4世紀の遺跡から「ビーチサンダル」モザイク画を発見。後期ローマ時代の装飾トレンドを象徴
シチリア中南部にある古代ローマの別荘の遺跡で「ビーチサンダル」そっくりのモザイク画が発掘された。この遺跡は過去にも「ビキニを着た女性たち」のモザイク画が見つかっており、考古学ファンの関心を集めている。

イタリア・シチリア中南部にある4世紀の遺跡、カサーレ荘園のローマ別荘遺跡で行われた発掘調査で、ビーチサンダルのような履物のモザイク画が見つかった。
調査は、最新の考古学調査を学ぶボローニャ大学のサマースクールに参加する、11カ国・40人の学生たちによって行われていた。彼らが別荘南側浴場にあったプールのような水風呂の施設、フリギダリウムのモザイク舗装を調べていたところ、ビーチサンダルそっくりの黒い鼻緒を持つ履物のモザイク画が現れた。その付近には、浴場の管理に関わった女性を指すと考えられる「Treptona bibas」という碑文も見つかっている。
このビーチサンダルのような履物のモチーフは、後期ローマ時代の浴場装飾のトレンドで、これまでスペイン、キレナイカ、キプロス、ヨルダン、小アジア全域の遺跡で確認されている。プログラムディレクターのイザベラ・バルディーニは、「このモチーフは別荘の社会・文化生活を反映しており、建物を貴族的で国際的な文脈に位置付ける役割を果たしています」と語っている。
実際に、ローマ人がビーチサンダルそっくりのものを履いていたのかについては定かではないが、サンダルは古代ローマにおいてポピュラーなものだった。市民は革製で軽量な「ソレア」、軍人は覆う部分が多く、より足に固定できる形状の「カリガ」を履いていた。現代で一般的にビーチサンダルと言われているものは、日本の草履をヒントにブラジルで生み出されたゴム製のものだ。

実は、この遺跡での現代の文化と繋がる奇妙な発見は、初めてではない。かつてここからは「ビキニを着た女性たち」のモザイク画が見つかっているのだ。10人の女性たちがボールのようなものを投げ合っており、一見すると現代のビーチの光景さながら。だが調査によると、これは競技大会の風景で、よく見ると選手である彼女たちは円盤投げの準備をしたり、ダンベルを持ち上げたりしている。
そのほか、この別荘からはキューピッドがブドウを収穫する場面や、ゾウやトラなどの動物たちが捕獲され海外へ輸送される様子を描いたモザイク画も見つかっている。これらのことから、別荘の持ち主は北アフリカとの交易を担った高位の官僚で、競技大会を主催していたことが考えられる。
カサーレ荘園のローマ別荘遺跡は、1950年代に行われたジーノ・ヴィニチオ・ジェンティリの本格的な発掘調査によって初めて注目された。中世に起こった地滑りにより何百年も土に守られ続けた同遺跡からは、非常に状態の良い大量のモザイク画が見つかっており、「最も豊かで大規模かつ多様なコレクション」とも評される。そして1997年にはユネスコ世界遺産に指定された。だが、その名声にかかわらず同遺跡は資金不足から放置され続けており、イタリアの文化財保護団体は遺跡の劣化について警鐘を鳴らしている。(翻訳:編集部)
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