AIとアートの「現在地」を読み解くニュース14選──鑑定・創作・歴史解読の視点から【2025年アートニュースまとめ】
2025年、AIがアート業界に及ぼす影響の範囲は真贋鑑定から制作方法、考古資料の解読まで広がりを見せた。14のニュースから、「AIとアート」の現在地を振り返る。

【揺れる真贋判断とアートの「価値」】
1. AIを用いた鑑定ツールが個人所有のルーベンス作品を真作判定。専門家は「明らかに偽物」と反論

スイスが拠点のAI美術鑑定会社が、これまで複製品であると考えられていた個人所有のルーベンス作品《The Bath of Diana》を真作判定した。一方、専門家は「明らかに偽物」だと否定している。
2. AI鑑定で「85.7%真作」──個人蔵カラヴァッジョ、世界的評価機関の判定に揺さぶり

個人が所有するカラヴァッジョの《リュート奏者》が、スイス拠点のAI鑑定会社によって「85.7%真作」判定された。本作をめぐっては、過去にメトロポリタン美術館とサザビーズが模写と評価している。
3. 贋作鑑定に保険が下りる時代が到来? 英テック企業が保険付き鑑定サービスをスタート

美術品の真贋鑑定に保険を付帯する画期的なサービスが登場した。科学分析とAIを組み合わせた鑑定結果が誤っていた場合、所有者の損失を保険でカバーできるという。
4. AIアート・オークションに対して4700人のアーティストが中止を要求。「人間の作品を搾取している」

2025年2月20日から3月5日まで、クリスティーズ初となるAI作品に特化したオークションが開催された。だがこれらのアートが「人間のアーティストの作品を搾取している」として、数千人のアーティストがオークション中止を求めた。
5. AIアート・オークションが1億円の快挙! 「アートにおけるAIの影響力が可視化された」

4000人近くのアーティストが中止を求めたクリスティーズのAIアート・オークション「Augumented Intelligence(拡張知能)」が終了した。オークションの入札者の約半数がミレニアム世代やZ世代で、総売上も予想を上回ったことから、クリスティーズのバイスプレジデントはAIの影響力が証明されたオークションだと語った。
6. 生成AIを用いた作品をゲティ美術館が初収蔵。秘匿されたクィア文化に光を当てる「写真」として評価

ゲティ美術館が生成AIが使われた写真作品を取得したことを発表した。コスタリカのクィアカルチャーに焦点を当てた作品群はアーティストが所属するカリフォルニア州内のギャラリーで展示されたのちに、ゲティ美術館で展示される予定だ。
【AIで変わる制作の現場】
7.「創造性に犠牲は不要」──パレスチナへの連帯を示す展示の中止をめぐりホイットニー美術館でデモ

4月9日、グーグルが動画生成AIツールの最新バージョン「Veo 2」のデモを行った。AIによる超リアル、あるいは超現実的な映像を目にすることが多くなっているが、映画の予告編を使ったこのデモのシュールさは、その脚本からきているようだ。
8. 「作品は限界や障害との対峙からはじまる」──ホー・ツーニェンが語る新作、そして生成AIへの期待

2024年に東京都現代美術館で個展が開かれ、太平洋戦争を振り返る「日本三部作」など、歴史や社会状況、文化の緻密なリサーチに基づく作品で知られるアーティスト、ホー・ツーニェン。その最新作が、香港の現代美術館M+の巨大LEDスクリーンで上映されている。香港映画の黄金期の作品を、AIを用いて「脱文脈化」したこの意欲作について、US版ARTnewsがインタビューを行った。
9. 「AIは道具にすぎない」という思考の重すぎる代償──クリエイティブ業界が直面する本当の課題

AIをめぐる議論は、創造性よりも労働環境の問題へと移りつつある。アニメーターやCGIアーティストなど複数のクリエーターへの取材から、AIをめぐる創作現場の「真の課題」を考察する。
10. 重視すべきはテクノロジーよりシステム。「AIアート」懐疑派キュレーターが新ギャラリーを開設

ニューヨーク・マンハッタンに、異彩を放つギャラリーがオープンした。機械学習やアルゴリズム、スキャナーなどのツールを用いた作品を制作するアーティストを扱いながら、「AIアート」という表現を拒絶するこのギャラリーの創設者に、その意図と目標を聞いた。
【AIが広げた歴史の解読】
11. 炭化した2000年前の巻物の著者と題名が判明! 大学生らがAI解析を駆使した成果に学者もびっくり

古代都市ヘルクラネウムの遺跡から発掘された焼け焦げたパピルス文書の1つが、研究者たちによってエピクロス派哲学者フィロデモスによる『悪徳について』の一部であることが特定された。これはヴェスヴィオ・チャレンジと題されたコンペの一環であり、タイトルと著者の判読に成功した研究者たちには、約860万円の賞金が贈られた。
12. AIによる古代文書の「バーチャル開封」に進展! 炭化した巻物に「愚か」や「生命」などの文字

X線画像とAI技術を用い、炭化した古代ローマ文書を解読する試みが新たな進展を見せた。ヘルクラネウムの巻物と呼ばれる文書の「バーチャル開封」と判読に取り組んでいるのは、ヴェスヴィオ・チャレンジの参加者だ。
13. グーグルが碑文復元ツール「Aeneas」を発表! 古代人が遺した「巨大なジグソーパズル」解読に期待

古代ローマの人々が残した碑文は毎年およそ1500点が発見されているが、多くは欠損が激しく、内容の解読が困難とされている。こうした課題を解決するため、グーグル傘下のDeepMindが、欠損部分の補完や作成年代を推定するAI「Aeneas(アイネイアス)」を発表した。
14. 死海文書の新事実がAI技術で明らかに! 専門家は将来の実用化に期待

写本に関する近代最大の発見と言われている「死海文書」。その解読が進められる中、オランダ・フローニンゲン大学の研究者たちはAIと炭素年代測定の2つのツールを使った調査により、新事実を明らかにした。