19:00
休館日:月火祝


5. 「はじめての古美術鑑賞 美術のなかの文字」(根津美術館)

鏡山図 紙本着色 日本・鎌倉時代 13~14世紀 根津美術館蔵
文字絵十一面観音像 大臨晋城筆 絹本墨画 日本・江戸時代 嘉永6年(1853)
根津美術館蔵 (福島静子氏寄贈)

「文字」がひらく、古美術の世界

東洋古美術への親しみを深めることを目的としたシリーズの第7弾。今回は、一般的に「読めない」「難しい」という印象を持たれがちな書作品から一歩離れ、絵画や工芸作品の中にあらわれる「文字」に着目する。画家の署名や印章である落款、所蔵の歴史を伝える鑑蔵印、絵画などに添えられた賛(賛美する歌)、工芸品に刻まれた銘文などを手がかりに、文字が作品の制作背景や意味、鑑賞にどのような奥行きを与えるのかを紹介する。

会場には、中国南宋時代に制作された重要文化財《竹雀図》、禅僧たちによる賛が加えられた室町時代の《江天遠意図》、経文によって仏の姿を描き出した《文字絵十一面観音像》などが並ぶ。また、景色の中に和歌を書き込む「歌絵」の伝統を伝える鎌倉時代の《鏡山図》は、同じ絵巻に由来するとされる《草花図》《紅梅図》《海浜図》とともに初めて同時公開される。文字を単なる情報としてではなく、美術表現の一部として捉え直すことで、東洋古美術を多層的に読み解く。

「はじめての古美術鑑賞 美術のなかの文字」
会期:5月30日(土)〜7月12日(日)
場所:根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)
時間:10:00〜17:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜

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