トランプが発売した仮想通貨が1兆円超の大暴落。「アート」と言い張ることで法的課題を回避?
トランプ米大統領が1月17日に発売したミームコイン(仮想通貨の一種)「$TRUMP」が、わずか1カ月半で120億ドル(約1兆8000万円)下落した。

トランプ米大統領が1月17日に発売したミームコイン「$TRUMP」が、大暴落していたことが分かった。
ミームコインとは、インターネット・ミームのジョークやネタから作られた仮想通貨で、2013年に柴犬のかぼすを基に作られたDOGEコインが初と言われている。通常のものに比べると価値や機能が劣るものの、仮想通貨として取引することができる。
トランプの「$TRUMP」は、発売して3日後に2度目の大統領就任を果たした事で、その市場価値はおよそ150億ドル(約2兆2400億円)まで急上昇した。ミームコインは、価値の急騰と同じくらい激しく失速すると言われているが、本稿執筆時点で、時価総額はわずか24億8000万ドル(約3700億円)まで下落している。
この下落は、仮想通貨市場全体の暴落と一致しており、先月のトランプ政権発足後、最大手のビットコインは20パーセント価格を落とした。2番目に規模の大きいイーサリアムも、3月4日に16カ月ぶりの安値を記録している。
「$TRUMP」の価格高騰の背景には、トランプ第2次政権が仮想通貨に対して好意的で、仮想通貨の戦略準備金を創設するのではという投資家たちの期待があった。しかしトランプは就任後、仮想通貨支持に関する公約を何ひとつとして行わなかったため、今回の価値の下落が引き起こされたとアナリストたちは分析している。
この現象について、金融会社XTBのアナリスト、キャスリーン・ブルックスは2月28日、GBニュースにこう語った。
「ドナルド・トランプが就任すれば仮想通貨が制度化されるだろうという期待から、多くの資金が仮想通貨に流入したと考えています。しかし、トランプは大統領就任後、仮想通貨に関する発言をしておらず、これが投資家が一斉に撤退した理由かもしれません」
一方、3月2日にトランプは米国戦略準備金の計画が進行中であると発表。これにより、仮想通貨市場はにわかに活気づいたが、投資家の準備金に対する楽観論が薄れるにつれて、再び下落した。
アナリストたちは、仮想通貨の下落の原因として貿易摩擦の激化も指摘している。3月4日、トランプはメキシコ、カナダ、中国に対する関税発動を発表した。これについて、ハーグリーブス・ランズダウンの金融・市場責任者であるサザンナ・ストリーターはガーディアン紙に次のように説明した。
「トランプの攻撃的な貿易アプローチは投資家の不安を引き起こし、リスクの高い資産から離れる動きを加速させています。また、先月起こったドバイのBybit取引所への大規模なハッキングも動揺の一因と考えられます。トランプが仮想通貨への支持を示す具体的な動きを取らない限り、この神経質な状況は続くでしょう」
2月のBybit取引所への大規模なハッキングでは、サイバー攻撃者がBybit取引所から15億ドル(約2200億円)相当のデジタル資産を盗み出し、仮想通貨への投資家の信頼がさらに損なわれる事となった。FBIは、北朝鮮の関与を疑っている。
責任逃れ? 仮想通貨を「アートワーク」と呼ぶ理由
このように資産価値として怪しい存在となったミームコイン「$TRUMP」だが、もうひとつ怪しい点がある。同コインのウェブサイトには小さな文字でこう書かれているのだ。
「TrumpMemesは、『$TRUMP』および関連アートワークに具現化された理想や信念への支持と関与の表明として機能することを目的としており、いかなる種類の投資機会、投資契約、または投資の対象となることを意図していません」
デジタルアートアドバイザーでThe Digital Art Mileアートフェアの共同創設者であるゲオルク・バクは、US版ARTnewsの取材に対して、この仮想通貨をアートワークとして位置づけることは、トランプのアーティストになりたいという密かな願望ではなく、そのような宣言によってもたらされる法的保護に関係している可能性が高いと語り、こう解説した。
「『$TRUMP』をアートとして表示することで、特定の保護が受けられ、法的課題を回避したり、法的または規制の枠組みに合わせてその目的を再定義したりすることができるのです。暗号通貨やミームコインにとって最大の法的課題の一つは、1946年に米最高裁判所が設定した基準、ハウイーテストのような金融規制の下で『証券』に分類されることです。コインが証券とみなされると、登録、開示、コンプライアンス措置を必要とする厳格な規制に従わなければなりません。ミームコインをアートや文化的商品として宣言することで、コイン作成者はそれらを免除されるのです」(翻訳:編集部)
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