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ジョージ・ルーカスの美術館、2025年に開館延期の原因はサプライチェーン問題。所蔵品は順調に拡大

スター・ウォーズやインディ・ジョーンズなどの大ヒットシリーズを世に送り出した映画監督、ジョージ・ルーカスがロサンゼルスに建設中の「ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート」の開館が2023年から25年に延期された。

ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アートの完成予想図 Courtesy Lucas Museum of Narrative Art

同美術館のサンドラ・ジャクソン=デュモン館長がロサンゼルス・タイムズ紙に話したところによると、延期はコロナ禍での世界的なサプライチェーン悪化の影響によるものという。建設プロジェクトが18年に始動した時点では21年の開館を目指していたが、コロナ禍による遅れで開館時期は段階的に先延ばしされている。実際、この4月にも23年への延期を発表したところだった。

21年のARTnewsトップ200コレクターズにもランクインしているジョージ・ルーカスと妻で実業家のメロディ・ホブソンが共同設立したルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アートは、名前の通り物語性(ナラティブ)に焦点を当て、絵画、イラスト、写真、映画、アニメーション、デジタルアートなどの作品を幅広く展示する予定だ。

建設スケジュールの遅れとは裏腹に、美術館の所蔵品は順調に拡大し続けているようだ。22年には、ローラ・アギラール、ハイメ・エルナンデス、ロバート・コールスコット、ケリー・ジェームズ・マーシャル、フリーダ・カーロ、アリス・ニールといった作家の版画、写真、絵画作品が新たに加わっている。

中でも話題を呼んだのは、ロバート・コールスコットの1975年の作品、《George Washington Carver Crossing the Delaware: Page from an American History Textbook(デラウェア川を渡るジョージ・ワシントン・カーバー:米国史の教科書の1ページ)》を1530万ドルで落札したことだ。

まるでスター・ウォーズの世界から出てきた宇宙船のような外観のルーカス美術館の設計は、ザハ・ハディドの事務所に勤務した後、MADアーキテクツを設立した建築家、マ・ヤンソンによるもの。5階建て、総面積約2万8千平方メートルもの建物の複雑な外壁工事はすでに始まっていると、ジャクソン=デュモン館長は述べている。

サプライチェーンの問題は、ほかにも米国の主要美術館の改築・改修工事に影響を与えている。3月、ニューヨーク州バッファローのオルブライト=ノックス美術館は、工事の遅れとコスト増で、当初1億6800万ドルとされていた拡張工事費が1200万~2000万ドル上振れすると発表。コネティカット州グリニッジのブルース美術館でも、19年から6000万ドルをかけて始まった拡張工事に遅れが生じ、7月に一時休館の延長を決めている。(翻訳:鈴木篤史)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月21日に掲載されました。元記事はこちら

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