日本の大学ミュージアムに行ってみよう! 若手アーティストから国宝コレクションまで楽しめる施設10選

国内の大学の中には、美術大学以外でも独自の美術館を運営し、コレクションの収集や研究をしている機関が多くある。展示には各大学の専門性が反映された個性豊かな内容のものも多く、その多くは学生や教職員だけでなく、一般の鑑賞者に向けても解放されている。大学美術館の中から厳選した10の美術館を紹介する。

東京藝術大学大学美術館本館
東京藝術大学大学美術館本館外観

大学に付属された美術館・博物館は、教育現場と直結した実践的な研究の場として、美術作品だけでなく美術資料や映画、デザインなど学術的価値の高い作品が幅広く収蔵されている。また、学生や卒業生が制作した作品も積極的に収蔵・展示しているため、若手アーティスト発掘の場としての役割もある。

欧米においては、大学美術館は美術を学ぶ学生だけでなく学際的な教育リソースとして活用されているほか、地元の学校やコミュニティに対する美術教育の普及を担う場所として一般に開かれた存在となっている。しかし日本において、学外の人には大学美術館を訪れる機会はあまり多くないかもしれない。そこで今回は、日本国内にある大学のミュージアムの中から厳選して、様々な企画展やワークショップを楽しむことができる10の施設を紹介する。

1. 東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館本館外観
本館エントランス
展示風景(藝大コレクション展2020より)
本館螺旋階段

国宝、重要文化財を含む約3万点のコレクションを所蔵し、そこには、高橋由一の《鮭》や狩野芳崖の《悲母観音》、上村松園の《序の舞》なども含まれる。本館は地下2階と地上3階に分かれており、年1・2回のコレクション展のほか、仏教美術の歴史を辿る「興福寺仏頭展」や吉原遊廓をテーマにした「大吉原展」など様々なテーマの企画展にも力を入れている。冬期には学生による博士審査展や、卒業・修了作品展を開催。館内にはカフェテリアや画材店も併設しており、学生以外も利用することができる。

東京藝術大学大学美術館
場所:東京都台東区上野公園12-8
時間: 10:00~17:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)入学試験期間、年末年始、展示準備期間

2. 東京造形大学附属美術館(横山記念マンズー美術館)

美術館外観
美術館館内 Photo: 山上洋平
CSギャラリー。オープンキャンパスで学生の作品を展示
美術館館内 Photo: 山上洋平

附属美術館と2つのギャラリーの3館で構成されており、現代具象派を代表するイタリアの彫刻家ジャコモ・マンズーの作品41点を中心に、写真家の高梨豊、絵本作家の小野かおるなど、東京造形大学の教員の作品を多くコレクションしている。企画展では、コレクション展のほか、創立者でデザイナーの桑澤洋子展など、美術・デザインの魅力を幅広く紹介する様々な展示を開催している。

東京造形大学附属美術館(横山記念マンズー美術館)
場所:東京都八王子市宇津貫町1556
時間:10:00〜16:30(入館は30分前まで) 
休館日:日曜祝日、大学の休業期間

3. 早稲田大学會津八一記念博物館

早稲田大学會津八一記念博物館の外観
横山大観と下村観山の合作「明暗」が飾られた大階段
展示室内の様子

歌人・美術史家・書家として活躍し、早稲田大学で東洋美術史を講じた會津八一を記念してつくられた博物館は、現在、約5万点を所蔵。會津八一の蒐集品を核とした東洋美術、旧富岡美術館の900余点の美術作品をはじめ、考古・民族資料、近世・近現代美術といった多岐にわたるコレクションを所有している。過去の企画展としては「SATSUMAとIMARI」展、「龍角寺」展などが開催され、各コレクションを紹介する特集展示も年に5、6回開催されている。

早稲田大学會津八一記念博物館
場所:東京都新宿区西早稲田1-6-1
時間:10:00 〜 17:00
休館日:原則水曜、展覧会によって異なる

4. 日本大学芸術学部 芸術資料館

展示室の様子
芸術資料館入口
展示室の様子

1949年に芸術学部が創設されて以来、収集してきた資料の保管、展示、調査・研究が行われている。収蔵されている資料は、写真、映画、演劇、美術・デザインなど、さまざまな芸術分野に関わるもの。特に歴史的作品及び機材を豊富に揃える。企画展は、芸術分野の学生の作品展を中心に、年に約10回ほど開催されている。

日本大学芸術学部 芸術資料館
場所:東京都練馬区旭丘2-42-1
時間:月曜〜金曜 9:30~16:30、土曜 9:30~12:00
休館日:日曜、祝日、大学の休業期間(展示期間のみ開館)

5. 慶應義塾ミュージアム・コモンズ

慶應義塾ミュージアム・コモンズの外観 Photo: 村松桂(株式会社カロワークス)
館内展示室の様子 Photo: 村松桂(株式会社カロワークス)
館内展示室の様子 Photo: 村松桂(株式会社カロワークス)

慶應義塾大学が蒐集してきた多様な領域に渡る文化財コレクションと、その背後にある教育・研究活動をつなぐ「ハブ」となるミュージアム。展覧会を開催するほか、文化財を基軸とするワークショップや講義など、発展的な活動を行っている。コレクションの中核をなすのはセンチュリー文化財団から寄贈された「センチュリー赤尾コレクション」で、文字文化を主題とし、書跡、絵画、漆工、金工、彫刻などを含む。2階の「オープン・デポ」はガラス張りの部屋で、作品貸出の点検作業や調査作業、展覧会準備など学芸員の日常業務を見ることができる。

慶應義塾ミュージアム・コモンズ
場所:東京都港区三田 2-15-45
時間:展覧会によって異なる
休館日:土日祝、大学の休業期間

6. 慶應義塾大学アート・センター

建物外観 ©︎慶應義塾大学アート・センター Photo: 村松桂(株式会社カロワークス)
展示室内の様子 ©︎慶應義塾大学アート・センター Photo: 村松桂(株式会社カロワークス)
展示室内の様子 ©︎慶應義塾大学アート・センター Photo: 村松桂(株式会社カロワークス)

慶應義塾大学に附属する研究センターで、芸術活動の理論研究と実践活動を幅広く展開。新しい時代にふさわしい文化的・芸術的感性と表現活動の可能性を追究し、講演、領域横断的なシンポジウム、詩人と異分野アーティストとの共演、インスタレーションを含む展示などを開催。学外からも参加できるイベントが多く開催されている。

慶應義塾大学アート・センター
場所:東京都港区三田2-15-45
時間:展覧会によって異なる
休館日:展覧会によって異なる

7. 女子美術大学 女子美アートミュージアム

ミュージアム入口
窓に面したロビー
過去展覧会風景

大久保婦久子、片岡球子、郷倉和子、多田美波、三岸節子など、女子美術大学出身者やゆかりのある作家を中心に作品を収集。収蔵作品は教育研究資源としての美術品や工芸品、歴史資料など、時代や文化を超えた幅広い分野の作品で約1万6000点に及ぶ。年間6回程度の企画展をはじめ、講演会やギャラリートークなどの教育普及活動も行っている。毎年開催されている「女子美染織コレクション展」では、子どもから大人までもが楽しめるワークショップが行われている。

女子美術大学 女子美アートミュージアム
場所:神奈川県相模原市南区麻溝台1900
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:日曜、祝日、展示替期間および大学の一斉休業日

8. 武蔵野美術大学 美術館・図書館

武蔵野美術大学 美術館外観
館内の様子
館内の様子

大小5つの展示室、椅子ギャラリー、美術館ホールがあり、年間10数本の展覧会を開催。「縄文の美術」や「ART-BOOK」などさまざまなテーマの展示を楽しむことができる。約3万点におよぶポスターと約400点の近代椅子など、収蔵品は4万点を超え、デザイン研究の貴重な基礎資料として社会的にも大きな意義を持つコレクションとなっている。その他の収蔵作品は、生活用品、玩具などのプロダクトデザインや版画ややきもの、歴代の教員の作品を中心とした絵画や彫刻、そして大辻清司フォトアーカイブなど。

武蔵野美術大学 美術館・図書館
場所:東京都小平市小川町1-736
時間:月曜〜金曜 11:00〜19:00、土・日・祝日 10:00〜17:00
休館日:水曜、展示準備期間、大学の休業期間

9. 実践女子大学 香雪記念資料館

実践女子大学 香雪記念資料館の外観
下田歌子記念室
企画展示室

主に江戸時代から昭和時代にかけて活躍した女性画家の作品の収集、調査、研究を行い、世の中にあまり知られていない女性画家を紹介している。例えば、江戸時代では、清原雪信、徳山(池)玉蘭、張(梁川)紅蘭。幕末・明治に活躍した野口小蘋、奥原晴湖、明治・大正期では池田蕉園、島成園。昭和期では朝倉摂など、幅広い年代の作品を収蔵し、約300点で国内有数のコレクションとなっている。

実践女子大学 香雪記念資料館
場所:東京都渋谷区東1-1-49
時間:11:00~17:00
休館日:土日祝、大学の休業期間

10. 京都芸術大学 芸術館

芸術館の展示スペース Photo: 衣笠名津美
浮世絵 豊原国周・画 樓門五山桐 石川五右衛門市川團十郎
郷土人形 布袋

4つのコレクションを軸に展示・保存・教育普及を行う。所蔵作品は、縄文時代の土器、装身具、土偶などのコレクション257点、シルクロード沿道の工芸品90点、浮世絵師・豊原国周の作品923点、伏見人形をはじめとする全国の土人形579点。コレクション展の他、新作作品と所蔵品のコラボ企画や、授業の一環として学生が行う展覧会なども開催している。

京都芸術大学 芸術館
場所:京都市左京区北白川瓜生山2-116
時間:10:00-17:00(入館は20分前まで)
休館日:展覧会期外、展覧会期中の日曜・祝日・大学の休業期間・大学の入試期

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