マヤ文明の一大都市、カラコル初代の王墓で遺骨やヒスイの装飾品などを発見。古典期の王権に新たな光

中米・ベリーズでマヤ文明の発掘調査を続けている考古学研究チームが、カラコル遺跡で約1600年前にさかのぼる墓を発見した。この地域の中心都市として、6〜7世紀に最も繁栄したカラコルの初代の王が埋葬された墓と見られている。

2022年3月、中米・ベリーズ最大級の遺跡であるカラコル遺跡を、イギリスのウィリアム皇太子とキャサリン妃が視察。手前はカーナ神殿の中段へ登った皇太子夫妻を遠巻きに撮影する取材陣。Photo by Chris Jackson/Getty Images

7月10日、ヒューストン大学の考古学研究チームが、マヤの古代都市カラコルを築いた初代の王、テ・カブ・チャアク(Te K’ab Chaak)の約1600年前の墓が見つかったと発表した。ライブサイエンス誌が伝えるところによると、40年以上にわたる発掘調査で王墓が確認されたのは今回が初めて。

カラコルはマヤ文明古典期の中心的な都市の1つで、現在のベリーズ・カヨ州の森林保護区の中に位置している。グアテマラにあるマヤ文明最大級の古代都市であるティカル遺跡からは、南東に百数十キロの場所だ。

「木の枝の雨の神」を意味するテ・カブ・チャアクは、西暦331年に王位に就いたとされる。その墓は350年頃のもので、市街地から少し外れた北東部の高台の複合施設にあった。王族の住居や公的な儀式に使われていたこの複合施設では、テ・カブ・チャアクのものを含む3基の墓が最近見つかっている。

王墓からは遺骨のほか、ヒスイのビーズ、彫刻が施された骨、貝殻、ヒスイ片がモザイク状につながれたデスマスク、マヤの神々や支配者が供物を受け取る図柄の陶器などが出土した。これ以前にカラコルで発見された遺物には、メキシコ中部のテオティワカン文明からの影響が示唆されていたが、最近発見された墓は、それより一世代前のマヤ王族のものと考えられている。

テ・カブ・チャアクの死亡時の身長は約170センチで、歯がないことからおそらく高齢だったと推定される。この王が築いたカラコルの王朝は460年以上続き、最盛期には163平方キロもの広大な地域に10万人以上の人々が居住していた。そこには盛り土をした道路や整備された農地、数々の神殿が建設され、特に高さ約43メートルのカーナ神殿は、現在もベリーズで最も高い建造物の1つだ。

カラコル考古学プロジェクトの共同リーダーを務めるヒューストン大学のアレン・チェイスは声明で、今回の発見はカラコルの初期支配者とメソアメリカ(北部を除くメキシコおよび中央アメリカ地域)の外交的な交流に新たな光を当てるものだと述べている。(翻訳:石井佳子)

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