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  • 2023.06.29

どうなる!? 財政難で閉校した美大に残された、評価額72億円のディエゴ・リベラの壁画

2022年に閉校した、カリフォルニア州の美術大学、サンフランシスコ・アート・インスティテュート(SFAI)が所有するディエゴ・リベラの壁画は、売却されることなく保存されるだろうと報道されていた。しかしそれは定かではないようだ。

2022年に閉校したサンフランシスコ・アート・インスティテュート内にあるディエゴ・リベラの壁画《The Making of a Fresco Showing the Building of a City》(1931)の部分。Photo: Courtesy Cushman & Wakefield

2023年6月27日、不動産業者のクッシュマン&ウェイクフィールドは、150年以上の歴史がありながらも2022年に財政難の中で閉校したサンフランシスコ・アート・インスティテュート(SFAI)のキャンパスを売却すると発表した。その中には、施設内にあるディエゴ・リベラの壁画《The Making of a Fresco Showing the Building of a City》も含まれているという。

1931年にSFAIの依頼で制作された壁画は、幅74フィート(約23メートル)に人々がフレスコ画を描く様子がダイナミックに展開されている。多くの壁画を手掛けたリベラの作品の中でも重要なもので、ABCニュースによると、5000万ドル(約72億円)の価値があるという。

今も残るSFAIのホームページには、「このフレスコ画は、リベラの画材に対する卓越した技術を示す傑作として知られています。壁画がきっかけで、SFAIはリベラの作品を研究するための国際的な拠点となりました」と記されている。

SFAI閉鎖の危機が迫る2021年、経営陣は資金を調達するため壁画の売却を試みた。学生や教授陣はこれに反対し、学内で結成された組合は「焼け石に水の措置である上に、SFAI理事会や執行役員による放漫経営の穴埋めに使われるのは間違っている」と抗議している。経営陣はこれらの申し立てを否定している。

壁画の売却計画への反発の中、サンフランシスコ監督委員会は、リベラの壁画をサンフランシスコのランドマークに認定する準備を始めた。

そして2022年4月、アンドリュー・W・メロン財団がこの壁画を支援するために20万ドル(約2900万円)をSFAIに寄付し、同校は壁画の修復を約束。これで売却はされないだろうとリベラ・ファンは胸をなでおろした。しかし同年の7月、SFAIは閉校すると正式に発表した。

現在、壁画はキャンパスとともに売りに出されている。US版ARTnewsはメロン財団に助成金の状況を問い合わせると以下の返答があった。

「ディエゴ・リベラの壁画はSFAI破産財団の管轄にあります。不動産と壁画を一緒に購入したいという申し出があった場合、財団は複合売却を進めるでしょう」

ある情報筋によると、SFAI破産財団は壁画だけの売却も模索しているという。壁画は不動産から取り外せるような状態になっており、壁画のみ購入したいという申し出があった場合、管財人は破産裁判所の承認を得た上で、売却を進める可能性が高いという。

クッシュマン&ウェイクフィールドの広報担当者は、9万3000平方フィート(8639平方メートル)の敷地面積があるこの物件の販売価格について明言を避けた。

2022年、ニューヨーク・タイムズ紙は、アートコレクターで映画監督のジョージ・ルーカスが、ロサンゼルスに建設中の「ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート」のためにリベラの壁画購入を検討していると報じている。しかし、それはサンフランシスコが壁画をランドマーク認定するために動き出す前の話だ。

クッシュマン&ウェイクフィールドのエグゼクティブ・マネージング・ディレクター、トム・クリスチャンは声明の中で、「SFAIのキャンパス跡地には、学校や博物館、あるいはそのほかの創造的で革新的な施設が作られるでしょう」と述べている。(翻訳:編集部)

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