エド・シーランがロンドンで初個展。「ポロック風」作品に著名批評家は「軽薄で無意味」と酷評
イギリスのシンガーソングライター、エド・シーランが7月11日からロンドンのヘニ・ギャラリーで個展を開催する(8月1日まで)。だが一部では、彼の作品がジャクソン・ポロック(1912-1956)が開発したドリップ・ペインティングに酷似しているという声も。

4度ものグラミー賞受賞歴を誇るミュージシャンのエド・シーランが、7月11日からロンドンのヘニ・ギャラリーで個展を開催する(8月1日まで)。
展覧会では作品のプリントを1枚900ポンド(約17万円)で販売する予定で、総売り上げの50パーセントは、シーランが設立した音楽教育を支援する財団を通してイギリス全土の学校に寄付されるという。彼はこれまでも、イギリスの音楽教育事業における構造的な資金不足を訴え、様々な支援活動を行ってきた。
アートの仕事に従事する両親の影響もあり、長年作品の制作活動を行ってきたシーランだが、本格的に取り組むようになったのはここ10年のこと。その創作について彼はガーディアン紙に、「昨年はツアーの合間、イギリスでの空き時間の多くを絵画制作に費やしました。毎朝ソーホーの使われていない駐車場に走って行き、絵を描いて、家に走って帰る。再びツアーに出発するまで毎日それを繰り返していました」と語っている。
シーランがこの駐車場での制作活動を「良い友人」であるダミアン・ハーストとアートサービス会社ヘニの創設者ジョー・ヘイジに話したところ、二人のアドバイスにより、ヘニのギャラリーでの展覧会開催に至ったという。
今回の個展で展示されるのは、シーランが「コズミック・カーパーク・ペインティングス」と名付けたシリーズで、キャンバスを床に置き、色とりどりの家庭用ペンキを刷毛などから滴らせて制作している。この技法はジャクソン・ポロックが開発したドリップ・ペインティングそのものだ。
ガーディアン紙の記事には、作業着を着たシーランがキャンバスに赤い絵の具を投げかけている写真が掲載されているが、これはかつて写真家ハンス・ナムスがポロックの制作風景を撮影した有名な写真を想起させる。
だが、ポロックのドリップ・ペインティングが実験的なもので、偶然性や身体性、無意識の動きが作品に反映されることを目的としたのに対して、シーランの作品はそれほど理論的ではないようだ。ヘニ・ギャラリーの発表によると、シーランの絵画は「天体のパターンからインスピレーションを得ており」、これらの新作は「シーランのよく知られた表現主義的スプラッシュ・ペインティング・スタイルに合致している」とされている。さらに注目すべきことに、発表ではポロックへの言及はない。
おそらくポロックの作品を論じた最も偉大な批評家であるクレメント・グリーンバーグが生きていたとしても、シーランの絵画について多くを語ることはないだろうが、すでに少なくとも1人の著名な批評家、ジョナサン・ジョーンズはガーディアン紙でシーランの絵画を酷評している。
「シーランの芸術は巧妙な詐欺だ。軽薄で無意味な抽象的な作品を描くことで、彼は適切な検証を避け、自分自身を危険にさらすことなく芸術に足を踏み入れている。アマチュアでありながら、なんというプロ意識だろう」(翻訳:編集部)
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