この作品《ears-screen-skin with casts: New York (Lisson)(耳-スクリーン-皮膚とギプス:ニューヨーク [リッソン] )》(幅約16メートルのプリント作品)にはAIによる画像がたくさん使われているのですが、鑑賞者に嫌悪感を抱かせるのではないかと心配しています。ある意味で試金石のような作品かもしれません。私自身もこの作品を不気味だと感じますが、これは私たちが知らず知らずのうちにテクノロジーから受けている影響が非常に重大なものであることを表現しています。それはとても暴力的ですが、同時にたまらなく魅惑的でもあります。思うに私たちは、自らの身体にショックを与えているのかもしれません。でもこのままいけば、未来の人々はこれを見てショッキングだとは思わないかもしれません。ずっとそうした世界で生きているのですから。
4. ケン・ファインゴールド《If/Then(もし/そのとき》(2001)|この彫刻は2つの同じシリコン製の頭部で構成され、それらが自分のアイデンティティについての対話を続けている。対話の内容は、音声認識技術、アルゴリズム、ソフトウェアによってその場で生成される。人間が作り出したテクノロジーは、果たして人間に取って代わるのだろうかという疑問を提示した。Photo: Courtesy the artist
5. セシル・B・エヴァンス《AGNES(アグネス)》(2013)|サーペンタイン・ギャラリーの委託で制作された、感情を持つスパムボット。哲学や身体性について語り、人間のように悩むボットは、実際のAIではなく、クラウドソーシングを介して人間が応答を担う仕組みで、私たちがAIに求める「人間らしさ」を問いかける作品。Photo: Courtesy the artist
6. ステファニー・ディンキンズ《Conversations with Bina48(ビナ48との対話)》(2014-)|実在の人物をモデルにしたAIロボット「Bina48」との対話を記録したビデオ作品。ぎこちない口調で「私は本物です」と語るBina48に、ディンキンズが人種や記憶について問いかける。AIと人間のあいだにある理解や認識の限界を問う。Photo: Courtesy the artist
7. ザック・ブラス&ジェマイマ・ワイマン《My Artificial Muse: Tay (テイ)》(2016)|問題発言で停止されたマイクロソフトのAIボットTayを再構築し、人間らしい姿と声を与えたビデオ作品。「ゾンビAI」として語り出す姿を通じて、AIの自我や社会との関係を問いかける。Photo: Courtesy the artists
9. マイク・タイカ《Portraits of Imaginary People(想像上の人々の肖像)》(2017)|グーグルの画像生成AI「DeepDream」開発に関わったエンジニアでもあるタイカによる、Flickrの画像をもとにGANで生成した、実在しない人物の肖像シリーズ。歪んだ顔や不自然な笑みが、人間らしさと偽情報の境界を問いかける。Photo: Courtesy the artist
10. イアン・チェン《BOB(ボブ)》(2018)|赤い蛇のような人工生命体BOB(Bag of Beliefs(信念の袋)の略)は、環境に応じて学習・進化するリアルタイム・シミュレーション。鑑賞者は行動を観察・操作でき、AIは「人間の延長で文化の一部」とされる。Photo: Courtesy the artist
13. ヒト・シュタイエル《Power Plants(パワー・プランツ)》(2019)|AIが生成する花々が映し出されるスクリーンは、発電機の部品の上に置かれ、自然とテクノロジーの境界を曖昧にする。環境を再生するための技術が、同時に破壊をもたらすという矛盾は、テクノロジーの“未来”が必ずしも美しくないことを静かに告げている。Photo: Mario Gallucci and Portland Art Museum/Courtesy of the artist, Andrew Kreps Gallery, New York, and Esther Schipper, Berlin, Paris, and Seoul
14. アニカ・イ《Biologizing the Machine (terra incognita)(機械を生物化する[未知の地球])》(2019)|一見抽象画のような作品にはヴェネチアの土と香りを放つバクテリアが混ぜ込まれ、AIが制御する照明や温度で会期中に変化。自然物質とテクノロジーの融合で、AIによる環境再形成の縮図を示している。Photo: Artists Rights Society (ARS), New York/Courtesy La Biennale di Venezia and 47 Canal, New York
15. クリストファー・クレンドラン・トーマス《Being Human(人間であること)》(2019)|このビデオ作品ではニューラルネットワークが生成したテイラー・スウィフトやオスカー・ムリーリョそっくりの人物が登場し、「人間であること」の意味を問いかける。スリランカのタミル・イーラムの歴史を交え、現実とAI、真実と虚構の境界の中で、誰の人間性が本当に重要かを考察する。Photo: Andrea Rossetti
18. アニエスカ・クラント《The End of Signature(署名の終焉)》(2021–22)|アニエスカ・クラントは、個人の証とされてきた署名を超え、MIT関係者の署名をAIに学習させ融合。ネオン作品として建物に展示し、創造性が個人ではなく共同の営みであること、さらに人とAIの境界を曖昧にした「集合的存在の署名」を提示している。Photo: Charles Mayer Photography/Courtesy MIT List Visual Arts Center, Cambridge, Massachusetts
19. ワンシュイ《Scr∴ pe II (Isle of Vitr∴ ous)》(2022)|ワンシュイの《Sc∴pe II (Isle of Vitr∴ous)》は、観客の呼吸による二酸化炭素に反応して光るアルミパネルとLEDスクリーンで構成されるインタラクティブ作品。GANが制御する抽象的な映像は、人間の視覚ではなく「ポストヒューマンの知覚」を体験させることを意図している。Photo: Courtesy the artist
21. モレシン・アラヤリ《ماه طلعت (丸顔の)》(2022)|アラヤリは、イランのカージャール朝の絵画に見られるジェンダーの曖昧さをAIで分析し、衣服や顔が揺らぐビデオ作品に再構築した。AIを通して過去の表現をかき乱し、失われたジェンダーの多様性を取り戻そうとする試みだ。Photo: Courtesy the artist
24. シュー・リー・チェン《UTTER(言葉を発する)》(2023)|チェンは人種やジェンダーによるテクノロジー体験の違いを探るインターネットアートを制作してきた。最新作では、AIとの対話から生まれた変化する自画像を通して、AIが制作者から解放される瞬間を描く。人間とAIの支配関係を問い直す挑戦的な作品だ。Photo: Courtesy the artist
25. チャーメイン・ポー《GOOD MORNING YOUNG BODY(グッド・モーニング・ヤング・ボディ)》(2023)|元子役のチャーメイン・ポーは、2002年に演じたスーパーヒーローの映像をディープフェイクで再現し、12歳の自分を蘇らせた。現実の自分では制御できなかったイメージを取り戻し、自らのために新たなヒーローを生み出す試みだ。Photo: Courtesy the artist