アート界の「アベンジャーズ」!? 最強のベテラン5人組が新機軸のコンサル会社を発足
アートマーケットのベテラン5人が集結し、6月26日、コンサルティング会社「ニュー・パースペクティブス・アート・パートナーズ(NPAP)」を発足した。アート界の「アベンジャーズ」とも言うべき最強チームの結成に、業界の注目が集まっている。

アートマーケットのキーパーソン5人が、このほどコンサルティング会社「ニュー・パースペクティブス・アート・パートナーズ(NPAP)」を結成した。彼らはアメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東を含む主要5大陸を股にかけ業務を開始する。
メンバーは、ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港に拠点を置くレヴィー・ゴルヴィー・ギャラリーの共同設立者のブレット・ゴルヴィー、フィリップス・オークションズの元CEO兼会長のエドワード・ドルマン、その息子で、コンサルティング会社ドルマン・パートナーズを父と共同経営するアレックス・ドルマン、サザビーズ・アジアの元会長であり、香港を拠点とするコンサルティング会社パティ・ウォン&アソシエイツ代表のパティ・ウォン、ウォンのビジネスパートナーであり、ロンドンでアドバイザリー会社ファインアート・グループを経営するフィリップ・ホフマンだ。
彼らのほとんどはキャリア30年以上の超が付くベテランで、世界を舞台にキャリアを築いてきた。同社は通常の企業とは異なるシステムを持っており、メンバーは本業を継続しながら、取り組むべき専門的な案件が発生した時に集結する。アート界のアベンジャーズのようなものだと考えればよい。
NPAPのメンバーは、オークションハウスやトップギャラリーから高級アドバイザリーまで、市場の様々なセグメントに関する深い経験と、幅広いネットワークを持つ。それゆえ単純なアートの売買仲介は引き受けない。アートコレクター、受託者、企業に対し、グローバルな文脈と機関の力を持って重要なコレクションの管理、拡大、分散方法についてアドバイスを提供するというのが同社の大きな売りだ。
これについて、メンバーのブレット・ゴルヴィーはUS版ARTnewsの取材に対して、「我々は単なるアドバイザーの集合ではありません。問題を分析し、解決するためにチームが集結するマッキンゼーのモデルに近いものです」と説明する。
NPAPのメンバーを知る人々によれば、そのチームワークも魅力の1つだという。ドルマンとホフマンは1990年代初頭からの知り合いであり、2000年代初頭に共に働いた経験を持つ。そしてゴルヴィーがフィリップスのCEO兼会長を務めていた時にパティ・ウォンはサザビーズ・アジアを率いており、二人は長年のライバルでありつつもゴルヴィーは常に遠くから彼女を称賛していた。
ゴルヴィーとエドワード・ドルマンはともに、現在のアートマーケットが変革期にあると語る。ゴルヴィーは、「我々はブームの中で同社を立ち上げたのではありません。複雑化する市場の中で始めているのです」と明かし、ドルマンは、オークションにおける、あらかじめ作品購入が保証される「第三者保証」の普及や、落札額が予想落札価格以上となる再販プレミアムの低下を「パラダイムシフト」の証拠として挙げ、現在大手オークション会社が「犠牲者」になっていると話す。
それを受けてドルマンは、「以前は単純なビジネスだったものが、非常に複雑になってしまいました。かつては驚きと上昇志向に満ちていたオークション・モデルも、今では買い手のためというよりも、リスクを避けるために設計された硬直したものに感じられます」とコメントした。
アートニュースペーパーにゴルヴィーが語ったところによると、NPAPの焦点のひとつは、次世代の若手コレクターだという。 彼は、「コレクションを受け継いだり、両親や家族のコレクションを扱わなければならない世代であるため、知識と専門知識の必要性はこれまで以上に高まっています」と説明する。もうひとつの注目は、アート・バーゼルやサザビーズにも多額の投資を行っている中東の新興勢力だ。 中でもアレックス・ドルマンは主にサウジアラビアで10年近く仕事をしており、父親とともにこの地域に深い関係を持っている。
ゴルヴィーとドルマンは、NPAPのビジネスモデルは裁量権が大きい点を強調した。同社にはブランド構築の取り組みも、若手スタッフがノルマに奔走する姿もない。だが常に大切にしている点を、ゴーヴィは次のように語った。
「私たちが繰り返し立ち返るのは関連性です。今、コレクターには何が関わっているのか?金融機関、受託者には何が関連しているのか?なのです」(翻訳:編集部)
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