アルキメデスの重要写本から「失われたページ」を再発見。最新技術で隠された文字の解読へ

古代ギリシャの天才数学者、アルキメデスの研究を記した重要な写本から失われていたページが、フランスの美術館で再発見された。1906年以来、120年にわたって所在不明になっていた貴重なものだという。

再発見された写本のページ。Photo: IRHT-CNRS/© Blois, Musée des Beaux-Arts, Inv. 73.7.52

古代ギリシャの天才的な数学者で、発明家でもあったアルキメデスの著作の多くは写本の形で今に伝えられている。そのうち、現存する最古の写本である「アルキメデス・パリンプセスト」から欠落していたページが、フランスのブロワ美術館で再発見された。1906年にある歴史家が写本の撮影を行って以来、所在不明になっていたものだ。

120年にもわたって行方が分からなくなっていたページの片面には、アルキメデスの著作「球と円柱について」の一節が書かれている。しかしもう一方の面は、20世紀に描かれたと見られる装飾画で覆われていた。

「アルキメデス・パリンプセスト」は10世紀頃に作られたギリシャ語の写本で、アルキメデスによる複数の著作が収められている。しかし、中世にはこの写本の羊皮紙を再利用するために一部が削り取られ、祈祷文などが上書きされた。今回、欠落していたページを見つけたフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究者は、「当時、動物の皮を用いた書写材料は非常に高価だったため、リサイクルするのは一般的なことだった」と述べている。

パリンプセストは現在、アメリカ・メリーランド州ボルチモアのウォルターズ美術館が収蔵しており、2011年に特別展の目玉として展示されたことがある。当時同博物館は、この写本が1998年にクリスティーズオークションで200万ドル(現在の為替レートで3億円超)で匿名の買い手に落札されたことに言及。「専門家の多くが、競売で売却された科学に関する写本の中で最も重要なものと考えている」と解説していた。

2000年代の初め、マルチスペクトルイメージングを用いたアルキメデス・パリンプセストの研究により、アルキメデスの論文だけでなく、文学的・哲学的な文章が判別された。失われたページを再発見した研究者は、それと同様のマルチスペクトル分析手法と「シンクロトロン放射光を用いたX線蛍光分析」を組み合わせることで、書かれている文章の解明に取り組むという。CNRSのプレスリリースには、次のように述べられている。

「今回の発見は、2000年代初頭よりも高度な技術を用いて、アルキメデス・パリンプセスト全体を再調査しようという気運を呼び起こしました。以前の調査では判読できなかったページを新たに読み解くことを目指しています」

なお、このニュースに関するサイエンティフィック・アメリカン誌の記事には、アルキメデスについてこう書かれている。

「アルキメデスは。古代ギリシャ時代の紀元前250年前後にシチリア島シラクサに住んでいた世界で最も偉大な思索家の1人。数学、物理学、工学に関する原理の発見や技術的発明で知られ、その業績は今日も科学者たちの関心を掻き立てている。アルキメデスは、砂の上に描いた図形の計算に没頭している最中にローマ兵に殺されたと伝えられているが、立証はされていない」(翻訳:石井佳子)

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