トランプ政権が2万6000点の美術品を管理する部署を大幅縮小。アレクサンダー・カルダーらの有名パブリックアートにも影響か

トランプ政権が、政府所有の2万6000点以上の美術品や工芸品の保存と維持管理する部署の一部閉鎖を3月3日に伝えた。突然の通知により、職員たちは現在修復中の作品や、アレクサンダー・カルダーらが手掛けた貴重な屋外展示作品の今後の管理を心配している。

アメリカ・イリノイ州シカゴのクルチンスキー連邦ビル前に設置されているアレクサンダー・カルダーの《フラミンゴ》(1974)。Photo: Beata Zawrzel/NurPhoto via Getty Images
アメリカ・イリノイ州シカゴのクルチンスキー連邦ビル前に設置されているアレクサンダー・カルダーの《フラミンゴ》(1974)。Photo: Beata Zawrzel/NurPhoto via Getty Images

アメリカ連邦調達庁(GSA)の美術・歴史保存部門の5つの地域事務所が先週突然閉鎖され、同庁の約36人の職員の半数以上が解雇を待つ休職状態に置かれたとワシントンポスト紙が伝えた。この人員削減は、アメリカ全土の連邦施設に展示されている多様な芸術作品に悪影響を及ぼすと予想されている。

報道によると、3月3日、職員らはスティーブン・エヒキアン代理長官が署名した通知で部門閉鎖を知らされたという。ポスト紙が公開した通知には「このメールは、あなたの組織単位で廃止され、その単位内全ての役職が撤廃されることを知らせる」と書かれていた。また、廃止部門が「もはやGSAとトランプ政権の価値観に合致していない」という説明と共に、イーロン・マスク主導の連邦政府全体の予算削減にも触れられていた。

GSAのコレクションには、マーク・ロスコからジェイコブ・ローレンス、マヤ・リン、ルイーズ・ネヴェルソンまで、1850年代にさかのぼる作品を含む壁画、絵画、彫刻作品で構成されており、総数は2万6000点以上にのぼる。また、GSAは1974年以来、建物の建設費用の0.5パーセントを新しいアート作品の制作費用に充てる「アート・イン・アーキテクチャー・プログラム」を続けており、これまで委託した作品は500点以上になる。全国11地域にわたるこれらの管理は、トランプ政権以前でもごく少数のスタッフに任されていた。

突然の部署閉鎖について、匿名の職員らはポスト紙に対し、シカゴのジョン・C・クルチンスキー連邦ビルにあるアレクサンダー・カルダーの1974年の彫刻《フラミンゴ》などの屋外に設置された作品や、解雇時に保存作業中だった作品、例えば内務省ビルから一時的に取り外されていたギフォード・ビールの1941年の絵画《トロピカル・カントリー》などが今後どうなるか心配だと語った。

前政権で決定したプロジェクトが続けられるかどうかは不明だ。解雇通知があった翌日、作品の履歴を失わせてはならないと考えたディレクターは、職員に記録をすみやかにデジタル化し、共有ドライブに入れるよう指示したという。

ポスト紙によると、GSAは最近大幅な経費削減を計画している。今回の部署削減も、連邦政府所有の建物の約50パーセントを売却する決定に関連している。3月4日、同庁は、司法省本部やFBIビルなどの著名な建物を含む売却リストを公開後削除し、職員らに混乱と警戒感を与えた。

そしてGSAは、大恐慌時代のニューディール政策である公共事業促進局(WPA)が後援した、ドロシア・ラングやエドワード・ホッパーらの作品を含む数百点の美術品を保管するバージニア州の倉庫のリース契約も終了する計画だ。WPAの美術品は一部が紛失していた問題が発覚しており、連邦政府の監視機関は長年にわたって回収に努めている。先日その一部がeBayで販売されていたことが突き止められた。

一方、トランプ政権はテキサス州唯一のユネスコ世界遺産である18世紀の教会群、サン・アントニオ・ミッションズにある34の国立公園局(NPS)事務所の閉鎖も進めている。先月、ホワイトハウスは同局の職員1000人を解雇し、NPS博物館に収蔵されている美術品や工芸品も、スタッフと施設の不足により被害を受けるのではないかという懸念が高まっている。

対象となったNPS事務所では、国立公園内の温度管理された古美術博物館や収蔵庫の運営、訪問者サービス、セキュリティなどを担ってきた。国立公園保全協会(NPCA)のテレサ・ピエルノ会長兼CEOは声明で、政権の予算削減は「私たちの公園を取り返しのつかない地点まで追い込んでいる」と述べた。(翻訳:編集部)

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