世界の七不思議「アレクサンドリアの大灯台」海底から巨大石材──歴史の空白を埋める手がかりに
フランス国立科学研究センターの調査チームが、世界七不思議の1つ、アレクサンドリアの大灯台の海底遺構から22個の巨大な石材を引き上げた。アレクサンドリア港の底からは、約30年前に初めて、遺跡と断定できる柱や彫像が発見されている。

6月25日付のプレスリリースで、フランスのダッソー・システムズ財団は、アレクサンドリアの大灯台に使われていた巨大な石材22個が引き揚げられたと発表した。同財団は過去3年間、大灯台の調査プロジェクトを支援している。
引き揚げられた石材には、巨大な門の上部に渡されていたと見られるまぐさ石、重さ70〜80トンの脇柱、敷居や床石のほか、ヘレニズム時代に作られたエジプト風の扉を持つ塔門の一部と思われるものが含まれていた。今後それぞれの石は、詳しい分析のうえでスキャンが行われ、デジタル画像が作成される。これまでの10年間で100以上の石材がデジタルイメージ化されており、今回新たに加ったものも含めて大灯台のバーチャルモデルが構築されていく。
世界七不思議の1つ、アレクサンドリアの大灯台は、紀元前3世紀に古代エジプト・プトレマイオス朝の初代ファラオ、プトレマイオス1世によって建設が始められた。高さは134メートルで、8世紀と14世紀に起きた3回の地震で完全に倒壊するまで1700年もの間、世界で最も高い建造物の1つとして威容を誇っていた。
遺跡調査は、フランス国立科学研究センターの考古学研究者で建築家のイザベル・エーリーが監督し、エジプト観光・考古省の管轄下で実施されている。また、この研究プロジェクトには、考古学者のほか歴史学者や貨幣学者も参加し、「紀元前4世紀末から紀元15世紀初頭までの時期に、大灯台に関してどのような描写や記述があるか」を調査、収集している。ダッソー・システムズ財団のプレスリリースでは、その意義が次のように説明されている。
「この研究は、考古学的遺構が崩壊してバラバラになったことで生じた歴史の空白を埋めるのに役立ちます。大灯台は14世紀初めに使われなくなった後、1477年にカイトベイ要塞が建設されるまで建築資材に用いられていたのです」
巨大な石材の引き揚げには、フランスのドキュメンタリー制作会社、ギデオンプログラム(GEDEON Programmes)が協力し、はしけとクレーンを調達する資金を提供。撮影した発掘調査と石材の回収の様子は、90分のドキュメンタリーとしてフランスのテレビで放映される。
ギデオンプログラムは、アレクサンドリア研究センター(Centre d'études Alexandrines)のフランス人考古学者、ジャン=イヴ・アンペルールが1994年に大灯台の水中遺跡を発見したときも資金援助を行っている。その調査活動を追ったドキュメンタリー「The Lighthouse of Alexandria: Seventh Wonder of the World(アレクサンドリアの大灯台:世界七不思議)」は、数々の賞を受賞するなど高く評価された。(翻訳:石井佳子)
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