岡田美術館の所蔵品125点、総額約137億円で落札! 北斎・歌麿は日本人コレクターが競り勝つ

神奈川県・箱根の岡田美術館創設者である岡田和生のコレクション125点が11月22日、サザビーズ香港で開催したオークションに出品され、全ロット落札となるホワイトグローブを達成。総額8800万ドル(約137億円8000万円)で売却された。

喜多川歌麿《深川の雪》(1802–06)Photo: Courtesy of Sothebys

神奈川県・箱根の私設美術館、岡田美術館の創設者・岡田和生が所蔵してきた125点のコレクションが、11月22日にサザビーズ香港で開催されたオークションMasterpieces of Asian Art from the Okada Museum of Art(岡田美術館所蔵 アジア美術の名品)」に出品され、全ロット落札となるホワイトグローブを達成。販売総額の事前予想は5000万ドル超(約78億3200万円)だったが、8800万ドル(約137億8000万円)に到達した。

サザビーズ・アジア会長兼アジア美術部門グローバル責任者のニコラス・チョウは、開催前にUS版ARTnewsの取材に対し「ここ数年で最も重要な東アジア美術コレクションのオークションになる」と語っていたが、その言葉通りの熱気が会場を包んだ。

今回のセールで最も注目を集めたのは、喜多川歌麿の肉筆掛軸《深川の雪》(1802–06)だ。アメリカ・フリーア美術館所蔵の《品川の月》(1788)、ワズワース・アセーニアム美術館所蔵の《吉原の花》(1791–92)を含む「雪月花」三部作の一つで、江戸・深川の料理茶屋の座敷で雪景色を眺める芸者や女性たち、幼児を含む総勢27人を描いた大作だ。入札は30件以上に及び、日本の個人コレクターが710万ドル(約11億1200万円)で落札。この日の最高額を記録した。

一方、セール前から注目を浴びていた葛飾北斎《神奈川沖浪裏》(1830–32)は、代表シリーズ「富嶽三十六景」の中でも最も知られた図柄で、大英博物館メトロポリタン美術館など世界の主要館が所蔵する名品。今回の競売では約8分にわたり20件以上の入札が続き、予想落札価格の3倍となる280万ドル(約4億3900万円)で、日本の個人コレクターが競り勝った。喜多川歌麿と葛飾北斎は、それぞれオークション最高額を更新する結果となった。

喜多川歌麿の肉筆掛軸《深川の雪》(1802–06)落札価格:約11億1200万円。Photo: Courtesy of Sothebys
殷代末期の有力氏族が所有した青銅器「亞乙方罍」落札価格:約7億6800万円。Photo: Courtesy of Sothebys
乾隆期の斗彩金彩「八吉祥文天球瓶」落札価格:約6億7000万円。Photo: Courtesy of Sothebys
雍正帝期の「青磁釉蓮弁口瓶」落札価格:約6億1000万円。Photo: Courtesy of Sothebys
唐代、8世紀の三彩釉鷹形水瓶 落札価格:約4億6000万円。Photo: Courtesy of Sothebys
青白磁の宮廷用鉢 落札価格:約4億5000万円。Photo: Courtesy of Sothebys
葛飾北斎《神奈川沖浪裏》(1830-32)落札価格:約4億3900万円。Photo: Courtesy of Sothebys
葛飾北斎《夏の朝》(江戸時代後期)落札価格:約4億1200万円。Photo: Courtesy of Sothebys
明代、永楽時代青白磁「葡萄文皿」落札価格:約3億7000万円。Photo: Courtesy of Sothebys
隋~唐初期、透明釉の「鸚鵡」杯 落札価格:約3億6500万円。Photo: Courtesy of Sothebys

また、全125点のうち19点が120万ドル(約1億8800万円)超を記録した。その中には、殷代末期の有力氏族が所有した青銅器「亞乙方罍」(490万ドル・約7億6800万円)、乾隆期の斗彩金彩「八吉祥文天球瓶」(430万ドル・約6億7000万円)、雍正帝期の青磁釉蓮弁口瓶(390万ドル・約6億1000万円)といった、中国陶磁・工芸の名品も含まれる。

オークション終了後、チョウはUS版ARTnewsにこう述べた。

「今回のオークションは、日本・中国から欧米のコレクターまで、世界中を巻き込み激しい競争を生みました。複数の記録を塗り替え、最終的にホワイトグローブに到達したことは、アジア美術市場の強さを明確に示すものです。経験豊富な愛好家から新たなコレクターまで、卓越した作品を求める熱意が衰えていないことを証明しました」

今回コレクションの放出に踏み切った現在83歳の岡田和生は、パチスロ機で成功し、東京に本社を置くユニバーサルエンターテインメント社の会長を務めた。その財力をもとに30年以上に渡って上質な古美術コレクションを築き上げ、2013年に自身の美術館をオープンさせた。

岡田は2002年、数十年来の友人であったカジノ王スティーブ・ウィンと共にラスベガスを拠点とするホテル・カジノ運営会社ウィン・リゾーツを共同で設立した。だが数年後には、アジア圏の公職者への収賄疑惑をめぐり両者の関係は悪化し、2012年、岡田はウィン・リゾーツの副会長職を解任され、同社はユニバーサルエンターテインメントが保有していた20%の株式を割引価格で買い戻した。これに対しユニバーサル側が裁判で異議を申し立て、最終的に2018年に和解が成立。ウィンおよびウィン・リゾーツが26億ドル(約3844億円)を支払うことで決着した。

その後、岡田の代理人である法律事務所バーリット・ベックは5000万ドル(約74億円)を請求。彼は高額すぎると主張したが仲裁裁判で同事務所が勝訴したため、岡田は支払い義務を負うことになった。

今回のオークションに出品された作品群は、中国陶磁・工芸70点以上、日本の屏風・絵画や韓国陶磁など50点以上を含む、岡田美術館および岡田和生の両コレクションにまたがるものだ。しかし、現時点で岡田美術館はコレクション売却について公式発表を行っていない。(翻訳:編集部)

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