今週末に見たいアートイベントTOP5:多様な作家作品から探る「ゴッホ・インパクト」、オーストラリアの女性先住民アートの現在地

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ゴッホ・インパクト─生成する情熱(ポーラ美術館)より、フィンセント・ファン・ゴッホ《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》1888年、ポーラ美術館

1. アリ・バユアジ 瞑想の行為(カナダ大使館高円宮記念ギャラリー)

《袈裟》(2023) 手織りのプラスチックと綿の糸、アップリケとステッチ

海洋プラスチックから「私たちの世界」を考える

1975年インドネシア生まれ、バリとモントリオールを拠点に活動するアーティスト、アリ・バユアジの個展。アリは一見使い古されたり放置されたりしている物や素材を豊かな遊び心で変化させ、ビデオ、写真、絵画やインスタレーション作品を制作している。一方で、バリ島の経済危機に際して、2020年からサヌールの織工とその家族を集めて、コミュニティベースの新しい収入源を創出する革新的なプロジェクトを立ち上げるなど、世界をより良くするための活動に尽力している。

本展ではアリの新シリーズ「Weaving The Ocean(海を織る)」を披露する。日本の仏教の儀式で伝統的に使用される袈裟の美学からインスピレーションを得、海に漂流するプラスチックロープなどをゆるく織りあげた。これらの作品は環境を保護するための社会的な解決策を提示するほか、私たちが住む世界の複雑さと脆弱さを痛烈に反映する。

アリ・バユアジ 瞑想の行為
会期:4月17日(木)~9月5日(金)
場所:カナダ大使館高円宮記念ギャラリー(東京都港区赤坂7-3-38)
時間:10:00~17:30(入場は30分前まで)
休館日:土日、大使館休館日および臨時閉館日


2. ゴッホ・インパクト─生成する情熱(ポーラ美術館)

ポーラ美術館「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」展示風景 ゴッホとその時代 Photo: Ken Kato
ポーラ美術館「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」展示風景 福田美蘭 Photo: Ken Kato
ポーラ美術館「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」展示風景 森村泰昌 Photo: Ken Kato copyright the artist, courtesy of ShugoArts
ポーラ美術館「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」展示風景 フィオナ・タン Photo: Ken Kato
フィンセント・ファン・ゴッホ《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》1888年、ポーラ美術館

現代日本における「ゴッホ」の影響を検証

開館以来初のフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)をテーマとした展覧会。うねるような筆触とあざやかな色彩による独自の様式で描いた数多くの絵画と、わずか37歳という短くも劇的な生涯は、今なお世界中の芸術家のみならず文化、社会といった領域にも大きなインパクトを与えている。

本展では、ゴッホからの影響を糧としながら、芸術家たちはそれぞれの時代にふさわしい新たな情熱をどのように生成してきたのかという歴史を振り返るとともに、現代を生きる私たちにとって「ゴッホ」がいかなる価値を持ち得るのかを検証する。出品作家は、フィンセント・ファン・ゴッホのほか、ジョルジュ・スーラポール・シニャック、モーリス・ド・ヴラマンク、岸田劉生、佐伯祐三、中村彝、森村泰昌福田美蘭、桑久保徹、フィオナ・タンほか。

ゴッホ・インパクト─生成する情熱
会期:5月31日(土)~11月30日(日)
場所:ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
時間:9:00~17:00(入館は30分前まで)
休館日:会期中無休


3. 彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術(アーティゾン美術館)

イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council

アボリジナル・アートの「いま」を知る

近年、国際的な現代アートシーンでは地域独自の文脈で生まれた作品の再考が進んでおり、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートが改めて注目を集めている。2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレでは、アボリジナル作家の個展を開催したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞した。

本展は、日本初のアボリジナル・アートの女性作家のみの展覧会となる。同館の所蔵作家4人を含む7人と1組による計52点の出品作品を通して、アボリジナル・アートに流れる伝統文化の潮流と、イギリスによる植民地時代を経て、いかに脱植民地化を実践し、そしてそれがどのように創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っているのかを考察する。

彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術
会期:6月24日(火)~9月21日(日)
場所:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(9月15日を除く)、9月16日


4. 原ナビィ 素手喧嘩 -SUTEGORO-(tHE GALLERY OMOTESANDO)

展示風景。
展示風景。
展示風景。

新進作家が「拳」に込めた怒りと愛

2001年生まれの若手作家、原ナビィの個展。原は暴力や怒りを普遍的なテーマにした、劇的なタッチの絵画作品を制作し続けている。米原康正キュレーションによる本展は、「拳」を描いた作品が並ぶ。米原は、それらはただの暴力礼賛ではなく、描かれる拳は、怒り、悲しみ、愛情、絶望、渇望といったあらゆる感情が、骨と皮と筋肉に「かたち」として凝縮されているのだと語る。

一方、原は、拳と拳、肉体と肉体が真正面からぶつかり合う「素手喧嘩(すてごろ)」が1番好きな喧嘩スタイルだと語る。ごまかしも飾りも無い潔さ、無防備さがかっこよく、ある種美しくもあるのだという。

原ナビィ 素手喧嘩 -SUTEGORO-
会期:8月7日(木)~8月24日(日)
場所:tHE GALLERY OMOTESANDO(東京都渋谷区神宮前 5-16-13 SIX HARAJUKU TERRACE S 棟)
時間:12:00~19:00
休館日:月火


5. 金川晋吾写真展「祈り/長崎」(浦上キリシタン資料館ほか)

金川晋吾が「祈り」と「長崎」を見つめる

1981年生まれの写真家・金川晋吾は東京藝術大学大学院在学中の2008年から8年間父親の撮影を続け、16年に写真集『father』を刊行。最も身近な他人である父親の姿を通して、社会制度や家族制度といった一言で語ることができない人間の存在について問いかけることで話題を集めた。

2024年に刊行され、第49回木村伊兵衛賞にノミネートされた写真集『祈り/長崎』の刊行記念展となる本展は、長崎市内の3会場で同時開催される。写真集では、2015年から約10年間撮り続けた長崎の平和祈念像などの平和公園に関連するもののほか、現地を歩くと頻繁に目にするマリア像やキリスト像、自宅の祭壇を前にしたカトリック教徒など、何らかのかたちでキリスト教信仰に関わっている人たちや、関連の建物、場所を撮影。洗礼を受けた金川自身のポートレートを挟み込むことで、「信仰」と「長崎」の姿を映し出す。

金川晋吾写真展「祈り/長崎」
会期:8月9日(土)〜9月27日(土)
場所:浦上キリシタン資料館(長崎県長崎市平和町11-19)、PEACETOWN COFFEE(長崎市平和町2−1)、ひとやすみ書店(長崎市諏訪町5-3)
時間:浦上キリシタン資料館 10:00〜17:00、PEACETOWN COFFEE 11:00〜18:30、ひとやすみ書店 12:00〜18:00(土曜は16:00まで)
休館日:浦上キリシタン資料館 月曜(祝日の場合は翌平日)、PEACETOWN COFFEE 火水、ひとやすみ書店 木曜

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