トランプ大統領がスミソニアン博物館館長を解雇。「DEI支持者は館長の立場にまったく適さない」

ドナルド・トランプ大統領は、スミソニアン協会が運営する文化機関のひとつである米国立肖像美術館の館長を解雇したとSNS上で発表した。今回の人事は大統領就任直後に署名した「DEI廃止」大統領令に沿って決定されたとみられる。

米国立肖像美術館を解雇されたキム・サジェット。Photo: Shannon Finney/Getty Images
2013年から館長を務めていた米国立肖像美術館を解雇されたキム・サジェット。Photo: Shannon Finney/Getty Images

ドナルド・トランプ大統領は5月30日の午後、米国立肖像美術館の館長を務めるキム・サジェットを解雇したと発表した。現時点で後任は発表されていない。

第2次トランプ政権が1月に始まって以来、トランプ大統領はスミソニアン協会の運営方針をめぐり、さまざまな大統領令を発令してきた。トランプ大統領は今回の発表に際して、次のような声明を自身が運営するSNS、Truth Socialに投稿している

「多くの人からの要望と提言を受けて、米国立肖像美術館館長、キム・サジェットの解雇を発表する。彼女は極めて党派的な人物であると同時に、ダイバーシティ、公平性、包括性(Diversity、 Equity、 Inclusion = DEI)の支持者であることから、館長としての立場にまったく適さない。後任者はまもなく発表される予定だ」

2013年から同館の館長を務めていたサジェットは、過去にペンシルベニア歴史協会のディレクター兼CEO、ペンシルベニア美術アカデミーの副館長などを歴任した。

米国立肖像美術館では現在、「American Presidents」と題された展覧会が開催されており、エレイン・デ・クーニングが描いたジョン・F・ケネディ元大統領の肖像画や、ギルバート・ステュアートによるジョージ・ワシントンの絵画など、アメリカを率いた人物たちを描いた絵が展示されている。

この展覧会の方針について尋ねられたサジェットは、ガーディアン紙に対して次のように語っている

「私たちは来館者に、作品に関する客観的な情報を提供しようと努めています。作品説明にキュレーターの私見が入ることは望ましくありません。私たちは、当館を訪れた方々に歴史的事実を知っていただくことに焦点を置いているのです」

ガーディアン紙によれば、展覧会にはトランプ大統領の肖像画も展示されており、キャプションには次のように記されていたという。

「2021年1月6日に支持者が米国議会議事堂を襲撃した事件を受け、権力濫用と反乱扇動の罪で2度弾劾された。裁判の結果、上院でいずれも無罪評決を受けている。2020年にジョー・バイデン前大統領に敗れたトランプ大統領は、2024年の大統領選において歴史的な返り咲きを果たしている。彼は、グローバー・クリーブランド(1837-1908)以来、任期を連続せずに再選を果たした大統領だ」

トランプ大統領が発表した声明には、サジェットが解雇された理由は明記されていない。米国立肖像美術館にコメントを求めたが、返答はなかった。

スミソニアン協会は米国立肖像美術館に加え、スミソニアン・アメリカ美術館と、アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館(NMAAHC)も運営している。これらの文化機関はトランプ大統領が3月に署名した大統領令において、「反米思想」に焦点を当てた展示を開催していると指摘されている。この行政命令には次のように記されていた。

「かつてはアメリカの卓越性を象徴し、文化的成果を世界に示す存在として慕われてきたスミソニアン協会は近年、分断的かつ人種に焦点を当てたイデオロギーに影響されている。こうした展示内容の変化により、アメリカや西洋の価値観は本質的に有害で、抑圧的であるという考えが広まっている」

大統領令発令後、NMAAHCの館長であるケヴィン・ヤングが「期間未定」の休職処分となったことが報じられた。その後彼は、4月に正式に職を辞している。

トランプ大統領は、政府職員の多様性に対する取り組みを廃止する大統領令に就任直後に署名している。この大統領令の発令後、スミソニアン協会はDEI部門の業務縮小を開始した。(翻訳:編集部)

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