第二次トランプ政権がアート界に及ぼす影響を総まとめ。 DEI廃止令、関税引き上げ、文化芸術機構の解体 etc.
1月20日に就任して以来、DEIプログラムの廃止や教育省の解体といった過激な大統領令を次々と発令し、現時点で93の行政命令に署名したドナルド・トランプ。第二次政権のハネムーン期間が終わろうとしている今、この躊躇なき決断がアート業界およびに国内の文化機関に及ぼした影響を振り返ってみよう。

トランプ再選をアート業界はどう受け止めたのか。「未来は暗い」「蹂躙される」「改めて連帯すべきとき」

トランプの再選が決定した11月、SNS上には嘆き悲しむ人や喜ぶ人、あるいは第二次トランプ政権において起こりうる事態を懸念する人の声があふれかえっていた。ある美術関係者は、「教育よりも暴力を、自由よりも利益を、命を救うことよりも害を何度も重んじてきてきたこの国のことなので、驚きはない」とInstagramに投稿している。
トランプ大統領が政府庁舎の建築様式に関する大統領令に署名。「公共建築は古典的伝統に沿うべき」

パリ協定からの離脱、性別は男性と女性しか認めない、世界保健機関からの脱退など、就任1日目から過激な大統領令に次々と署名したドナルド・トランプ。こうしたなか、アメリカ国内に新設される公共建築物および政府庁舎はすべて、古典主義建築が望ましいとする大統領令に署名した。
「DEI廃止」大統領令がスミソニアン博物館に与える影響は?
「組織の理念」に関する対応に注目集まる

政府職員の多様性に対する取り組みを廃止する大統領令にドナルド・トランプが署名したことを受け、ワシントンD.C.にあるナショナル・ギャラリー・オブ・アートは多様性にまつわる部署を閉鎖した。これに続いてスミソニアン協会もDEIにまつわる部署の廃止を発表したが、協会が運営する文化施設におけるアクセシビリティの確保は継続して行われると同協会の長官は通達している。
アメリカで「人種」「クィア」に関する2展示が中止に。トランプの「DEI廃止」大統領令の影響

トランプ米大統領が政府職員の多様性、公平性、インクルージョン(DEI)の取り組みを廃止する大統領令に署名したことを受けて、アメリカの公的美術館・博物館はDEIに関する部署の廃止が相次いだ。そして、2月初めにワシントンD.C.のアメリカ大陸美術館で2つの展覧会が中止されたことが明らかになった。
トランプの大統領令に米芸術団体が真っ向勝負。助成金申請時の「反トランス宣誓」一時撤廃を勝ち取る

ドナルド・トランプが就任直後に、性別は男性と女性の2種類しかないことを認めるよう要求した大統領が発令されたことを受け、全米芸術基金では「ジェンダー・イデオロギー」を促進しないことを助成金申請者に宣誓させていた。これを受け米自由人権協会が訴訟を起こした結果、誓約書に署名することなく助成金に申請できるようになった。
トランプ政権が2万6000点の美術品を管理する部署を大幅縮小。アレクサンダー・カルダーらの有名パブリックアートにも影響か

トランプ政権が、政府所有の2万6000点以上の美術品や工芸品の保存と維持管理する部署の一部閉鎖を3月3日に伝えた。突然の通知により、職員たちは現在修復中の作品や、アレクサンダー・カルダーらが手掛けた貴重な屋外展示作品の今後の管理を心配している。
トランプ大統領が謎の行動。解体したばかりの博物館・図書館サービス機構(IMLS)の新長官を任命

美術館・博物館、図書館、アーカイブに重要な資金を提供している博物館・図書館サービス機構(IMLS)の解体が3月13日に署名された大統領令によって決定した。ところが、その1週間後の3月20日にトランプは同機構の代理長官に、労働省の副長官であるキース・E・ソンダーリングを新たに任命した。
トランプ大統領が「本当に最悪」と自身の肖像画を酷評。州議会から撤去、新作の制作が決定

2019年よりコロラド州議会に掲げられていたドナルド・トランプの肖像画が撤去されることに。トランプは自身が運営するSNS、Truth Socialにおいて「本当に最悪な肖像画だ。彼女は年をとるにつれて才能を失ったに違いない」と投稿している。
トランプ大統領、「反アメリカ的」な展示の撤去をスミソニアン博物館に命令。多様性は「有害で圧政的」

3月27日にはトランプが美術館や研究・教育施設、そして国立動物園を運営するスミソニアン協会に対し、「分断を招く」「反アメリカ的」な内容を展示から排除するよう命じる大統領令に署名。これによって「アメリカ史に真実と正気」が取り戻されると、トランプは主張している。
イーロン・マスク率いる政府効率省が人文科学基金に大リストラを要求。「文化的遺産の破壊」と専門家

イーロン・マスクがトップを務める政府効率省(DOGE)が、全米人文科学基金(NEH)にスタッフや助成金を大幅に削減することを要求している。これに対してNEHは「国家予算で考えると誤差程度の金額のために、全ての州にプラスの影響を与えている小さな連邦機関を標的にしている」とマスクの要求を非難した。
トランプ政権を憲法違反で提訴。博物館・図書館サービス機構等の廃止に州司法長官らが異議

アメリカのドナルド・トランプ大統領やイーロン・マスク率いる政府効率省(DOGE)が、連邦政府機関の予算・職員削減を矢継ぎ早に打ち出している。そんな中、文化面での財政支援停止などに異議を唱える訴訟が、ニューヨーク州司法長官らによって起こされた。
全米日系人博物館、トランプ政権のDEI廃止に反対の姿勢。「インクルージョンは私たちの信念」

ロサンゼルスにある全米日系人博物館が、トランプが打ち出したDEI(多様性、公正性、包摂性)政策見直しに反対する立場を示している。しかし、政府効率化省による大幅な歳出削減により、同博物館に対する約3億円の資金援助にも黄信号が灯っている。
米国立公園局が奴隷解放運動に関する投稿を改ざん。「局の承認なしに変更」と報道官は否定

米国立公園局のウェブサイトから奴隷解放運動や公民権運動に関する記述が削除されていることが、ワシントン・ポスト紙の調査によって明らかになった。同局の報道官は、局の承認なしに変更が加えられたと語り、現在は変更前のものに復元されている。
トランプ関税でアート市場に暗雲? 投資対象に変化、中小ギャラリーの収益性が大幅低下の可能性

ドナルド・トランプが関税政策を打ち出したことで世界各国の企業に影響が及んでいるなか、アート業界も同様に、顧客離れと運営コスト増による打撃を受けることが予測されている。業界関係者は今後の見通しについて厳しい見解を示しており、関税により混乱が生じると同時に運営コストが増加し、コレクターの購買行動が変化する一方で、リソースが限られた中小規模のギャラリーが最も大きな打撃を受ける可能性があるという。
トランプが発売した仮想通貨が1兆円超の大暴落。「アート」と言い張ることで法的課題を回避?

トランプ米大統領が1月17日に発売したミームコイン(仮想通貨の一種)「$TRUMP」が、わずか1カ月半で120億ドル(約1兆8000万円)下落した。トランプの「$TRUMP」は、発売して3日後に2度目の大統領就任を果たした事で、その市場価値はおよそ150億ドル(約2兆2400億円)まで急上昇した。ミームコインは、価値の急騰と同じくらい激しく失速すると言われているが、本稿執筆時点で、時価総額はわずか13億7000万ドル(約2050億円)まで下落している。
トランプの発言が影響。米株価指数の急落でジェフ・ベゾスら著名コレクターの資産が散る

アメリカの主要な株価指数が下落したことを受け、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスやLVMHのロベール・アルノーなどの資産が大幅に減少した。これは、ドナルド・トランプが発表した関税や、トランプの発言で世界的な不況を恐れた投資家たちによる売りが膨らんだことに起因しており、アート業界への影響も懸念されている。
トランプ関税はアート市場にも大打撃。関係国の美術界は混乱、アメリカ市場離れの可能性も

「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ大統領の高関税政策は、各国に大きな波紋を広げ、アート界にもその影響が押し寄せている。貿易戦争の激化が懸念される中、アメリカ、カナダ、メキシコのアート市場関係者に取材した。
「トランプショック」株価急落の被害は有名コレクターにも。ベルナール・アルノーは2兆7700億円を失う

トランプ政権は、9日の午前0時(日本時間の9日午後1時)に、貿易赤字が大きい国や地域を対象にした「相互関税」を発動した。トランプが相互関税を発表した4月3日以降、貿易摩擦の激化と世界的な景気後退の予測から株価の下落が続き、US版ARTnewsのトップ200コレクターであるジェフ・ベゾス、ベルナール・アルノー、アリス・ウォルトンは巨額の損失を被った。
トランプ次期大統領の顔に「huge(巨大)」と書かれた作品に撤去要請。作家は「検閲」と反論

2024年12月3〜8日までマイアミで開催されたアートフェア「SCOPE Art Show」の初日に、ギャラリーが出品したドナルド・トランプの肖像画が撤去された。「Huge(巨大)」というトランプの口癖が肖像画の上にあしらわれた本作が「挑発的」であったことを理由に撤去要請があったというが、ギャラリーのオーナーは検閲であると非難した。