脇本夏子・玉田誠が語る「イサム・ノグチ庭園美術館」【建築家たちの推し美術館 Vol.3】

建築家が一押しのアートスペースを紹介する連載「建築家たちの推し美術館」。第3回に登場するのは、「玉田・脇本建築設計事務所」の脇本夏子と玉田誠。風景や気候、文化、人の関係性をつなぐ建築を目指すふたりが選んだのは、香川県高松市のイサム・ノグチ庭園美術館だ。

写真提供:公益財団法人イサム・ノグチ日本財団

わたしたちにとって特別な美術館は、高松市牟礼にある「イサム・ノグチ庭園美術館」です。20世紀を代表する彫刻家であるイサム・ノグチが制作パートナーの和泉正敏とともに晩年の制作拠点としたアトリエや住居が、150点以上の彫刻作品や彫刻庭園とともに残されています。

数万年の時を経て掘り起こされた石は、人間の手を介して彫刻となり、牟礼の風景とおおらかなランドスケープの中に現れます。古い民家を移築したアトリエと庭の内外を歩き巡ると、そんな太古から未来へと連なる時間の流れの中にそっと足を踏み入れるような、そしてまた、この気候風土や人間の営みと自分自身がつながりあう感覚に包まれるような感覚になりました。

その体験は視覚にとどまりません。瀬戸内海式気候の鮮やかな青空と、赤茶の岩山が強いコントラストをなす風景のもと、加工場から響きわたるカーンカーンと石を打つ音もまた、この土地に古くから続く人間の営みを伝えています。

情報に追われる現代の日々の中で、わたしたちもまた、過去から続く営みや環境の一部であることをこの場で身体的に知覚すること。それは、日々の暮らしにおける「本質的な豊かさ」とは何か、その価値観をあらためて問い直すきっかけになるのではないでしょうか。

建築家として私たちは、建築がそれ単体だけで完結して成立しているのでなく、風景や気候、文化、人と人との関係性、そうしたさまざまなものが相互に関係しあう場をつくりたいと考えています。ノグチのアトリエとその庭に置かれた彫刻、隣にある石の加工場の音や風景、そして牟礼の気候風土が一体となった同館は、さまざまな関係性からひとつの「場」が形づくられた素晴らしい例だと感じています。

脇本夏子(右)|1987年神奈川県生まれ。2009年日本女子大学住居学科卒業。2011年横浜国立大学大学院Y-GSA修了。2011年東 環境・建築研究所を経て、2019年玉田・脇本建築設計事務所共同設立。

玉田誠(左)|1986年広島県生まれ。2009年横浜国立大学工学部建築学コース卒業。2011年横浜国立大学大学院Y-GSA修了。2011年山本理顕設計工場を経て、2019年玉田・脇本建築設計事務所共同設立。

公式サイト:https://www.twk-architects.jp
インスタグラム:https://www.instagram.com/tamadawakimotoarchitects/

イサム・ノグチ庭園美術館
住所:香川県高松市牟礼町牟礼3519
開館時間:10:00、13:00、15:00(1日3回/完全予約制)
休館日:月曜日、水曜日、金曜日、日曜日(夏期・冬期休館あり)
公式サイト:https://www.isamunoguchi.or.jp/