イギリス王室の伝説的遺物「運命の石」が危機一髪! キルト姿の男性が展示ケースを襲撃するも無事
2023年のチャールズ国王の即位式にも使用された、イギリス王室に伝わる古代の戴冠石「運命の石」。7月12日、この石を特別展示中だったスコットランドのパース博物館で、35歳の男性が故意に石の保護ガラスを破壊する事件が起こった。

7月12日、スコットランドのパース博物館で特別展示中だった、イギリスで最も重要な歴史的遺物と言われる「運命の石」の保護ガラスが35歳の男性によって破壊される事件が起こった。男性はスコットランドの民族衣装であるキルトを着用していた。
アートネットが伝えるところによると、博物館側の冷静かつ迅速な対応で、男性はすぐ警察に逮捕されたという。ほかの来館者への危害もなかった。
「スクーンの石」とも呼ばれる「運命の石」は、66×42.5×27センチで、重さは約152キロ。6世紀頃にケルト系民族のスコット人によってアイルランドから持ち込まれたとされており、その後1292年にスコットランド王となったジョン・ベイリャルが初めてこの石の上に座って戴冠式を行った。石は正しい君主を認識すると喜びで唸り声を上げると信じられており、以来、1603年の王冠連合によりスコットランド王とイングランド王が兼ねられるようになっても代々の王がこの石を尻に敷いて戴冠を行ってきた。
実は、この石に対する襲撃は初めてではない。石は戴冠式が行われるロンドンのウェストミンスター寺院の玉座の中に設置されていたが、1950年に、スコットランドの完全自治を求めるグラスゴー大学の4人の学生が石を盗み出してスコットランドに移送。1951年に回収されたが、政治問題化することを恐れた政府は不起訴とした。
その事件の影響もあり、運命の石は1996年のジョン・メージャー政権時にスコットランドに返還され、現在は、エディンバラ城に安置されている。イギリス王室の戴冠式の際には一時的にウェストミンスター寺院に移送され、玉座にはめ込まれる。2023年のチャールズ国王の即位式にも石は使用された。
「運命の石」は、2024年3月からパース博物館で完全予約制で特別展示を行っていた。博物館は、今回の事件による石の破損は見当たらなかったと公表。男の動機はまだ明らかになっておらず、スコットランド警察は7月21日から男に対する取り調べを開始するという。