AIアート・オークションに対して4700人のアーティストが中止を要求。「人間の作品を搾取している」
2月20日から3月5日まで、クリスティーズ初となるAI作品に特化したオークションが開催される。だがこれらのアートが「人間のアーティストの作品を搾取している」として、数千人のアーティストがオークション中止を求めている。
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クリスティーズは、同社初となるAIアートだけで構成されるオークション「Augmented Intelligence(拡張知能)」を2月20日から3月5日まで開催する。
このオークションには、AIの先駆者ハロルド・コーエンやレフィク・アナドル、ピンダー・ヴァン・アーマン、ホリー・ヘルンドンらによる計20点が出品される。そのうちの4分の1はNFTをはじめとするデジタル作品で、残りは絵画、彫刻、紙、ライトボックスなど実体のある作品だ。予想落札価格は1万5000ドルから25万ドル(約229万円~3825万円)で、クリスティーズは、総落札額は少なくとも60万ドル(約9200万円)の売り上げを見込んでいる。
しかし2月8日、このオークションの中止を求める書簡が公開された。2月12日19時(日本時間)現在で、4700人以上のアーティストが署名している。書簡は、「オークションに出品予定の多くの作品に採用されているのは、著作権のある作品を無断で学習させたAIモデル。これらのモデルとその背後にある企業は、人間のアーティストを搾取し、許可や支払いなく彼らの作品を使って、彼らと競合する商業的AIプロダクトを生成しています」として、クリスティーズに「AIモデルとそれを使用する人々への貴社の支援は、AI企業による人間のアーティストによる作品の大規模な盗用を助長し、さらなる動機付けとなります。アーティストを少しでも尊重されるのであれば、このオークションの中止を求めます」と訴えている。
これに対してクリスティーズは、US版ARTnewsに次のような返答をしている。
「このセールに参加するアーティストたちは、主要な美術館のコレクションに収蔵されているような、学際的なアートの実践と実績を持っています。オークションの出品作品は、自身の作品をさらに発展させるためにAIを使用しているのです」
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公開書簡が発表される前週、クリスティーズのニコール・セールズ・ジャイルズ副社長兼デジタルアート販売ディレクターは、オークションの主要テーマの1つは「AIは人間の創造性の代替ではない」ということだと話し、こう続けた。
「(出品作品の)全てに人間が関与しており、AIモデル、ロボットなど、アーティストが選んだ様々なAIとの協働が見られます。これはAIがアーティストの創造性を高めているのに過ぎず、アーティストに取って代わるものではないことを示しています」
実際、オークションの目玉の1つであるアレクサンダー・ルーベンによる作品は、AI制御の高さ3メートル60センチのロボットで、入札があるたびにキャンバスに新たな絵が描かれるという仕掛けだ。
また、出品作家の一人であるレフィク・アナドルはXへの投稿で、クリスティーズをこう擁護した。
「(公開書簡は)とても面白い。プロジェクトに参加しているアーティストの大半が、自分自身のデータセットとモデルを基に使用しているのです! この批判は、アートエコシステム全体の根本的な問題であり、怠惰な批評の実践と、暗い心に駆り立てられた終末論的ヒステリーの結果です。だが、未来は明るい」
一方、デジタルアーティストのビープルは2月9日、XにOpen AIのロゴを付けたロボットが人間を従えて、オークションのポスターに落書きする画像を投稿。キャプションに、「THE WAR OF ART(芸術の戦争)」という言葉を添えている。
さらにデジタルアーティストのジャック・ブッチャーは、この公開書簡を基に《署名したアーティスト》というデジタル作品を制作。Xでこの作品について次のように語った。
「AIによるアートオークションの中止を求める集団的な反対運動を、まさにその反対運動が抵抗するもの、すなわちデジタルアート作品として表現しました。この公開書簡は、当初は無許可の労働力で訓練されたAI生成作品を非難するものでしたが、今ではその批判の対象であるシステムの一部となっています」(翻訳:編集部)
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