カニエ・ウェストが著名写真家の作品を無断使用? 最新アルバムジャケットにKKKの「結婚式写真」

カニエ・ウェストが最新アルバム『CUCK』のジャケット写真を公開した。その画像に使われた、KKKメンバーの「結婚式の写真」が無断使用だった可能性が浮上し、撮影者が法的措置を進めている。

カニエ・ウェストが無断で使用した、ピーター・ファン=アットマールの《The wedding of two members of the KKK in a rural America》。Photo: Peter van Agtmael/Magnum Photos
カニエ・ウェストが無断で使用した、ピーター・ファン=アットマールの《The wedding of two members of the KKK in a rural America》。Photo: Peter van Agtmael/Magnum Photos

イェことカニエ・ウェストが最新アルバム『Cuck』のジャケット写真を公開した。ジャケットに採用された写真には、赤と白のローブをまとったクー・クラックス・クラン(KKK)のメンバー2人が抱き合い、そのうちの1人は花束を手にしている様子が写っている。

《The wedding of two members of the KKK in a rural America》と題されたこの写真は、著名なフォトジャーナリストであるピーター・ファン=アットマールが撮影している。US版ARTnewsの取材に応じたファン=アットマールによれば、写真は無断で使用され、ウェストと彼の制作チームから使用許可を取る連絡はなかったという。ファン=アットマールは現在「法的手続きを進めている」と付け加えた。

ウェストの最新アルバムは当初、『WW3』というタイトルのもと4月3日にリリースされる予定だったが、リリース当日に発表されたのはこのジャケット写真だけだった。ウェストがInstagramに投稿した写真(現在は削除されている)は、ファン=アットマールが撮影したものとは若干異なっており、白装束をまとったKKKのメンバーがかぶっている覆面の目の部分が黒塗りされている。さらに、ファン=アットマールが撮影した写真には「White Power(白人至上主義者が用いるスローガン)」と刺繍された赤いマントをまとった犬が写っていたが、削除されていた。

ウェストはアルバム名の変更をX(旧Twitter)で発表しており、現在は削除された投稿において「CUCKは自分のスタイルそのもの」と記したうえで、次のように続けている

「CUCKは私が作っている音楽やファッションスタイル、そして世間に対する態度を象徴している。好きなものはセックスとドラッグ、ロックンロール、金、政治、同性愛嫌悪、セクシャルハラスメント、そして人種差別。外を歩けば誰かが私のことを訴えてくる。私は聖書よりもポルノ雑誌を読む方が好きだ」

この投稿に対してファンたちは、「何かがカニエを壊したんだ。彼のことを非難するのではなく、原因を突き止めなければならない」といったウェストの精神状態を心配するコメントや、「あんたはもう終わりだ。恥ずかしいよ」といった非難する声が上がっていた。

US版ARTnewsはウェストにコメントを求めたが、返答はなかった。

ファン=アットマールはノルウェーの雑誌「A-Magazine」の記事のために、2015年にテネシー州でこの写真を撮影した。同誌はファン=アットマールが撮影した写真とウェストのジャケットを比較する記事を掲載している

マグナム・フォトに所属するファン=アットマールは、KKKのような物議を醸す被写体を撮影する際、メンバーをできるだけ自然な状態で記録するための方針を決めていたと話す。ジャーナリストのベガス・テノルドと共に、彼らは自分たちの目的を説明し、撮影を希望しない人には拒否権があることを伝えた。一部は撮影を断ったが、撮影に応じた人々に対しては、カメラの前でもできるだけ普段通りに振る舞うよう指示したという。

「とはいってもカメラを向けられると被写体は、よく見せようと演じてしまうので、自然な姿を収めるのは不可能と言っていいでしょう。しかし、ことあるごとに自然に振る舞うよう促すことで、ぎこちなさを軽減できると思います」と、ファン=アットマールはマグナム・フォトに掲載された後日談で語っており、結局のところ、ぎこちなさが残った写真にもよさはあると語っている。こうした写真には、被写体が抱く自己イメージが表れており、社会からの評価と同等か、それ以上に多くを物語っているのだ。(翻訳:編集部)

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