構想20年超、「三田のサグラダ・ファミリア(蟻鱒鳶ル)」が再開発の波を乗り越えついに完成
建築家の岡啓輔が20年以上かけ手作業で築いたセルフビルド建築、通称「三田のサグラダ・ファミリア」がついに完成。再開発による曳家工事を経て3月に完了検査を通過したとして話題を呼んでいる。地下にはギャラリーも開設予定だ。

この春、「三田のサグラダ・ファミリア」がついに完成した。
「三田のサグラダ・ファミリア」とは、東京都港区三田の聖坂で、建築家の岡啓輔が2005年から自らの手で建設を続けてきたセルフビルド建築「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」のこと。2026年3月10日に建築基準法に基づく完了検査を通過し、20年余りにわたるプロジェクトが大きな区切りを迎えた。陸海空の生き物と近代建築の巨匠ル・コルビュジエの名に由来する同ビルは、地上4階、地下1階建て、高さ約12メートルの鉄筋コンクリート造。地下は美術品を展示するギャラリー、1階は貸店舗、2階以上は岡の自宅として活用される予定となっている。低水分のコンクリートを使用したことで専門家から200年もつと評価される堅牢性を備える一方、外壁は特異な突起や文様で覆われており、その唯一無二の姿と工期の長さから「三田のサグラダ・ファミリア」と称されてきた。

100人以上が参加した手作業の工事
建設の発端は、岡が30歳で建築士免許を取得した直後に妻から投げかけられた、自分たちの家を作ってほしいという言葉だった。2000年に約40平方メートルの土地を購入後、建築家の石山修武が開いたワークショップに参加したことでセルフビルドを考えるように。石山本人の後押しもあり2005年11月に着工した。
当初は3年程度での完成を想定していたが、スコップやツルハシを用いた手作業での地下掘削だけで1年半を費やした。その後も友人やSNSを通じて集まった100人以上の協力者とともに鉄筋組みやコンクリート打設を行い、2024年10月に建物としての形を成した。
しかし、周辺が大規模再開発の対象エリアとなったことで事態は一変する。交渉の結果、ビル本体の工事終了後に建物をそのまま移動させる曳家工法で東南方向へ移築することで決着した。2025年8月下旬から10月上旬にかけて、特別に設置されたレールに乗せ、東方向へ約9メートル、南方向へ約8メートル移動させる工事が実施され、同年12月に終了した。この移動により隣接するビルと接近したため、現在では装飾が施された南面の外壁を目にすることは難しくなっている。
着工から20年以上を経て、再開発の波を乗り越え完了検査を通過した蟻鱒鳶ル。岡のインスタグラムでは、今後見学会が開催されることも示唆されている。地下に開設されるギャラリーでのアート体験など、新たな展開に注目だ。