少年が松ぼっくりでマグリット名作に穴──鑑賞体験重視でガラスケースなし

イスラエルの博物館で、ルネ・マグリットの有名なシュルレアリスム絵画《ピレネーの城》に、子どもが松ぼっくりで穴を開けるアクシデントがあった。作品には特別な防護措置が取られていなかった。

ルネ・マグリット《ピレネーの城》(1959) Gali Tibbon/AFP via Getty Images

ベルギーのシュルレアリスト、ルネ・マグリットの絵画《ピレネーの城》(1959)を所蔵するエルサレムのイスラエル博物館が、同作品を展示室から修復部門に移した。博物館の職員がタイムズ・オブ・イスラエルに語ったところによると、家族連れで博物館を訪れていた少年が、松ぼっくりを絵に突き立てて穴を開けてしまったという。警備員の制止は間に合わなかった。

同博物館の保存修復責任者であるシャロン・ターガーは、現地メディアのハアレツ紙に対し、修復には数週間かかると答えている。

「当館は、ホロコーストの頃から保管されている作品を含め、劣悪な状態で運び込まれる絵画なや美術品の保存修復には豊富な経験があります。今回は穴が開いたことでカンバスにたるみができているので、まずはそこから修復します。カンバス地を元の位置に戻す調整を行い、その後、縫合して油絵の具の層を処理します」

イスラエル博物館では、来館者により良い鑑賞体験を提供するため、絵はガラスケースで保護されておらず、警報装置も取り付けられていなかった。ターガーはハアレツ紙にこう説明している。

「印象派など一部の作品はガラスケースに入れて展示していますが、そのガラスは非常に高品質で、ほとんど目立ちません。来館者は作品を間近で鑑賞することを望むので、当館は通常、警報装置の設置は避けています。それも美術館における体験の一部だからです。作品を保護する他の方法を模索していますが、どうしても限界があります」

1985年から同博物館に収蔵されている《ピレネーの城》は、荒れた海の上に浮かぶ巨大な岩に城がそびえ立ち、背景には白い雲の間から青空がのぞく様子が描かれている。この絵は、マグリットの親しい友人で弁護士のハリー・トルツィナーの依頼で制作された。2人は頻繁に手紙のやり取りをしていたという。

トルツィナーは、ニューヨークのオフィスの窓から見える景色が不快だったため、それを作品で隠そうと考えた。マグリットは絵の題材についての提案を求め、トルツィナーはマグリットが見せた何枚ものスケッチの中からこのモチーフを選んでいる。

博物館によると、トルツィナーの提案には空や海をモチーフにすることも含まれ、「暗い海、あるいは大洋の上に希望の岩が浮かび、その頂上に要塞か城が建っている」と記されている。しかし、マグリットは自身が目指していた「力強さ」と「厳しさ」を保つため、それ以外の提案は断った。トルツィナーは完成した作品の出来栄えに大喜びし、当時こう書いている。

「マグリット万歳! 《ピレネーの城》は威風堂々と、誇らしげに浮かんでいる。素晴らしい……欠けるところのない完璧さだ! 北海の波が、私に清々しい空気と喜びをもたらしてくれる。今のところ絵は壁に掛けてあるが、窓を覆う特注の額縁を取り付けている最中だ」

それから約20年の間、この絵は同じ場所に飾られていた。そして1985年、トルツィナーはこの絵画を「American Friends of the Israel Museum(アメリカにおけるイスラエル博物館友の会)」に寄贈している。(翻訳:石井佳子)

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