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あのチャールズ国王の肖像画が動物愛護団体の標的に。顔部分を人気アニメの主人公に差し替え

6月11日、イギリスの動物愛護団体「Animal Rising」がチャールズ3世の肖像画に大人気ストップモーション・アニメーション作品『ウォレスとグルミット』に登場するウォレスの顔を貼り付けた。今回の活動は、動物福祉を推進する非営利団体、英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)から認証を受けた農場が動物を虐待している現状を啓蒙することを目的としていたという。

チャールズ国王の肖像画に映画『ウォレスとグルミット』シリーズの主人公、ウォレスの顔を貼り付けるAnimal Risingの活動家2名。Photo: Screenshot Courtesy of Animal Rising via X

ジョナサン・ヨーが手がけたチャールズ3世の肖像画が、2人の動物愛護活動家の標的となり、映画『ウォレスとグルミット』シリーズの主人公であるウォレスの顔が国王の顔に貼られた。抗議活動を行った団体「Animal Rights」はその様子をX(旧Twitter)に投稿し、動画にはのりが塗布されたローラーでウォレスの顔を貼っている様子が映っている。チャールズ3世の肖像画は、ロンドンのフィリップ・モールド・ギャラリーにて6月21日まで展示される。

この肖像画にはまた、「チーズはないよグルミット。RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)から認証を受けた牧場でこんなに動物が虐待されているんだから」と書かれたスピーチバブルもあわせて貼られた。Animal Risingはその後、「RSPCAの後援者であるチャールズ3世が、なぜAssured Scheme(保障計画)をやめるようRSPCAに要請すべき理由を知りたければこちら」と投稿し、自身のウェブサイトへのリンクを記載している。

RSPCAのAssured Schemeとは、動物福祉の基準をイギリス国内に普及させるために設けられた取り組みだ。同団体によると、農場や食肉処理場、孵化場、運搬業者は、事業を継続するために、RSPCAの基準を満たしている必要があり、協会から認証を得なければならない。

ところが、Assured Schemeは、農場に認証を付与するための判断基準をめぐって、動物愛護活動家たちからの非難の的となっている。今回のアートアタックの前にAnimal Risingは、RSPCAから認証を受けた農場の調査結果を発表しており、認証済みの施設の運営方法が「擁護できないほどずさん」だとそこには記されていた。

今回の抗議行動を受け、RSPCAは次のような声明を発表している。「私たちは、いかなる違法行為も容認しません。当協会のスタッフとボランティアは、動物たちを救い、世話をし、動物たちの声を届けることに懸命に取り組んでいます。Animal Risingが継続的に行っている抗議活動は、何千もの動物たちを毎日のように助けるという、動物愛護の本質から逸脱しているのです」

Assured Schemeは「畜産動物を助ける最善の方法であると同時に、将来の畜産動物の生活を変えるためのキャンペーン」だと、RSPCAの声明には記されておりこう続く。「認証を受けた農場のウェルフェアに関する懸念は極めて深刻に受け止めており、私たちはこうした申し立てを調査するために迅速に行動しています。抗議の映像が届いた直後に私たちは緊急調査を開始しました」

チャールズ3世の肖像画が展示されているギャラリーのオーナーであるフィリップ・モールドはテレグラフの取材に対して「作品本体への損傷は、幸いなことにありませんでした」と語っており、ウォレスの顔は無事に剥がせたという。(翻訳:編集部)

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