第2次トランプ政権がアート界に与えた影響を振り返る──「検閲」から文化機関の「解体」まで【2025年アートニュースまとめ】

第2次トランプ政権が誕生して以来、ARTnews JAPANでは、ドナルド・トランプ大統領が打ち出してきた文化政策に関するニュースをお伝えしてきた。なぜトランプ大統領は美術機関の展示内容を繰り返し非難したのか、美術機関がどう対応したのかを振り返る。

2025年11月、マクドナルド・インパクトサミットに登壇したトランプ大統領。マクドナルドが主催するこのサミットでは、人材・コミュニティ支援、サステナビリティに関する同社の方針が発表される。Photo: Win McNamee/Getty Images
2025年11月、マクドナルド・インパクトサミットに登壇したトランプ大統領。マクドナルドが主催するこのサミットでは、人材・コミュニティ支援、サステナビリティに関する同社の方針が発表される。Photo: Win McNamee/Getty Images

トランプ大統領令によりワシントンの美術館が多様性(DEI)プロジェクトを廃止。他の芸術機関の対応は

Todd Rosenberg/National Gallery of Art
Photo: Todd Rosenberg/National Gallery of Art

トランプ大統領は就任初日の1月20日に26の大統領令に署名した(歴代最高なんだとか)。そのうちのひとつに、「ダイバーシティ、公平性、包括性(Diversity, Equity, Inclusion=DEI)」に対する政策や活動の廃止を命じる行政命令があった。これを受け、ワシントンD.C.にあるナショナル・ギャラリー・オブ・アート(NGA)は多様性にまつわる部署を閉鎖したことを1月24日に発表している。


検閲の境界線はどこに? トランプ大統領がスミソニアンの展示を「名指し」非難、攻勢強める

The Smithsonian Institution. Photo: David Ake/Getty Images
スミソニアン協会。Photo: David Ake/Getty Images

NGAがDEIに関連する部署を閉鎖したことを受け、スミソニアン協会傘下の21の施設も多様性プロジェクトの廃止を発表。これを皮切りにトランプ大統領は、スミソニアン博物館の展示内容の見直しの要求や、スミソニアン協会が運営する文化機関の館長を解任するなど介入を強めていった。


「建設的で友好的」? スミソニアン長官とトランプ大統領が会談も、攻勢緩めず

Lonnie G. Bunch III. Photo: Paras Griffin/Getty Images

ニューヨーク・タイムズ紙によると、スミソニアン協会とトランプ政権が意思疎通を図るために同協会の長官であるロニー・G・バンチ三世とトランプ大統領は、昼食会議を行ったという。政府の報道官によれば「建設的で友好的」なミーティングだったというが、後日バンチ三世が従業員宛に送付した書簡には「展示内容の見直しは行政府ではなく、スミソニアン協会自身が指揮する」と明記されていた。


全米人文科学基金の職員100人が解雇。トランプ政権による文化機関の「解体」に労働組合が警鐘

人文科学分野に貢献した研究者や研究機関に授与されるNational Humanities Medal。Photo: Courtesy of Wikimedia Commons
人文科学分野に貢献した研究者や研究機関に授与されるNational Humanities Medal。Photo: Courtesy of Wikimedia Commons

イーロン・マスクが今年5月までトップを務めていた政府効率省(DOGE)の指令により、大幅な予算削減が求められていた全米人文科学基金(NEH)。その影響で職員およそ100人が6月に解雇された。2026年度の連邦予算案にはNEHを含む文化機関の廃止が盛り込まれていたが、8月には連邦裁判所が「違法である可能性が高い」と判決を下している。その後、同基金の評議委員も大量解任されており、文化研究支援の存続が危機に瀕している。


「英雄庭園」構想にトランプ政権が約57億円計上。庭園建設に芸術団体向けの予算を転用し批判の声

制作される彫像の1人として、初代大統領のジョージ・ワシントンが挙がっている。Photo: Noam Galai/Getty Images
制作される彫像の1人として、初代大統領のジョージ・ワシントンが挙がっている。Photo: Noam Galai/Getty Images

削減されたNEHの予算は「アメリカの英雄たちの国立庭園(National Garden of American Heroes)」に展示される彫像の建設費用に配分されることが決まった。トランプ政権の看板政策が盛り込まれた大規模な減税・歳出法案によれば2025年度のNEHの予算から配分され、2028年度まで利用可能とされている。


美術館は「WOKEの残党」──トランプ大統領の博物館批判に見え隠れする危険な視点

国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館の展覧会「Slavery and Freedom」。Photo: Cheriss May/NurPhoto via Getty Images
国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館の展覧会「Slavery and Freedom」。Photo: Cheriss May/NurPhoto via Getty Images

トランプ大統領は、政策だけでなくSNSへの投稿を通じてアメリカ国内の文化施設を非難してきた。大統領は何を不満として非難を連発しているのか、それは的を射た批判なのか──US版ARTnewsのシニアエディターが考察する。


MoMAが岐路に? トランプ政権の文化施設への圧力に元館長が警鐘──「自らの価値観を守るべき」

6月に行われたMoMAのガーデンパーティに出席したグレン・ローリーとスーザン夫人。Photo: Dimitrios Kambouris/Getty Images

ニューヨーク近代美術館(MoMA)の館長退任を前にしたこの夏、グレン・ローリーは、トランプ政権による文化施設への攻撃が続いていることへの懸念を遠回しに示し、MoMAは従来の方針で展覧会を継続するために戦わねばならないと発言した。


イェール大学美術館が「反DEI」にNO。連邦補助金を辞退し、独自予算でアフリカ美術展開催へ

コネチカット州ニューヘイブンにあるイェール大学美術館の外観。Photo: Moment Editorial/Getty Images
コネチカット州ニューヘイブンにあるイェール大学美術館の外観。Photo: Moment Editorial/Getty Images

トランプ政権が連邦予算に盛り込んだ反DEI(多様性、公正性、包摂性)条項に異議を唱えるべく、イェール大学美術館は、アフリカ美術展の開催に向けて申請していた2つの連邦補助金を取り下げた。同館は展覧会開催に必要な20万ドル(約2970万円)を自力で調達する必要があり、予定通りの開催を目指して、大学の基金を活用する方針を明らかにした。


トランプは「独裁者」── 米大統領を痛烈に風刺する挑発的彫刻が再び出現。制作したのは誰?

「トランプ・ダンス」のビデオが流れるテレビの彫刻がワシントンD.C.のナショナル・モールに出現した(2025年6月26日撮影)。Photo; Marvin Joseph/The Washington Post via Getty Images
「トランプ・ダンス」のビデオが流れるテレビの彫刻がワシントンD.C.のナショナル・モールに出現した(2025年6月26日撮影)。Photo; Marvin Joseph/The Washington Post via Getty Images

6月26日、アメリカの首都ワシントンD.C.の中心部にある国立公園のナショナル・モールに、ドナルド・トランプ大統領を揶揄するビデオが映し出される金色のテレビを何物かが設置した。これ以外にも、大統領がビットコインを差し出す金の像や、性犯罪で起訴され勾留中に死亡したジェフリー・エプスタインと手を取り合い踊る姿を描いた像が置かれるといった出来事もあった。


トランプ大統領、米首都に「凱旋門」を建設へ。建国250周年に「アルク・ド・トランプ」構想を発表

資金調達の夕食会で「凱旋門」の模型を披露するトランプ大統領。Photo: Kevin Dietsch/Getty Images
資金調達の夕食会で「凱旋門」の模型を披露するトランプ大統領。Photo: Kevin Dietsch/Getty Images

ドナルド・トランプ大統領が、ワシントンD.C.のリンカーン記念館前に巨大な凱旋門を建設する計画を発表した。「アルク・ド・トランプ」と一部の間で呼ばれているこの門は、2026年の建国250周年に向けた記念建造物のひとつとなる。

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