今週末に見たいアートイベントTOP5: ルノワールとセザンヌの知られざる関係、プシュパマラ Nがユーモアで切り込むインドのいま

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

©CHANEL
Dressing Up: Pushpamala N(シャネル・ネクサス・ホール)より展示風景。©CHANEL

1. 開館5周年記念展「ニュー・ユートピア──わたしたちがつくる新しい生態系」(弘前れんが倉庫美術館)

渡辺志桜里《サンルーム[不在の部屋]》2017年〜継続中、《BLUE-外来生物法-》2024年 展示風景  Photo: Keizo Kioku
川内理香子《CACTUS》2025年 展示風景 Photo: Keizo Kioku
佐藤朋子《ひろさき縦覧場》2025年 弘前れんが倉庫美術館蔵 展示風景 Photo: Keizo Kioku
SIDE CORE《rode work ver. under city》2023-2025年 展示風景 Photo: Keizo Kioku

未来を担う作家たちの表現から考える「新しい生態系」

未来を担う若いアーティストたちの作品と、1万5000年をさかのぼるともいわれる津軽地方の人間の営みに連なる作品を織り交ぜながら、今を生きる私たちが作り出す新しい生態系について考える展覧会。その第2期となる本展は、川内理⾹⼦⼩林エリカ、ユーイチロー・E・タムラ、渡辺志桜⾥SIDE CORE、⼯藤⿇紀⼦、奈良美智、佐藤朋⼦、さとうりさ、ナウィン・ラワンチャイクン、ジャン=ミシェル・オトニエル、藤井光、⼤巻伸嗣、斎藤麗、 永野雅⼦、細川葉⼦、畠⼭直哉、和⽥礼治郎、松⼭智⼀らが参加する。

自らがコントロールできないものへの意識から、身体に取り込まれる食べものや、他者と自分自身の関係性を示すようなイメージを作品に取り入れる川内理香子は、2024年から新たに取り組む刺繍作品の大型新作を発表。渡辺志桜里は、植物、魚、バクテリアなどを生育する水槽を繋ぎ合わせ、水を循環させることで生態系を可視化させる代表作《サンルーム》の新作を、この土地の生物たちに焦点をあてて制作した。佐藤朋⼦は、かつて弘前に設置された旧陸軍第八師団の痕跡や、岩木山の安寿の伝説などのリサーチを弘前の街中や近郊の地域で重ね、「語り」を取り入れたレクチャー形式の新作を発表する。

開館5周年記念展「ニュー・ユートピア──わたしたちがつくる新しい生態系」
会期:第2期 7月11日(金)~11月16日(日)
場所:弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市吉野町2-1)
時間:9:00~17:00(入場は30分前まで)
休館日:火曜日(8月5日、9月23日は除く)


2. オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠(三菱一号館美術館)

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピエロ姿のクロード・ルノワール》
1909年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF
ポール・セザンヌ《セザンヌ夫人の肖像》
1885-1895年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノの前の少女たち》
1892年頃、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
@ GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie)/ Franck Raux / distributed by AMF
ポール・セザンヌ《画家の息子の肖像》
1880年頃、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn(musée de l'Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF

ルノワールとセザンヌの知られざる関係と創作に焦点

職人の息子として生まれ、明るく社交的な性格だったピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)と、銀行家の家庭に生まれ、人付き合いをあまり好まなかったといわれるポール・セザンヌ(1839-1906)。この2人の印象派・ポスト印象派の巨匠が、南仏・プロヴァンスの地で家族ぐるみの親交を持ち、共に作品制作したことはあまり知られていない。本展では2人にスポットを当て、その関係性と卓越した芸術表現を余すところなく紹介する。

フランス・パリのオランジュリー美術館オルセー美術館から、ルノワールの代表作《ピアノの前の少女たち》やセザンヌの代表作《画家の息子の肖像》をはじめ、2人が手掛けた肖像画、静物画、風景画、そして彼らから影響を受けたピカソによる作品を加えた52点を展示。モダン・アートの原点を探る。

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠
会期:5月29日(木)~9月7日(日)
場所:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2丁目6-2)
時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜と第2水曜、8月の土曜、9月1日~9月7日は20:00まで)
休館日:月曜(祝日と7月28日、8月25日、9月1日を除く)


3. 松田将英『「Great Reset」―ポスト太陽フレア時代における再起動プロトコル―』(マイナビアートスクエア)

photo:Naoki Takehisa
photo:Naoki Takehisa

携帯が無い世界をどう生きるのか

テクノロジーと生命の関係性を軽やかに読み解き、詩的かつコンセプチュアルな介入によってポストデジタル社会における新しい表現領域を開拓する松田将英による新作展。本展では、コロナ禍における「ソーシャルディスタンス」のように、太陽フレアによってあらゆる電子機器のシグナルが途絶えた世界線「フレア禍」から生まれた「オフラインモード」という新たな社会の形態を通して、ウェルビーイングの可能性に光をあてる。

展覧会タイトル「Great Reset」は、2020年にWEFが打ち出した、現在の社会全体を構成する金融や社会経済などのさまざまなシステムを、一度全てリセットするという構想に由来する。だがGreat Resetは次第に陰謀論を含む多様な解釈をまとい、複雑に入り組んだ話へと変容していった。本展で展示されるインスタレーションは、このような重層的な意味の広がりに着目し、批評とユーモアを交えてアートとして提示することで、鑑賞者の知覚や想像力に働きかける。

松田将英『「Great Reset」―ポスト太陽フレア時代における再起動プロトコル―』
会期:6月11日(水)~8月9日(土)
場所:マイナビアートスクエア(東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー22F)
時間:11:00~18:00
休館日:日月祝


4. 寺岡海:この空の下で(京都市京セラ美術館)

photo: Teraoka Kai
photo: Teraoka Kai
photo: Teraoka Kai
photo: Teraoka Kai

「風景」の別の眺め方を探る

1987年広島県生まれ、現在は京都市在住の寺岡海による個展。寺岡は写真や映像、音響装置やドローイングなどを用いた作品を制作してきた。雲の表裏を2つの地点から同時に撮影した写真作品《A Cloud》や、自宅に置いた観葉植物をリアルタイムで中継する映像作品《自宅の花を中継する》のように、日常的な風景の中にあることがなかったり、内側で見ることができなかったりするものを捉える寺岡の作品は、見慣れた風景に別の見方があるという想像力を私たちに与えてくれる。

本展では、寺岡がこれまで度々取り上げてきた空をモチーフとする新作を発表する。これらの作品に触れるとき、私たちの⾵景の⾒⽅はどう変わるのだろうか。

寺岡海:この空の下で
会期:6月17日(火)~8月24日(日)
場所:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
時間:10:00~18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)


5. Dressing Up: Pushpamala N(シャネル・ネクサス・ホール)

©CHANEL
©CHANEL
©CHANEL
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フォト・パフォーマンスで伝える「インドの現在」

プシュパマラ Nは1956年生まれ、インドのバンガロールを拠点に活動するアーティスト。彫刻家として開始した創作活動は、写真や映画へと移行し、1990年代半ばからは自らがさまざまな役柄に扮して示唆に富んだ物語を作り上げるフォト・パフォーマンスやステージド・フォトへと発展。現在はインド現代美術界で最もエンターテイニングなアーティストと評されている。

本展では、3つの作品シリーズ「Phantom Lady or Kismet」、「Return of the Phantom Lady」、「The Navarasa Suite」を展示する。25枚のモノクロ写真で構成された「Phantom Lady or Kismet」は、1930~40年代に流行したフィルム・ノワールの描写をパロディ化した作品。仮面をつけ、怪傑ゾロにインスパイアされたファントム・レディは、行方不明になった双子の妹ヴァンプをムンバイの暗黒街から救い出そうとする。仮面のヒロインと双子の妹の双方に扮し、インドの日常風景の中で撮影を敢行することで、プシュパマラは視覚文化、フェミニズム、表象、そしてインドの歴史といった重要なテーマを見る者に考えさせる。

Dressing Up: Pushpamala N
会期:6月27日(金)~ 8月17日(日)
場所:シャネル・ネクサス・ホール(中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
時間:11:00~19:00(17日は17:00まで、入場は30分前まで)
休館日:なし

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