トランプの発言が影響。米株価指数の急落でジェフ・ベゾスら著名コレクターの資産が散る
アメリカの主要な株価指数が下落したことを受け、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスやLVMHのロベール・アルノーなどの資産が大幅に減少した。これは、ドナルド・トランプが発表した関税や、トランプの発言で世界的な不況を恐れた投資家たちによる売りが膨らんだことに起因しており、アート業界への影響も懸念されている。

US版ARTnewsのTOP 200 COLLECTORSに選出されているジェフ・ベゾス、ベルナール・アルノー、アリス・ウォルトンらは、3月7日から10日にかけて起こった米株価指数の急落で数十億ドルの損失を被った。
これは、ドナルド・トランプが発表した関税と、トランプが9日に放送されたFOXニュースのインタビューで、景気後退の可能性を明確に否定しなかったことに対する世界的な不況を懸念した投資家の株の売りが影響している。
ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)によると、3月7日の取引終了時点でアメリカの主要な株価指数は2%以上下落したほか、S&P 500は3.1%下落し、9月以来最大の落ち込みを記録。また、3月10日にはナスダック総合指数が4%下落したと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
US版ARTnewsの分析によれば、3月10日の終値時点で、現在ブルームバーグのビリオネア指数にもランクインしているTOP 200 COLLECTORSのうち30人のうち24人が、大きな損失を被った。この30人のビリオネア・アートコレクターのうち11人は、株式市場での2日間の損失により、純資産総額が3%以上減少している。

最も大きな損失が生じたのは、クリスタル・ブリッジズ美術館の創設者で、アート・ブリッジズの理事長を務めるアリス・ウォルトンで、株の売りによって65億ドル(約9610億円)以上の損失が発生したほか、純資産も7%減の1070億ドル(約15兆8200億円)となった。
そのほかにも、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは58億3000万ドル(約8620億円)、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)の会長兼CEOであるベルナール・アルノーは53億ドル(約7835億円)、ユニクロCEOの柳井正は17億ドル(約2514億円)、そしてソフトウェア企業のSAPの共同創業者であるハッソ・プラットナーは15億ドル(約2220億円)の純資産を同じ2日間で失っている。
株式市場の下落による影響は、シャネルの会長アラン・ヴェルテーメ、HCLエンタープライズの会長シブ・ナダール、投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の共同創業者ヘンリー・クラビス、そしてKKRの前CEOジョージ・ロバーツにも及んでおり、この4人はそれぞれ5億ドル(約740億円)を超える損失を被った。
3月10日の取引終了時点で、年初来の損失が10億ドルを超えたビリオネアは、ベゾス(225億ドル[約3兆3280億円]減)、 ナダール(75億ドル[約1兆1100億円]減)、石油・ガス事業を手がけるリライアンス・インダストリーズ会長のムケシュ・アンバニ(38億6000万ドル[約5700億円]減)、柳井(37億5000万ドル[約5543億円]減)、ロバーツ(33億ドル[約4878億円]減)、クラビス(30億ドル[約4436億円]減)、ウォルトン(20億ドル[約2957億円]減)、そしてアポロ・グローバル・マネジメント元CEOのレオン・ブラック(15億4000万ドル[約2267億円]減)だ。
2024年のTOP 200 COLLECTORSに選ばれた30人のビリオネアの純資産総額は依然として70億ドル(約2277億円)を超えている。だが、株式市場の損失は、ロサンゼルスで発生した火災、中東や東欧で続いている地政学リスク、そして中国、香港、カナダ、メキシコからの輸入品に対して設けた関税の影響により、すでに厳しい状況にあるアート市場の懸念をさらに高める可能性がある。
これらの国々からの写真や美術品は、現時点では輸入関税の対象外となっているが、この適用除外は米税関・国境警備局の職員の解釈に委ねられている。また、カナダは写真、プリント、および「建築、エンジニアリング、工業、商業、地形、またはその他の目的」を除く「手描きの絵画、ドローイング、パステル画」に25%の対抗関税を課している。また、オンタリオ州からの電力輸出に25%の課徴金が課されるため、ニューヨークの美術館やオークションハウス、ギャラリーでも電気料金が値上がりするかもしれない。
また、木材、原油、自動車部品、電子機器、事務用品、農産物、ホスピタリティ用品のほか、トートバッグや玩具、Tシャツ、マグネットなど、アート関連のグッズの輸入関税によるコスト増に、アート業界も対応に追われている。
3月11日、トランプはオンタリオ州の電気に対する報復関税に対して、3月12日からカナダから輸入する鉄鋼とアルミニウムの関税を25%から50%に引き上げると自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。彼はまた、カナダが「長年続いているその他の悪質な関税」を撤廃しなければ、アメリカに入ってくる自動車の関税を大幅に引き上げるとも記している。
このほかにもトランプは、カナダを51番目の州にすべきだと繰り返し主張してきたが、最近の世論調査でカナダ人の85%が拒否していることから、この主張がいかに非現実的なものであるかは数字によって証明されている。(翻訳:編集部)
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